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電子工作メモ

(2000年ごろに書いた)
この文書は、私が大学院の研究室で生活してた時にあった、質問などをまとめ たものです。ただし、編集、自作自演も含まれています。この文書は商用以外 の目的で自由に再配布可能です。また、誤りの指摘、アドバイス、掲載希望の 質問などは常に歓迎されます。

ただし、この文書は、事実ではなく、私の主観に基づいて記述されています。 正確さは保証できません。

  1. 電子部品
  2. 電子回路
  3. 実装
  4. 設計

電子部品

50kΩの抵抗が欲しいのですが、ありません。
そんな半端な抵抗値は存在しない。抵抗値は通常2桁の仮数部と1桁の指数部 からなっています。仮数部にはE24 系列といわれる(99のうち)24個の数値し か存在しません。これは、等比級数的に選ばれており、仮数部±5%ですべて の範囲をカバーするようになっています。
例えば50kΩの抵抗が欲しい時は51kΩの抵抗を選択します。51kの±5%は 2.55kΩです。50kΩは十分この範囲にはいっています。より精密な値が欲し い時は、E48系列と呼ばれるものから選択して下さい。また、コンデンサは E6系列,E12系列が一般的です。
抵抗の誤差ってなんですか。
通常使用には5%品で十分です。オペアンプ回路でゲインを決定するために用 いられるなど精密な抵抗が必要な箇所では0.1%までの高精度品が入手可能で す。ただし、0.1%もの高精度が本当に必要なのか考えてから使用して下さい。 また、0.1%といっても、温度変化、経年変化に対しても0.1%の精度を保って いるわけではありません。高精度な回路は十分な温度管理が重要です。
オペアンプはいろいろ種類があり過ぎて何を使ったら良いかわかりません。
その回路が何を重視するかによって選択します。すべてにおいて優れたオペ アンプは存在しません。だからいろいろな種類があります。ちょっと古いけ れど定番な選び方ではないかと思っています。より高性能が必要な場合には 最新のデータシートから選ばなければなりません。でも、アマチュアにとっ てデータシートで選んだ部品が買えるかどうかも重要な選択基準です。
汎用(4558)
安く全体のバランスがとれています。一つのパッケージに多くのオペ アンプが入っているものもあり、多くのオペアンプを使用する場合に 便利です。また、無調整なのも良いところ。
高精度直流用(OP07)
直流を正確に増幅したい時に使います。入力オフセット電圧が小さい という特徴があります。
FET入力(071)
OP07と間違え易いけど別ものです。入力バイアス電流が小さいです。 微小電流が問題になる時に使用します。欠点は入力オフセット電圧が 大きいことです。
高速型
早い。ノイズ多し。オフセット多し。
単電源
お手軽。最新機種でないと rail-to-rail に振れないようなので注意。 rail-to-rail とは、オペアンプの出力範囲が電源電圧範囲とほぼ同じ ぐらいとれるもの。rail-to-rail と明記されてないものは、出力範囲 は電源電圧より1-2 V 程度小さくなる。
→オペアンプ
AD コンバータ
AD574A が最も一般的です。
電子部品
→電子部品メモ

電子回路

ノイズが多くて困ります。
一口にノイズといってもいろいろあります。目的信号以外のものをひとまと めにしてノイズということが多いですが、原因はさまざまで対処の方法も違 います。そのノイズはどんな性質ですか?そのノイズはどこで入り込んでい ますか?回路を順にたどってどこを対策すれば良いのか確認して下さい。
発振
回路が不安定になり発振しています。目立つ発振もありますが、回路 の一部分が発振気味になってノイズとして観測されるものもあります。 最近のデバイスだと周波数が50KHz 以上で発振します。パスコンを増 強してみたり、容量負荷になってないかチェックします。
電源の回り込み
60Hzもしくは50Hz、120Hz(100Hz)の不用信号の大半は電源からの回り 込みです。一番の原因はもやし配線です。ケーブルは撚る、シールド する。電源グランドラインを太くする。パスコンを入れる。信号の流 れが交差しないようにする。シールドする。
伝送路で回り込む場合にはバランス回路を利用して除去するように設 計変更するのも良い。
ホワイトノイズ
素子自体が出すノイズです。対策は、雑音の少ない素子を選ぶ。冷や す。ぐらいですか。
フィルタをいれる
目的信号以外を周波数という大雑把な分類でカットしてしまいます。 大切な信号もカットしてしまう可能性があるので最後の手段。測定対 象の信号の周波数が低い場合に高い周波数のノイズが交じりA/D 変換 などが期待通りに動かない時に使う。手軽といえば手軽。
パソコンのノイズ
測定に不可欠になりつつあるパソコンは多くの高周波ノイズの発生源 です。ディスプレイ、本体の電源を切ってみましょう。シールドで回 避できるかも知れません。
CMOS,TTL,Analog の信号の接続はどうするのですか。
TTL,CMOS,Analog ではそれぞれ使っている電源、閾値などが違うため何も考 えずに接続することはできません。
CMOS からリレーを動かすには。
CMOS(4000シリーズ)は出力電流が小さいのでリレーを動かす時には少なくと もダーリントン接続されたトランジスタが必要です。また、吐きだし電流よ りも吸い込み電流の方が大きくとれるので吸い込み型でドライブする方が良 いでしょう。
位相を比較したい時は?
PLL(Phase Lock Loop)用に4046という高精度な位相比較器があります。これ はエッジ比較型3stateの位相比較器と分類されます。2つのデジタル入力の エッジを比較して、その差の間、出力がHかLになります。積分すれば位相差 に比例した電圧が得られるというわけ。また、エッジ比較型ですので、基準 周波数と異なる比較周波数を入力した場合にも間違った判断をしなくて済み ます。昔はTC8081というICがポピュラーでしたが今は、4046が入手が容易で す。74HC4046 が電源電圧、速度の点でお勧めです。
とんでもない抵抗
隣人が書いていた回路図を見ると、デジタル回路なのに10Ωとか20Ωとかの 抵抗を使っていました。他の人が設計した回路の焼き直しということだった のですが、5V で10Ωつなぐと0.5Aもながれてしまいます。普通のICではド ライブできません。多分10kオームのことだと思うのだけど、何の疑いも持 たないのね。10kΩ->10k、10Ωー>10Ω、0.01μFー>0.01、1000pF ー >1000p というような略記法をすることもあるので気をつけましょう。コン デンサの場合は103とかのように部品に書いてある値コードで呼ぶこともた まにある。
高倍率のアンプや高電圧の回路を設計する時に、10MΩとか平気で使うのも やめた方が良い。普通に万能基板なんかに実装すると、基板の表面洩れ抵抗 で誤差50%になってしまうかも。普通のオペアンプ回路では470kΩまでにし ておくのが無難かな。抵抗値の上限は入力オフセット電流、電圧との兼ね合 いで、下限はドライブ能力、消費電力によって決まることが多いでしょう。
FM ラジオ用のアンテナってどう作るの?
FM ラジオの感度を良くするためにアンテナを作ることは良い考えです。もっ とも手軽な方法はフィーダアンテナと呼ばれるものです。テレビ用の300Ω のフィーダを用意して、図の用に配線しFM ラジオのアンテナ端子に接続し ます。横に長いエレメントと直角の方向に感度が高くなるので、そちらを送 信所の方に向けましょう。縦のフィーダの長さは任意です。

実装

プリント基板の作り方を教えて下さい。
ここで解説するには内容が多過ぎます。プリント基板は、多くの同じ回路を 作る時、電極パターンを形成したい時、ストリップラインの回路を組みたい 時に有用です。アマチュアレベルでは両面のプリント基板までは容易に製作 できます。参考資料を集めるように努力して下さい。
今の時代、パソコンのお絵書きソフトでパターンを書く→OHP シートにイン クジェットプリンタで濃く印刷→感光基板が普通でしょう。ランドを書く時 にはドリルポンチ代わりになるように0.4mmぐらいの穴をエッチングで空け るようにしましょう。
プリント基板の製作については別に書きました。 そちらを参照して下さい。
プリント基板を作った時にパターンが接続/切断されてしまいます。
感光基板の露光不足/過剰です。感光基板を現像した後には、必ずパターン を目視で検査して、ナイフで削ったり、マジックで書き足したりしましょう。 他に考えられる原因は、マスクに傷がはいっていた。丁寧に扱いましょう。
シールド線、同軸ケーブルを基板に取り付ける方法は?
基板に取り付ける方法は、網線を2本にまとめてそれぞれ撚ります。心線と 2本に分けてよった網線をフォークの用に整形して基板の穴に挿入して半田 つけします。さらに、スズメッキ線で外皮ごと基板に括りつければ十分です。 BNC コネクタへの取り付けは、コネクタについてくるマニュアルに従うこと。
フォトダイオード(LED なども)を基板に取り付ける方法は?
基板に根本まで差し込んで半田づけすると壊れやすいです。かといって、浮 かして取り付けると位置精度が出ません。そのような場合は、ベーク板、ガ ラエポ板の小切れに穴をあけてスペーサとします。

設計

絶縁アンプの使い方
絶縁アンプには、共通側と、絶縁側があります。また、電源も、共通側、絶 縁側共に用意します。通常は、共通側から、絶縁電源を作成します。この時 に最低限存在する端子は、共通側電源、グランド、出力、絶縁側電源、グラ ンド、入力、です。この時、共通側のすべてと、絶縁側の、電源、入力は、 つなぐ場所は自明でしょう。では、絶縁側のグランドはどこにつなげるので しょう。答えは、絶縁側の、対象回路のうち、電位が安定していそうなとこ ろ。絶縁電源のグランドに接続するだけでは、絶縁側の電位が確定しません。 電位がわかっているところに接続します。
絶縁アンプの回路が当然のように設計できたら、アース回路の意味がわかっ ている?僕がいうのも変だけど。
サーボモータ、ボイスコイルモータを動かしたい。
いくつか方法があります。速度制御を利用する方法、位置制御を利用す る方法。ドライバの種類では、電圧ー>電流変換回路、PWM なんかがあ るでしょう。PWM は専用のコントローラをまず探してみる。VIコンバー タ方式は、オペアンプにブースタトランジスタを組み合わせる、パワー オペアンプを使う、といった方法があります。
ロックインアンプって何
微小な信号を検出したい時に、対象物に搬送派で変調を加え、それと 同期した周波数で変調された成分のみを増幅するシステムのことです。 どんなシステムに対しても適用可能というわけではありません。 対象に対して変調を与えることができる場合に検討の余地があります。 外乱が非常に大きい場合に有効です。
高圧回路に流れる微小電流を測りたい。
電流を測る時に定番の方法は、抵抗を使って電圧降下を起こさせる、です。 何せ、高圧回路に接続されている場合には、絶縁電源、絶縁アンプを 利用したほうが良いでしょう。しかし、微小電流を測るためには電圧 降下の影響を常に考えなければなりません。電圧降下の量を最低限に 押えて、後段のアンプにまかせるようにしましょう。電圧降下の影響 が深刻な場合にはカレントミラーの利用が考えられます。
カレントトランスがつかえるなら問題なし。
3相発振器ってどうやって作るのでしょう。
昔はオペアンプを3個使って移相発振器を構成していましたが、調整、 高精度化が困難なため現在では、ROM とDA コンバータをつかった方法 が主です。購入品として3相発振モジュールが1万円ぐらいからありま す。トラ技、Interface 誌の広告を参照して下さい。
ロータリーエンコーダの A,B,Z 相ってなに。
インクリメンタル式のロータリーエンコーダの出力は、A,B,Z の3種類 の出力があり、原点、回転方向、回転パルスを得られるようになって います。


近藤靖浩