(2009/10/12)
義父の遺品の中から8ミリカメラと映写機と古いフィルムが見つかったので、それを活用するためのメモを記す。
カメラの機種は FUJICA P300。初期型と後期型があるが、頂いたものは露出補正機能が無い初期型である。そのかわり、レンズの前に被せるNDフィルタと露出計の前に被せるフィルタがセットになったものが付属していた。
電池は、駆動用に単三×4本、露出計用にHS-2Dという水銀電池を用いる。現在は、水銀電池そのものが売っていない。関東カメラサービスがLR-44(SR-44)×2をHS-2Dに変換するアダプタ(H-2D)というものを作っていて、私はビックカメラの通販で購入した。ただし電圧が異なる。HS-2Dは2.7V(電池には2.6Vと書いてあったが、水銀電池1セルの電圧は1.35V、2直で定格は2.7Vのはず)、LR-44は1.5V(2直にしたら3V)、SR-44は1.55V。これにより露出ずれなどの影響も考えられるが、露出計自体がズレている可能性もあるため、とりあえずは使ってみることにする。
フィルムボックスを開けて、カバーを外したところ、フィルム感度読み取り、兼、露出調整トリマが見えた。写真上部。トリマ抵抗が露出計調整用、3接点あるのがフィルムのISO感度読み取り用だろう。この接点は、上の軸の右上にあるレバーと連動していて、フィルムケースの溝(ISO感度を表す)に従ってレバーが動き、抵抗を可変していると思われる。露出がずれていれば、これを調整すればいい。露出計は、電池とCdS(これも今は作られていない)と抵抗とボイスコイル(電流計)からなっている構造。明るさでCdSの抵抗が変わると電流が変わり、電流計の針についた絞り板が動いてレンズに入る光量を制御する。
この写真はフィルムボックスのカバーを外したところ。上部に露出調整基板(トリマと接点)が見える。上軸と下軸の間の筒みたいなものがファインダー光学系。その左側にあるのがフィルム律速系とハーフミラー(入射光をフィルムとファインダーに分岐させる)。下側にあるのが巻き取り系とモーター。巻き取り系の左にあるのがレリーズスイッチ、そお上がレンズ、その上の丸いのが絞り用のボイスコイル。この、板より左側の部分は、フィルムボックスのカバーを外しただけではアクセスできず、レンズを分解してケースを外す必要がある。
露出計は電池を入れると動いたが、メイン電池を入れても巻き取りモーターが動かない。分解手順は次のとおり。
レンズに付いているネジ(ピントリング、ズームリング、その他)を全て外す。それらのネジで固定されているリング類をすべて外す。それでも光学系には影響はない作りになっている。そうすると、銀色の前ケースが外れて、レリーズやら露出計部分にアクセスできる。レリーズスイッチは、外周リング回転させることによって露出計の接点が入り、メカ的なロックが外れる。その状態で押し込むとモータ接点が入る。下にレリーズスイッチ部の拡大を示す。写真の左側に写っているのが、ファインダ用のミラー。
テスターで順にたどっていって、はんだが腐っているところを見つけて付け直したら、モータも動くようになった。
フィルムは、デーライト用のR25Nとタングステン用(室内)のRT200Nがある。色温度が違うだけでなく感度も異なっている。屋外撮影がメインなのでR25Nを購入。電池アダプタどおなじくビックカメラの通販で買ったが、現像を取り扱っている店なら取り扱いもしていることが多い。ビックカメラで通販オーダーしたときには、「有効期限が近づいているやつだがいいか?時間をくれれば新しいフィルムを取り寄せるが」と返答が来た。よい対応である。
シングルエイトのフィルムはカセットに入っているので取り扱いは簡単。カメラにセットするだけ。フィルムの長さが40フィートで撮影時間は 2分40秒。カメラにはフィート単位での残メモリがある。
まず、レリーズロックを外して明るいところを見て、露出計の動作を確認する。ファインダ内にAEメモリがあるので、振り切っていれば、NDフィルタを付けるなりして対策する。で、レリーズボタンを押せば撮影、離せばストップ。グリップ底面に雲台用のネジ穴があるが、まだ使ったことは無い。
電子機器の使用ができない、飛行機の離着陸時にも使えるのはアナログマシンのメリット。
現像は、フジフィルムのお店で受け付けてくれる。だいたい3週間ぐらい。世界中の8ミリフィルムの現像を東京一カ所でやっているらしい。しかも、その機械が壊れてしまって、通常ならサービス終息のところを、世界中からのリクエストに応えて機械を修理し、サービスを復活させたとのこと。写真に対する愛を感じる企業姿勢だ。しかし、それも平成25年9月までらしい。
アフレコ仕上げとサイレント仕上げが選べる。アフレコ仕上げとはフィルムに磁性体を塗布して、あとからそこに録音できるもの。磁性体塗布が無いものがサイレント仕上げ。録音機器を持ってないので、当然、サイレント仕上げを選択。
現像があがったら、リールに巻かれた状態で受け取れる。あとは映写機にセットするだけ。映写機も同時に頂いている。FUJICA SCOPE M10 というもの。プーリーのベルトがすこし延ていて調子が悪く、カバーを外して、起動時にベルトをプーリーに押さえ付けてやらなければならない。コマのタイミングとフィルムの張りを調整するレバーがあるのだが、ときどき脱調して、コマがきちんと写らず、上下にずれてしまうこともある。それ以外はだいたい好調に動作する。ランプの球切れも無い。
フィルムがサイレントで対応映写機も無いので、映像のみで音声なし。いろいろと解説をしながら映写することになるが、それもまたタノシイ。
DVD やMPEGファイルなどの電子的なデータは、再生装置が壊れたら全くの意味不明になってしまうが、フィルムだと、光に透せばなんとか内容がわかるのがアナログでよい。
しかし、一番確実な方法は、MPEG1などの簡単なデータ形式にしておき、デコーダのソースとともに、あちこちに分散コピーして保存しておくことだろう。データが読み出せてコンパイラがあれば、未知のコンピュータ環境でも再生が可能になるだろう。タイムカプセルとかに入れておくなりした、子供たちの今のデータが、彼らが老人になった時に見返すことができるだろうか。