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工作 共立グリーンレーザで遊ぶ

共立グリーンレーザで遊ぶ

(2004/07/19)
(更新: 2004/08/13)

懐中緑色激光部品 !!!

または

緑閃光(Green Flash)

注意
本ページでは、目に入ると視覚後遺症を引き起こすなどの危険なレベルのレーザ技術について述べています。本ページの内容に、正確さは保証しませんし、本ページの内容を参考にすることによって生じたいかなる事故、事件にたいしても責任をとりません。自己責任で技術をもってレーザを取り扱うことのできる人のみを対象としています。

共立電子産業で、一時期、6400円(税込み)で売っていたグリーンレーザモジュール IE-L532-03G-3-P(-)を買ってきたので、レーザポインタとして組み立てて遊ぶ。

仕様

方式DPSSレーザ(Diode Pomping Solid State LASER)。
波長532nm
出力約5mW
電源3V
駆動回路定電流駆動

この手のDPSSレーザの動作原理は次のとおり。800nm あたりの赤外線レーザダイオード(ポンプLD)で、Nd:YVO4(ネオジウムドープ イットリウム四酸化バナジウム,YAGの特性いいバージョンみたいなものだ)を励起して、1064nm のレーザを得る。それを KTP という非線型結晶に通すと、周波数が逓倍されて波長が半分の532nm のグリーンレーザが得られる。SHG(Second Harmonic Generation:二次高調波発生器)とも呼ばれる。Nd:YVO4とKTPを張り合わせて一体構造をとったものは DPM(Diode Pumped Microchip)結晶と呼ばれる。

ポンプLDの波長は Nd:YVO4を励起できればよく 1064nm よりも短ければよい。808nm が使われているという説が有力だが、高倍速 DVD-R や MO 用の高出力LDが用いられる可能性もある。MO、CD-R、DVD-R などは、レーザの熱作用を利用して書き込むため、100mW 程度の出力をもち、とても大量に量産されている。MO=685nm, CD=785nm, DVD=650nmが使われる。

共立モジュールではポンプLDは定電流駆動されている。一般に高出力LDでは、LDの隣にフォトダイオードが同パッケージされていて、LDの光出力をモニタしつつフィードバック制御をかける。共立モジュールでは、回路の簡略化のために、フィードバックはなされずに、LDを定電流で駆動するのみの回路になっていた。フィードバックがかかってないので、調整時と温度などの条件が違っった条件でLDをオーバドライブしてしまうとてLDにダメージを与えることもあるのでパワー狂の人は注意。

電圧-電流特性

グリーンモジュールは定電流駆動回路を内蔵しているが、電圧と電流の関係をいちおう調べてみた。グリーンレーザ発振電圧は 2.0V から、3.28V 以上かけると保護回路でシャットダウンした。3V入力時の流入電流は 0.21A、すなわち流入電力は 0.63W。

電圧電流特性

私の買ったやつは、レーザスポットがやや大きく、光線の平行度が出ていないハズレの気がする。

このグリーンモジュールには、半固定抵抗が一個ついていて、ご丁寧に回さない下さいという注意書きが同封されているが、出力アップのために回してみる。3V入力時に、0.30A までモジュールに流れ込むようになった。約1.5倍のパワーアップである。あんまり流れすぎるように設定すると、点灯した瞬間は明るいがすぐに保護回路のせいで暗くなる。そうならないポイントとして、調整してみると、0.30A流入が最適だった。Fast & First でのデータを参考にすると(効率はモノそれぞれなのであんまり参考にならないが)、電源入力が400mA時でレーザ出力が57mWとのことなので、300mA入力では40mWぐらいのレーザ出力は得られてる可能性がある(私の見た感じでは20mWぐらいなのだが)。

この状態で、3.0VのDC電源をつないで、イロイロなものに照射してみた。導電性黒スポンジから煙を出すことや、チョコレートを溶かすことはできた。これぐらいの光の強さがあると、暗い室内では、光の照射された地点だけでなく、光跡も見える。英語でいえば Visible beam だ。

コリメート(平行度)は悪いが、強力な緑の光で満足である。6400円の価値はあると思う。スターウォーズのライトセイバーごっこやハリーポッターのアバダケダブラ呪文ごっこが楽しめる。燃やしたい向きには、グリーンに逓倍しないままのポンプLDの出力をCDピックアップ用などのレンズで集光してみるといいかもしれない。グリーンモジュールにもレンズは入っているのだが効いているのかどうかはわからない。壊してしまいそうで調整できていない。もともと、LDはビームが広がりやすいのに加え、KTP は周波数を逓倍するときに、ビームを広げる性質を持っているのだ。

当然のことながら、0.9W も入力しているのでかなり発熱する。個体素子、結晶といえども、LDと KTP は特に熱に対して弱く、放熱が不十分な状態で使うと、その能力を発揮しないだけでなく、特性が痛んでくる(結晶が劣化する)。十分な放熱を行える構造を作り込むことも、高出力レーザには必須である。最大出力を得たいならペルチェなどで冷やしながらの実験が必要になるだろう。

2004/08/13 更新:勤務先に LASER POWER METER と書かれた機器が置いてあったので、削り出しブロック仕様のポインタを黒体に向けて照射してみたら、40mW を指した。どうも針の振れがあやしかったり、どの波長で校正されているのかもわからないけど、40mW でててちょっとうれしかった。

携帯型ポインタ

キーチェーンLEDライトの LED LENSER MOON(リンク先では V8と呼ばれている)を分解して、その中にグリーンレーザモジュールを組み込んでみる。

LED LENSER MOON はφ5白色LED を 4×LR44 で点灯させる、単三電池よりすこし大きいいキーチェーンライトである。これを分解して、共立グリーンモジュールを組み込む。

グリーンモジュールは 3V駆動なので、2×LR44 で点灯させる。もとからあった、LENSER のLED + スイッチ + 取り除く2×LR44 の合計の大きさと、グリーンモジュールがほとんど同じ大きさでレーザポインタのケースとしてはぴったりである。

携帯ポインタ分解写真 携帯ポインタ外観写真
(左上から)
スペーサ、M2ナット(スイッチゴムに仕込む)、スイッチゴム、2×LR44
グリーンモジュール(外径は削ってある、スイッチ部にM2x3接着)
ヘッドキャップ、本体、テールキャップ
比較用単三電池
(上から)
比較用単三電池
組み立てた本体(左から先端がはみ出ている。スイッチ位置はピッタリ)

作ってみた結果は予想通りというか、2×LR44 では必要な電流が得られず、十分な光量にはならなかった。ほんとうに、会議で使うレーザポインタというレベルだ。小型でかっこいいし、会議で使う分にはまぶしすぎない光量なので、そういう目的にはよいのではないだろうか。それでも、LR44にしては過負荷な電流が流れるので、連続点灯は5分ぐらいしかできない。

私の勤務先では異常に会議が多く、自前のレーザポインタを所持している人も多い。そんな中で、緑の光点で指してみて、うっしっしってな目的にはちょうど良いと思う。

高出力レーザポインタ

少なくとも、光跡で夜空の星を指すことができて、1kmは飛ぶレーザを作るには、2×LR44 では出力電流が小さすぎる。最初は、リチウム電池の CR2 と組み合わせたポインタを作ろうかと思っていたけど、グリーンモジュール自体が、ほぼ単三電池の大きさなことを利用して、1/2 CR-V3 と組み合わせて、単三×2サイズのレーザポインタを作ってみることにした。CR-V3 はデジカメなどに使われる、単三×2と互換の大きさをもつ、3Vのリチウム電池である。内部は単三サイズの電池が二本、並列に繋がっている。分解して、単三サイズで3Vの電圧が得られるリチウム電池が得られる。以下では便宜上、これを 1/2 CR-V3 と呼ぶ。

CR123AとかCR2とかはφ15.6とかφ17.1とかもあって、LENSER に収まるようにφ12 に削ったグリーンモジュールと比べて太く、同軸に並べるとムダ肉が多いってのもイヤだった。

現物を見ながらアルミの厚板から削り出して作ったら、59x19x30.5mm の大きさになった。長さ8cm以内に収まった。アルミ削り出しの中にモジュールと電池を入れ、後ろからアルミ板を 4-M2x3 の皿ねじで固定する。アルミブロックの中に埋め込んであるので、放熱性も満足のいくレベルだろう。分解写真のようにレーザモジュールと 1/2 CR-V3 が並列に並んでいる。レーザモジュールの金属ヘッドがプラス、1/2 CR-V3 の外筒はマイナスなので、外筒はテープで絶縁している。点灯スイッチは、デフォルトのものから交換して、ちょっとロッドの長いタクトスイッチにしてある。スイッチのロッドの長さはうまく収まるように削った。モジュールは、LENSER に収まるようにφ12 に削ったものに、銅箔テープを巻いて、ピッタリ収まるようにしてある。

レーザポインタ レーザポインタ
単三電池と並べて大きさを比較。
単三×2のサイズ
面取りしてあるので持った感じしっくりくる。
(上から)
ケース
比較用単三電池
1/2 CR-V3電池(マイナス極絶縁のためテープ)
グリーンモジュール(銅テープ巻き、タクトスイッチ改)
基板抑えのゴム
底面のアルミ板(マイナス極用のテープ付き)

1/2 CR-V3 は、出力アップ改造したグリーンモジュールをほぼフルドライブ可能で、かなり強力なグリーンを放出する。レンズで集光すれば導電性黒スポンジから煙もでるし、集光しなくてもチョコぐらいは溶かせる。夜空に放てば光跡もはっきり見えるし、1.2km 離れた煙突を狙撃してみたら、緑の輝点がはっきり見える。光が広がっている様子もわかるだろう。星空ガイド用としては最適である。通常照明下の室内でも、ある程度の光跡が見える。

夜空の光跡

UVライト

オマケ

LED LENSER MOON が余ったので、元通りに復帰させるのもおもしろくないので改造してみた。白色LED → UV LED に入れ替えたのだ。それ以外はおんなじ。

UV LEDとはいっても、可視光カットフィルタが入っていないので紫色の光が出る。公称395nm って書いてあった。

UV-LENSER

遊び方は、暗闇でいろんなものに照射してみるだけ。蛍光塗料が入っているやつは反応して、ひときわ明るく光る。郵便物、お札などが代表的におもしろい。白い布と生織りの布、オレンジや黄色の蛍光塗料などもよくわかっておもしろい。蛍光ペンのインクをコーヒーフィルタ(無漂白)に付けて、ペーパークロマトで水展開してから、UV照射してもおもしろいかも。

蛍光、燐光、蓄光、レーザの違いは、別ページにて解説奮闘中。

レーザのクラス分け

JISによって、レーザの出力強度には次のようなクラス分けがなされれている。

ここで取り扱っているグリーンレーザは、可視光で 1mW 以上なので、クラス3B だ。その点に十分留意して取り扱って欲しい。

クラスJIS備考
クラス1 合理的に予知可能な運転条件で安全である。 0.39μW以下。安全のための特別な取り扱いが不要で本質的に安全なレーザ
クラス2 400nm〜700nmの波長範囲で可視放射を放出する。目の保護は、通常まばたき反射作用を含む嫌悪反応によってなされる。 1mW 以下の可視光レーザ。市販のレーザポインタはクラス2以下であるよう、規制がかかっている。
クラス3A 裸眼での観察に対して安全である。400nm〜700nmの波長範囲で放出するレーザに対して、保護はまばたき反射作用を含む嫌悪反応によってなされる。他の波長に対しては、裸眼に対する危険性はクラス1よりも大きくはない。光学的手段(顕微鏡等)による直接のビーム内観察状態(直接ビームまたは鏡面反射光を観察する状態)は危険。 1〜5mW の、拡大された可視光ビームを持つレーザで、目に入る分がクラス2相当のもの。望遠鏡などで集光しなければ安全。
クラス3B 直接のビーム内観察状態は、常に危険なものである。拡散反射の観察は、通常安全である。 0.5W以下。拡散反射ならば安全だが、直接、または、鏡面反射光が目に入ると、後遺症を含む障害を発生させる危険性がある。JIS C 6802では鍵や外部インターロック等が必要とされる(JIS C 6802 付属書表D2 製造業者の要求事項の要約 附属書表D3 使用者の予防手段の要約 等参照)
クラス4 危険な拡散反射を生じる能力を持つ。それらは皮膚障害を起こし、また火災発生の危険がある。これらの使用には細心の注意が必要である。 とても危険。

レーザ光の安全性についてはLaser Art & Science Associationが詳しい。

リンク



近藤靖浩