レイバーン・サイバーチューナー (Reyburn CyberTuner)

視覚調律における革新 (Innovation in Visual Tuning)

ピアノ技術者ジャーナル 1997年1月号
(Piano Technicians Journal/January1997)カンザス・シティー支部 RPT
(*1)ケント・スワッフォード(By Kent Swafford, RPT Kansas City Chapter)
英文原文は、下記URL参照

http://www.reyburn.com/innovations.html

Copyright (c) 1997 Piano Technicians Journal reprinted with permission

  1. コンピューターがより高機能かつ値段も手頃になるにつれ、 専門家達は自らの「オフィス」を ノート型パソコンという形で持ち歩くようになり、 日々の移動先で簡単に顧客や財務データを管理できるようになった。
    CyberTunerは、プロのピアノ技術者の為に開発された、 新しい視覚調律用具 (visual tuning device以下VTD)である。 CyberTunerはとにかく高機能で面白く、 ピアノ技術者にとって携帯用パソコンが 仕事に欠かせないものになるであろう。
    CyberTunerを使えば、手持ちのマッキントッシュ (Macintosh)でピアノを調律することが可能になるのだ。(*2)

    PowerBook 2300./RCT
  2. CyberTunerは 最新のマッキントッシュのパワーブックに組み込まれている 録音機能を活用するため、パソコンの本体以外に、 新たに機能拡張カ−ドや備品を揃える必要はない。
    人によっては、視覚調律用具をノート型パソコンに組み込むことは、 自然でむしろ必然的なことだと思うかも知れない。 実際、現代のコンピューターに備わっている スピードと処理能力を活かしたこのVTDは、 今までになかった新しい可能性を引き出すのである。
    ディーン・レイバーン氏 (RPT)によって開発されたReyburnCyberTuner(以下RCT)は、 視覚調律に大変な革新をもたらしたといえよう。 このソフトウェアは氏の長期に渡る研究努力のたまものであり、 大変素晴らしい成果である。

  3. ここでSanderson Accu-tuner (以下SAT)(*3)との比較は免れないので、 それについて述べたいと思う。
    1994年8月号の本誌の記事 「よく聞かれるAccu-tunerに関する質問」の筆者として、 SATは確かに一流のピアノ技術者達から賞賛を受けた通りの 優れたVTDだと思う。
    SATのコンパクトで耐久性のあるデザインと、 その機能はすでに実証されているが、 今もなお健在であるのも実に素晴らしいことだ。 しかし、ディーン・レイバーン氏が開発した新しいVTDは、 明らかにSATと並び評されるに相応しいソフトであると私は思う。
    幸い、RCTはSATと様々な点において互換性があり、 しかもSATの実用性をさらに高めることができるのだ。

  4. VTD「専用」、つまり楽器の調律だけを目的として設計された 専用機としては今もなおSATに勝るものはない。
    専用機に比べて、 一般のデスクトップ型パソコンやノート型パソコンにさえ、 視覚調律の機器としては少し欠点がある。 例えば竪型ピアノでは、場所がないためパソコンを ピアノの鍵盤の上に(*4)載せなければならないこともあるだろう。
    SATは一回の充電で複数のピアノを調律できるが、 ノート型VTDではその様にはいかない。 ノート型パソコンはバッテリーでの作動時間は制限される。 標準のノート型パソコン用バッテリーでは、 一回の充電でRCTによる調律一回分、 また素早い調律なら3回分までは対応できるだろうが、 2回の複雑な調律には持ちこたえられないだろう。
    ただ、ノート型はパソコンを使っている間にバッテリーを充電し、 調律を始めるまで確実に充電を済ませておくことができる。 従って、2回目の調律からは、 パソコンをAC電源につないで調律を実施するのが手堅い方法と言える。
    また、そこまで慎重にならずに、 必要な時だけ電源につなぐ人もいるだろう。 もちろん、より大きい容量の別売バッテリーもあるが割高なので、 できるだけ調律の間はAC電源につなぎ、 万一電源のない時に備えて充電しておく方法が良いかも知れない。(*2)

  5. それでも、パソコンをVTDとして使うメリットはたくさんある。
    コンピューター・ソフトウェアなら、 バージョンアップを続けたとしても、 改定版をEメールやフロッピィー・ディスクで 容易に手に入れることができる。
    また、パソコンのハードディスク・ドライブには、 大量の調律記録を保存しておくことが可能である。 自動的にアルファベット順に並べ換えておけば記録は探しやすく、 またいつでも後で再活用出来るので、 別紙等での記録を必要としない。
    パソコンには様々な応用ソフトウェアを搭載できるので、 ピアノ技術者は自分の「視覚調律用具」を コンピューターとしても活用することができるのだ。 現に私も、この記事を自分の「VTD」で書いている。

  6. RCTは調律の計算、遂行、保存というそれぞれの目的のために機能する、 複数の統合されたプログラム“モジュール”から構成されている。
    まずは実際の調律を実行する視覚調律の役割を果たすプログラム、 CyberEar(サイバー・イア)について紹介しよう。

    CyberEar
  7. CyberEarのディスプレイには、スピナーが表示される。
    スピナーが時計回転すれば「高い(sharp)」ことを示し、 反時計回転なら「低い(flat)」ことを示すのばかりでなく、 スピナーがスクリーン上の左側に移動すると 大幅に低くはずれていることを意味し、 右側に移動すれば大幅に高くはずれていることを意味する。
    CyberEarは全ての音域で信頼性の高いディスプレイを表示し、 さらに自分がこれまで経験した限り、 かなり騒々しい環境の中でも全ての音を同等に、 驚くほどの明瞭さで聴き取ることができるのだ。

  8. CyberEarのスピナーの回転速度は通常、 音が何セントずれているかを表すもので、 従来の1唸り1秒に1回転するものとは異なる。
    わかりやすく言うと、 スピナーは低音域において回転速度を速めながら敏感に動き、 高音域においては減速しながら安定した動きを見せる、 各音域におけるピアノ弦の振動数を一層リアルに表現したものである。
    スピナーの回転速度が低音域で速まるのは 実に驚嘆すべきことであり、低音域の弦がともすれば高音域の弦と同様、 とても変わりやすいことを示している。
    つまり、これまで解明されなかったが 低音域調律における問題のいくつかは、 変化の大きい弦に原因があることを示唆しているのだ。
    多くの調律師が最高音域を聴き取る 「耳」を鍛えるためにSATを役立てたように、 RCTも低音域調律においての聴き取り訓練に役立つだろう。

  9. CyberEarでは多くの場合、 音から音へ自動的に移りながら調律を進めていくことができる。
    調律師が鍵盤上を半音階式に打鍵していけば、 CyberEarは(ディーン氏が言うには) 「魔法のように自動的」にその音を認識し、 それに応じて自らも切り替わり、 調律師はVTD上の音を変えるといった コンピューター操作をする必要がない。
    これはとても素晴らしい特徴で、 次の音への移動がスムーズで滞りのない調律を実現する。

  10. また、ピッチ変更調律に役立つ素晴らしい自動機能も備わっている。
    CyberEarは驚くほどのスピードと正確さでピッチを変更できる。 「ピッチ変更モード」を利用すると、 打鍵すれば自動的に測定記録指示値との偏差 (フラットかシャープか)が測定される。
    ピッチの割増変更値は、測定記録指示値との偏差、 直前の5つの音で測定されたそれぞれの測定記録指示値との偏差、 音域での位置、といった要素から計算する。
    割増変更値の計算に引用する割増率は音域によって異なる。 例えば低音域では相対的に割増率は低いが、 中音域にかけてやや高くなり、 中低音域と高音域ではさらに高くなる(*5)。
    いったん一つの音の割増変更値が計算されて、 それにピッチが正確に調律されると、スピナーは止まる。 この一連のプロセスはCyberEarによって自動的に、 かつ一瞬の間に行われるのである。

  11. さて、RCTの機能の中でピアノ音を測定し、 各音の的確なピッチを計算するのが、 Chameleon 2(カメレオン2)である。
    RCTの登場により一台のピアノから抽出できるデータ量は飛躍的に増えた。 ピッチ計算機はもともと、ピアノ一台につき一つの音、 一つの測定値しか利用しなかったが、 最近のSATに組込まれている調律計算機能 FACによって、 ようやくピアノ一台から3つの音の測定値を抽出できるようになった。
    だが、Chameleon 2は、A1、A2、A3、A4それぞれから4音、 A5から3音、そしてオプションとしてA6から2音と、 最大数21音まで測定可能なのである。
    Chameleon 2は各音域の下から上まで大量の情報を集めるので、 それぞれのピアノごとに精密に「あつらえた」、 調律が可能になるのである。

  12. 調律計算に必要なデータの収集は自動化されているので、 技術者はあらゆる“計測作業”から解放される。
    このプロセスにかかる時間は2分程で、 CyberEarにくらべて幾分か騒音の少ない環境を確保する必要がある。 このプログラムで技術者がしなくてはならないのは、 必要な各音を弾いてデジタル録音し、録音値を分析、 同時に鳴り響く構成倍音から独立した倍音を選択指定する作業である。
    全ての計測演算はパソコン内部で行われるので、 技術者は集められたデータに直接触ることはない。 だが、Chameleon 2に組込まれている、 10段階の"general stretch levels" 「全般的伸張率傾向」を活用した"octave tuning styles" 「オクターヴ調律様式」では、先例のない数の伸張率データを管理し、 調律伸張率計算に取り入れることになる。

    Chameleon 2
  13. CyberTunerが開発される以前のものでは、 もし使用者が伸張率に測定計算値より高いか、 または低い数値を使って、全般的伸張率の調整操作を試みようとすると、 VTDによって部分的に変更された音階により、 それらの場所では唸り率(beat rate) の不調和をもたらすというリスクを負わされる。
    だが、Chameleon 2は、特に使用者の要求に合わせて、広め、 または狭めの調律を計算することが目的であるため、 こうしたリスクを最小限に留めるようになっている。

  14. RCTのプログラムの中で、私が難しいと感じたものの一つが "octave tuning styles" 「オクターヴ調律様式」のコンセプトである。 (私にとっての"stretch"だったとも言える)。
    ピアノ調律においてオクターヴとは、 現に紛れなく協和した音程(inreality a tempered interval) であるとはいえ、我々はよく「澄んだ、きれい」(clean) な音に聞こえるようにオクターヴを調律すると言っている。
    私はこれまでオクターヴ調律では特に唸り率速度 (the specific speed of beat rate)について、 考えることに馴染んでいなかった。
    だがChameleon 2は実際に、特定のオクタ−ヴの、 一秒あたりの唸りを10分の1の精度で計算し、 唸り率傾向を予測するのである!
    ディーン氏が言うところの "virtual direct-interval tuning" 「仮想指示音程調律」は、 各音ごとに対応するよう構成部分音が測定されているからこそ 可能なのである。
    スクリーン上のディスプレイには、A2−A3オクターヴ、 A3−A4オクターヴ、 A2−A4の2オクターヴの予測唸り率傾向が表示される。
    もし、予測された唸り率傾向が気に入らなければ、 マウスを数回クリックさせることで、より広めか、 狭めの調律伸張率計算をChameleon 2に指示することができる。
    再測定の必要はなく、 コンピューターによって再計算されるだけであり、 これも一瞬のうちに実行される。

  15. わずかに広めか、狭めの調律を計算するこの機能は 全てのピアノに役立つが、 大きなinharmonicity (不協和音性/非整数倍性)を持つ小さなピアノには特に有効である。
    こうしたピアノでは、隣接するシングル・オクターヴは、 どうしてもうまい具合にダブル・オクターヴに収めることができない。
    同様に、もしこのようなピアノのシングル・オクターヴを広げたら、 ダブル・オクターヴも広くなり過ぎて、著しく唸るだろう。
    シングル・オクターヴとダブル・オクターヴ間の 適当な折衷値が算出されるまで、より広め、 もしくはより狭めの調律計算を繰り返し実行できるようになったことは、 視覚調律における真の発展である。

  16. 私自身の独特な視覚調律用具の使用法に対しても、 Chameleon 2による調律の正確性には、本当に驚かされる。
    そもそもVTDというのは、ピアノのinharmonicityを的確に調整する際に、 全般的なinharmonicityの傾向、 音域におけるinharmonicityの生じ方の違い、 そして自分の好みの伸張率を考慮に入れるといった、 調律全体の枠組みを明確に示すべきである。
    ピアノの全音域において正確に合うよう調整したり、 全体に均整のとれた伸張率傾向を形成するように調整する視覚調律を、 マクロ調律と言う。
    仕上げの微調整、またはミクロ調律とも言うが、 これは聴覚によって実施することができる。 視覚調律では、各音から一つの倍音を均一で滑らかな傾向曲線になるよう 調整するので、マクロ調律によって生じる変異は inharmonicityの不調和が原因であると予想がつく。
    この変異とは、音域の境界で唸り率傾向にばらつきがでたり、 あるいは反転したinharmonicity (negative inharmonicity)を発するような「周りから浮いた」音において、 唸り率傾向が不揃いになる、といった形で現れる。
    こうした変異をできる限り滑らかになるように調整していくと、 inharmonicityの3つの側面、つまり全般的な傾向度合、音域での変化、 不調和、これら全てを考慮しながら調律を行うことになるので、 最終的により優れた調律結果をもたらすことことだろう。

  17. Chameleon 2には、A0からG#1の調律を、それぞれの第6、 第7、または第8部分音のいずれかで計算できる柔軟性が備わっている。
    同様に中低音域においても、A2からG#4まで、 第3部分音か第4部分音のどちらかを選んで計算できる柔軟性があり、 その結果、ピアノの中低音域における正確な調律を実現していることを、 ここで述べておきたい。(*6)

  18. 芯線と巻線を含む中低音域と、その境界での調律は、 特有の課題をもたらす。
    ピアノの各音域に渡って生じるinharmonicityの度合を VTDは「予測」しなければならないのだが、 中低音域の弦においては時々この予測が大きくはずれることがある。
    一般的にピアノの芯線は下の音階に向かうほど、 inharmonicityは減少する。 だが、ピアノによっては、中低音域の芯線を下に向かうほど、 逆にinharmonicityが大きくなることもある。
    これは特に小さなピアノでよくあることだが、 芯線の最低音の長さが理想とされる長さよりも短いことにより、 理想の値よりも大きいinharmonicityが生じてしまうのだ。
    一般にVTDは中低音域の調律を第4部分音で行う。 VTDで第4部分音を滑らかな傾向の曲線になるよう調整すると、 予想以上に大きいinharmonicityを持つ音は、第1、第2、 そして第3部分音が低すぎてしまい、第5部分音は高すぎ、 「正確」に調律されているのは第4部分音だけという状態に陥る。
    さらに、こういう音に基づいて形成された音程は、 非常に「具合の悪い」唸り率になる。
    4:2オクターヴが正しく調整されていても、 低い第2部分音は広い2:1オクターヴを形成してしまう。
    長3度の唸りは、遅くなるかもしれない。従って、inharmonicityが原因で、 さらに大幅に高くはずれたり、低くはずれたりする音を調律するには、 音程によっては妥協することもできるが、 ピアノごとに対処法は異なってくる。
    それは、設計がピアノごとに大きく異なるためであり、 RCTの新たな柔軟性を活用すれば対処できる。
    良好に設計されたピアノでは、中低音域の調律において、 第3部分音を使おうと第4部分音を使おうとあまり差はない。
    だが、ピアノの多くは不完全であるから、 第3部分音で低音域の芯線を調律すれば、 それ自体で多くのピアノにとって、 より進歩した調律への貢献になると私は確信している。
    VTDを使って、著しく大きなinharmonicityを持った音を 第4部分音でなく第3部分音で調律すると、第1、 第2部分音の低さはおさまり、第3部分音は“正しく”調整され、 第4、第5部分音は高くなる。
    つまり、それまでの2:1オクターヴの広さが緩和され、 そして4:2オクターブも、 第4部分音で調整するよりもやや狭めになる。
    言いかえれば、 著しく大きなinharmonicityを持つ中低音域の芯線を第3部分音で 調整するVTDは、 inharmonicityによって生じたエラーを自動的に 2:1オクターヴと4:2オクターヴの間に割り振るので、 (第4部分音で調整するよりは)良い妥協点を提供するに違いない。
    なにしろ、低音域の芯線を第4部分音で調整するVTDは、 4:2オクターヴを難なく調律できるだろうが、 著しく大きなinharmonicityによって生じたエラーを、 全て2:1オクターヴに負わせてしまうのだ。
    第3部分音での調律は、 最も低い芯線で長3度が遅れるのを犠牲にするものの、 澄んだ5度とオクターヴを創出する傾向があるので、 おそらくこれが最良の妥協方法となるであろう。

  19. 中低音域において、最も高音の巻線で生じるinharmonicityが、 隣接する最も低音の芯線に比べてかなり小さいのは一般的なことである。
    何台かのピアノの巻線の最高音を調律する場合など、 著しく小さなinharmonicityを持った弦の調律を行うことが、 中低音域調律におけるもう一つの課題である。
    これらの音を第3部分音で調律すると、 第4部分音が著しくフラットになってしまい、 またそれに基づいて形成された長3度も速すぎてしまう。
    そこでChameleon 2は、 二つめの測定計算記録を5秒もしないうちに用意できる。 おそらく、ピアノの中低音境界域において、 唸り率傾向を最も滑らかに調律するには、二つの測定計算記録を用いて、 A2以上の巻線では第4部分音を、芯線で第3部分音と、 二つの測定計算値を切り換えて実施することだろう。
    この新しいRCTの「dualrecord」(デュアル・レコード)機能は、 私が数年来使用してきたSATの「dualpage」に比べて 中低音境界域での調律は優れており、特に芯線での最低音の調律で、 格段の差がある。
    RCTは一つの部分音で調律を実施しながら、 もう一つの部分音で確認をするという、 たくさんの新しい可能性を提供している。

  20. 新しい視覚調律用具について実に楽しく学んできたが、 RCTに組込まれている全ての新しい可能性への挑戦でもあった。
    RCTを使いこなすテクニックは時間と共に身につくだろう。

  21. SATは、Chameleon 2の計算した第3、第7、 または第8部分音での測定計算記録を完全に保存することができる。
    Chameleon 2を利用した調律はSATと互換性があるので、 RCTから直接MIDI搭載のSATに送ることが可能であり、 またMIDIのないSATにも手動入力で組み込むことができる。
    ここでSATの開発者、 Al Sanderson博士の驚くべき先見の明にも触れておきたい。
    SATはその優れた保存機能とMIDI規格を使用していることから、 10年以上前に最初に開発された当時では想像できなかったような、 現代のコンピューターとソフトウェアに互換性をもっているのである。

  22. VTDを使ってA0から上に半音階式にピッチを取り、 ユニゾンを合わせながらの調律は、とても安定した調律になる。
    しかし、半音階式の方法を取りたくないと考えるのも、もっともである。 CyberEarのプログラム設定は、 調律師によって要求されるあらゆる音列順序 (note sequence)にも対応できる。
    RCTを利用して聴覚調律を習得する研修生なら、 CyberEarを使って聴覚調律音列(aural temperament sequence) によって調律しようとするだろう。
    また、経験豊かな調律師ならRCTの機能について学んでいるうちに、 Chameleon 2の様々な伸張率設定を使って、 聴覚調律音列による調律を試してみたくなるだろう。
    そして最終的には、経験を積んだRCTの使用者たちが、 調律を始めるたびに短い聴覚調律音列を使って、 Chameleon 2による調律が 本当に自分の目前にあるピアノに適しているかどうか 確認をするようになるだろうと、想像できる。

  23. さらに、RCTのもう一つのプログラム“モジュール”、Pianalyzer (ピアナライザー)は、ピアノの全ての音に対応し、 部分音構造を構成する各部分音のピッチと音量を 測定する機能をもっている(*7)。
    Pianalyzerは「通常」(normal)の音での部分音構造は、 高次倍音になるほど inharmonicity が増大しいること、 また、負の(negative)inharmonicityを持つ音では 相対的に共通していることを、簡単に証明してくれるのだ。
    この機能は非常に巧妙であることに加え、整音、 養成教育そして研究にも大変有益であるにちがいない。

  24. 私は1996年3月にRCTを使い始め、 今では日常的に使うようになったが、 これまで期待を裏切られたことは一度もない。
    RCTは“正真正銘”の、一歩進んだ最新式の視覚調律用具である。

  25. 以下は、この記事作成に協力頂いた方々です。
    ミッチ・キール氏(RPT)、デビット・ラモロー氏(RPT)、 カール・リーベルマン氏(RPT)、ディーン・レイバーン氏(RPT)、 ドン・ローズ氏(RPT)、皆様に心より御礼を申し上げます。



Last modified: 1月 02日 月 16:09:53 2023 JST