KAMEでもわかる科学の話、他(ヨタ談)>いろいろな燃やし方
(2011/04/08)

いろいろな燃やし方

非常用コンロとしてアルコールランプなどを作ることが流行っているみたいなのでいろいろ調べてみた。

用語(厳密ではない)

引火点とは
液体燃料の蒸気に火をつけたら火が着く温度のこと。
発火点とは
火がなくても勝手に燃え出す温度のこと。
爆発限界とは
蒸気と空気の混合比率がこの範囲だと火をつけると爆発する範囲のこと。上限と下限がある。

一覧表としてはこちらが参考になる。

エタノール

引火点 13℃。22.6℃(60%w)。
つまり、13℃以上の場合、コップに入れて火をつけたらそのまま燃える。
冬は燃えにくいので暖めてやる必要がある。コップ自体を温めてもよいし、炎によって液体が温まる構造にしてもよい。エタノールの炎は青く、灯りをとるには向いていない。

飲料の場合、42度なら一瞬だけ火がついて、43度以上はコップにいれたまま燃え続ける。度数の簡易判定も可能。

爆発限界 4.3?19.0vol%。
蒸気圧 5878Pa@20℃(=0.058気圧)
つまり、常温でアルコールの蒸気が充満していたら5.8%の濃度であり、爆発する。アルコールランプを使う場合には換気に気をつけること。フィルムケース(今は珍しくなったが)にアルコールを入れて蒸気で充満させて、横穴から点火すると爆発してキャップが飛ぶ遊びは、良く行われる。

発火点 363℃
まぁ安全。

ブタン(C4H10)

ガスライターのガス

以下、ベンジンから軽油は石油分留製品であり、分留温度によって特徴づけられ、化学式で特徴づけられるものではない。

ベンジン

Zippo やハクキンカイロの燃料。まぁ軽いガソリンである。

ガソリン

引火点 -43℃
引火点がマイナス、つまり、常温で火がつく。
発火点 246℃

主成分であるヘキサン(C6H14)の爆発限界 1.2〜7.4 つまり、非常に低濃度でも爆発する、ということ。

灯油(C=10〜15)

引火点 40〜60℃
発火点 255℃

軽油(C=15?20)

引火点 50〜70℃
発火点 250℃

引火点が高いわりに発火点が低いというのは軽油の大きな特徴。おかがで、スパークせずとも噴射のみでディーゼルエンジンが動く。逆に、スパークしなければ発火しないのがガソリン。

サラダ油

オリーブ油の場合、引火点 225℃
ごま油の場合、引火点 304℃
なたね油の場合、引火点 320℃
引火点が室温以上の場合、液体に火をつけても燃えない。灯心に吸わせて、それに火を近づけ、局所的に暖めた状態で、はじめて燃える。時代劇のように、小皿にコヨリの灯芯を漬け、それに火を着ければ灯りが取れる。

サラダ油の場合、小皿の中の油に燃え移ることは無い。灯油、軽油の場合は、火が近ければ燃え移ってしまう可能性があるので、火が液体を温めないように注意が必要。

オイルストーブなる商品がある。タバコ消しをDIYしただけやんけ。面白い。

天ぷら温度が190℃ぐらい、それを越えて温まりすぎて引火点を越えると、鍋から立ち上る蒸気にコンロの火が引火して鍋全体が燃える。オリーブ油で天ぷらするのは、天ぷら温度と引火点が非常に近いのでちょっとした恐怖。

ところでサラダ油は化学的に言うと高級脂肪酸とグリセリンが結合したものである。脂肪酸とはつまり、直鎖炭化水素の片端がCOOHになっているもの。それが3本、グリセリンに結合している。直鎖の中に二重結合が多いほど(不飽和脂肪酸)固まり易い性質を持つ。個体のものを脂と言う。「エコナ」という脂は2本しか結合していない。

ろう

脂の固いものを総称して蝋という。生物由来のものはサラダ油と同様に脂肪酸とグリセリンが結合しているが、鉱物由来のものはガソリンの炭素が多いやつ、と思って良い。 暖めると溶ける。溶けたものを芯に吸わせて燃やすことができる。

ロウソクの科学』は名著。プロジェクト杉田玄白でも読める。

廃油凝固剤で廃油をかためてもロウソクができる。
廃油凝固剤は、個体の油脂。暖めると溶けて冷えると固まる。固まる過程で、液体の廃油を分子の網目に取り込むので、結局、トータルとして個体になる、という原理。これは化学反応ではない。

石鹸

油脂からグリセリンを外した脂肪酸のナトリウム塩。脂に、過不足なく反応する量の水酸化ナトリウムを投入して暖めてかき混ぜて反応させると出来上がり。不純物もまとめて固まるまえに塩水を咥えると石鹸だけ優先的に固まるので不純物を除去できる。

石鹸は燃えない。

しかし、酢酸を投入して熱して反応させる。すると、ナトリウム塩は脂肪酸のほうではなく酢酸の方とくっつく。酢酸は蟻酸まで還元され、蟻酸ナトリウムとして濾過される。脂肪酸側は酢酸が還元されたメタノールとエステルを作り、これは脂肪酸が一本だけの油脂と類似であり、脂肪酸の長さや不飽和度によって、蝋状の物質になる(この辺テキトー)。
つまり、石鹸を削って解かして酢酸を加えて越しとった個体はロウソクになる。

グリース

潤滑油と石鹸を混ぜたもの。石鹸によって潤滑油が飛散するのを防ぐ。すげー適当な説明だな。

燃える系に話を戻す。

水素

爆発限界 4.0〜75vol%
非常に広い爆発限界を持つ。これより広いのはアセチレンだ。ガソリンの替わりに水素を燃料としようとしている人は、この意味を考えたことがあるのだろうか?水素センサに出番はある?

アセチレン

出てきたついでに、カーバイドランプ欲しい。私が小学生のころまでは、夏祭りの縁日で実際に使われていた。今も amazon で売ってるのか。震災非常用でのリバイバルだろうか。祭りといえば、ラムネ詰め機やポン菓子機も懐かしいな。

紙、木

紙や木は、要するにセルロースである。セルロースとは、デンプンと同じようにブドウ糖が繋がったものだが、繋がり方が異なるので、デンプンは消化できるがセルロースは消化できない。しかし、両方とも燃える。熱をかけると、分解して、水とメタンなどのガスが出てきて炭が残る。紙や木を燃やすと炎がでるのは、このようにガス成分が燃えているからで、ガス炎とちがって明るいのは炭素が燃えているから。

木材を乾留して炭素のみ残したもの。

なぜ木材ではなく炭にするのか?
炎や煙が出ない、爆ぜない、軽い、高温になる。
炎が出ないのは、ガスになる成分を飛ばしてあるからで、調理での焦げを防ぐのに役立つ。高温になるのは、十分な空気を送っても炎が消えないから。
炭の上手な着火は着火剤の活用だけでなく、煙突効果について十分考慮するのが良いみたい。私はだいたいバーナーでやってしまうのだが。万博公園のバーベキュー場は火を付けた炭をもってきてくれるので非常に便利。

しかし、ネットで「炭」を検索すると、マイナスイオンとか電磁波とかばっかり出てきて病んでる。


記憶を頼りに、かなーりテキトーに書いたので、半分ぐらいは正確ではないが、正確さより感覚的な理解を優先してみた。ご指摘歓迎。

このように、それぞれの燃料で物性が異なり、それによって燃やし方や扱い方が異なってくる。当たり前のことだが、ガソリンが高いからといって、軽油を入れても動かないのだ。
よく、学校で×××を勉強しても社会で役に立たない、と言う人がいる。 それは単に、アホだから学んだことを生かせていないだけだ。
まぁ、私も、学校で勉強したことなんて、仕事に全く役に立っていないが(その割りに就職活動段階では、やたらと学歴を重視する会社であるが)、遊びや生活には役に立てているよ。

正しい科学の力によって災害を乗り切るのだ。

絵を書くのに、Inkscape を使ってみた。ついでに、XDrawChem もいれてみた。
Inkscape は操作感や出来栄えの品質など、とても良い感じだが、やはり重い。下記には、PNGとJPGとSVGで貼り付けてみた。どれぐらいのブラウザで読めるのかな?
XDrawChem は一応入れてみたが、使い方がよくわからないし、やたら重い。テキトーな分子の絵を書いたらIR吸収が計算できたりと、いろいろと高度な機能があるみたいだが、私ごときには不要だった。あと、拡大・縮小がなんかバギー。




近藤靖浩