うちの KAME さんは、自称「ランプマニア」だそうです。でも、僕から見ると全く基礎がなっていません。そんな KAME さんに解説してあげた話です。
光源となる電球にはいくつか種類があるので、その特徴を説明します。
最も古くからあるタイプの電球です。窒素などの不活性ガス中に、タングステンなど耐熱性の高い金属フィラメントを配置し、そのフィラメントに電流を流して、発熱、発光させます。
色あいは黒体放射に従います。フィラメントが金属でできており、耐熱性の高いタングステンなどを使っても3000℃ぐらいまでしか上げられません。よって色温度もそれぐらいで、赤っぽい光になります。
黄色っぽい光と思ってる人も多いかと思いますが、これは、人間の目がホワイトバランスに対して順応して、記憶色に近い色を再現しているためです。機械で測れば赤色です。
ガラスが透明のタイプと、白色のシリカタイプがあります。裸電球として使う時にはシリカタイプがよろしいかと思いますが、完全にシェードに被われて、その透過光を味わうタイプでは、クリアタイプの方が効率が高いです。
ところで、白熱灯で明かりを採ることが、いかに効率が悪いことなのかわかりますか?
黒体放射なので、プランクの公式を使って計算できます。
プランクの公式とは、黒体が熱せられた時に発する黒体放射を現す式で、
白熱電球の温度はおよそ2500℃とすると、白熱電球が発する可視光エネルギーは、プランクの式を可視光範囲で積分して、
このときのピーク放射周波数は、νで微分して、
一方、全放射はステファン・ボルツマンの法則より、
まだ計算してないのですが、答えをインターネットで探すと、約10%の効率だそうです。つまり、白熱灯の光として放射されるエネルギーのうち、可視光は10%です。残りは赤外線、つまり、白熱灯は赤外線電球、ということです。
白熱灯は、バルブ内に不活性ガスを封入してあるわけですが、その不活性ガスとしてクリプトンガスを封入したものをクリプトン球と言います。
なぜ、クリプトンかと言えば、断熱性が高いため、効率よくフィラメントの温度を維持することができる、からです。そのため、同じワット数でも小さい電球、たとえば、懐中電灯やインテリアライトなどに使われます。懐中電灯は、ミラーで集光するため、点光源に近い方が望ましく、小さい方が、携帯性が良い。インテリアライトでは、デザインの都合上、電球自体が小さく、点光源に近い方が良い。
なぜ、クリプトンは断熱性が高いのでしょうか。それは、分子量が高いから比熱が大きい、と言い換えることが出来ます。腕に自身の有る人は、クリプトンの分子量から熱力学によって比熱を計算できるでしょう。
白熱灯では温度を上げると、フィラメントの金属が蒸発して、寿命が早くつきます。これを解消するために、窒素雰囲気ではなく、ハロゲンガス雰囲気に封入したものがハロゲンランプです。
ハロゲン雰囲気中でフィラメントを点灯させると、蒸発したフィラメントがハロゲン化合物となります。そのハロゲン化したフィラメントは、フィラメントの熱で熱せられてすぐさまフィラメント上に、金属のフィラメントを析出します。結果として、フィラメントが蒸発しない状態を保てます。このことを、ハロゲンサイクルといいます。
ハロゲンサイクルを利用することによって、ハロゲンランプは、白熱灯と比べて、フィラメントをより高温の状態で利用できます。黒体放射では、高温のフィラメントを用いると色温度が高く、強い光が得られます。ハロゲンランプの色温度は黄色です。昼光色と思えば良いでしょう。
一方、ハロゲンランプを点灯させるしくみを考えます。より高温度のフィラメントを同じワット数で得るには、フィラメントを短くして、単位フィラメント長あたりの消費電力密度を上げます。このため、白熱灯と比べて、低圧大電流で駆動します。
ハロゲンランプを点灯するためには、一般に、専用のトランスを用いて変圧するか、電子トランスと呼ばれるスイッチングレギュレータを用いて変圧します。こうすることによって、低圧大電流で駆動するのです。そのため、ハロゲンランプの口金は一般に、100V用の白熱灯とは異なります。100Vタイプのハロゲンランプもありますが、口金は一般電球とはことなります。おそらく、発熱が一般電球とは異なるため、事故防止のために違えてあるのでしょう。
ハロゲンランプの一種なのですが、特に思い入れがあるので章を分けます。
ハロゲンランプは、前述の通り、高温状態でつかいますので、発熱がすごいです。ディスプレイ用のランプ(展示品の照明用)は、電球にリフレクタが一体になっている、スポットライトみたいなのが多いですが、光をリフレクタで集光することは、熱線も同時に集光して、すごい熱を照射します。
ハロゲンのスポットライトは、色が白っぽく、演色性に優れるので、展示物などの照明に使われることが多いのですが、この熱が展示物を劣化させます。そこで、リフレクタを、可視光は反射するけれど、熱線は反射しない特殊ミラーに変更します。すると、展示物には熱は伝わらず光だけが照射されます。
この特殊ミラーは、誘電体を多層に重ね合わせて、光の干渉を利用して可視光のみを反射させます。このような波長選択性のミラーをダイクロイックミラーといい、これを用いたランプをダイクロイックランプといいます。
このダイクロイックミラーは、3CCD式の高級ビデオカメラの色分解にも使われます。選択色のみを反射することによって、光の三原色、赤緑青に分解して、各々のCCDに導くのです。
光の干渉を利用したダイクロイックミラーは、光りの入射角によって、虹色の光が後ろに洩れだします。CDが虹色に見えたり、ホログラムシールが虹色に見えるのも、光の干渉によるもので、それぞれの波長によって干渉条件が異なるため、白色光が虹色に分解されるのです。
ダイクロイックランプから洩れだす、この虹色の光って、非常に美しいと思いませんか?ダイクロイックランプの実物をみたいなら、貴金属売り場などに行けば見ることができます。貴金属の美しさに、勝ってしまいそうな、ダイクロイックランプの美しさを感じることが出来るでしょう。
理屈っぽく呼ぶと熱陰極線管となります。熱せられた両極の間で水銀蒸気の中で放電を起こすと、水銀の強い紫外線が放射されます。この紫外線を管の内面にある蛍光体に当てて、可視光を放射します。
通常、放電を起こすには高圧をかける必要があるのですが、電極をフィラメント状にして熱することによって、電子を放出しやすい状態にして、100Vでも放電可能なようにしたのが熱陰極線管です。
蛍光体の種類を変えることによって、ほとんど任意の色を作り出すことが出来ます。蛍光燈の色って、冷たい光の代名詞みたいに言われますが、それは誤解です。三原色タイプ、昼光色タイプ、電球色タイプ、白色光タイプなどがあります。印刷などの色あわせを行う場合は、高演色性の昼光色の蛍光燈を強くお薦めします。
交流によって点灯しているので、通常120Hzのちらつきが感じられます。これを解消するのがインバータ。人間の反応範囲よりも高い、数キロHzの周波数で点灯させるのです。ついでに点灯管も必要ありません。
紫外線で発光して、それを蛍光体によって可視光に変換するのですが、これをせずに、直接水銀発光を放出するのが殺菌灯。ガラスも通常ガラスは紫外線を通さないので、紫外線を透過する石英ガラスに変えてあります。
「蛍光燈は色が悪い」などと、俗説で言われていますが、色見本を見るための標準の光源は、高演色性、5500K色温度の蛍光燈だと記憶しています。
高速道路のトンネルとかに使われている、黄色い光。ナトリウムの炎色反応で出る色ですね。
炎色反応とは、鉄の針金の先に塩水を付けて、ガスコンロの炎に突っ込んでやれば観測できます。
「黄色い光は、排気ガスなどの塵の中で、最もはっきりと見えるから高速道路に使われている」と信じていましたが、こちらも、単に、「効率が非常に高い」から、というのが真の理由のようです(人工光源の中では最高らしい)。黄色い光は目が疲れるのですが、これも道路公団の収益性のためなんで、我慢しましょう。
蛍光燈も水銀灯といえばそうなるのですが、両極を熱して陰極線を発生させる蛍光灯とは異なり、高圧で陰極線を力づくで発生させるのが、高圧水銀灯です。
起動に時間がかかります
HID とは、High Intensity Discharge のことで、日本語で言えば、高輝度放電管です。ナトリウムランプも、水銀灯もディスチャージランプに含まれますが、車のヘッドライトなどに用いられているものは、水銀蒸気とハロゲン化金属蒸気を使ったもので、メタルハライドランプとも呼ばれます。発光状態の高温で、ハロゲン化金属から金属が分離し、金属蒸気放電の連続発光スペクトルを得るしくみです。また、ガラス管付近では、冷えているので金属蒸気ではなく、ハロゲン化金属として存在しているので、金属蒸気とは違いガラス管を侵しにくいです。
高圧で放電させるので、専用のインバータが必要です。また、棒状の管の中央部で発光する構造なので、リフレクタで集光したときの効率が高いです
この HID が意外な分野で人気を集めています。それは水中ライトです。水中では水に遮られて光りが失われます。特に赤い光が失われて、微かな青い光だけになるのです。水中で正しい色を得ようとすると、水中ライトを持ち込まなければなりません。白色の演色性の高い、強い光を照射することのできる、HIDランプは優れた光源になります。
点光源であるので、集光性、ビーム性が良いので、モノを照らす時、合図などに非常に使い勝手がよいです。現在、HIDの水中ライトは、まだまだ高価ですが、良いものなので、もっと安価になって広まってほしいものです。
ネオンサインというのは、赤やら緑やら青の光るガラス管のことを指すようですが、ネオンの発光は赤色のはずで、それ以外は蛍光体の色か別のガスがつまっているようです。
ちなみに、色を連続的に可変できるランプが、橋や観覧車のイルミネーションに使われていますが、私は、いまだに動作原理がわかりません。どなたかご存じの方、教えて下さい。
高圧放電で、キセノンガスを光らせるのが通常のフラッシュです。点灯回路としては、コンデンサに充電した電荷を一気に放電して、さらにコイルで昇圧することによって駆動電圧を得ています。
フラッシュを分解すると、高圧を蓄積できるコンデンサが入手できます。高圧のコンデンサは、想像以上のエネルギーを蓄えることができるので、いろいろな利用価値があります。
エレクトロルミネッセンス。商品名、面発珍といわれていたものです。蛍光で平面光源が得られます。自由に切って使えるのが面白いね。
最近は、有機ELディスプレイとして脚光を浴びています。
LEDとは Light Emitting Diode のことで、日本語で言えば発光ダイオードです。ダイオードというのは2極性の半導体で、一方向には電流を流し、逆方向には電流を阻止する働きがあります。順方向(電流が流れる方向)に電流を流すと、半導体の材料に応じた単色光で発光します。この色は素子の材質によって異なっています。LEDは、光る時に順方向電圧降下(VF)を生じます。
LEDの色は、材質によって異なり、赤、緑などが従来良くありました。最近話題の青色LEDが発明されて、光の三原色がそろうことになり、自由な光がLEDによって得られるようになりました。LED 光源の特徴は、発光効率が比較的高いことと、ランプ寿命が長いことがあります。
発光効率は数%と言われています。ちなみに、白熱灯、蛍光灯の発光効率は、どのていどでしょう。知っていたら教えて下さい。効率が高いということは、同じ明るさを得ようとした場合に、より長時間点灯が可能なことです。電池動作に適します。
LEDのランプ寿命は、一般的には、光量が半減する時期で決められ、5000〜8000時間と言われています。動作温度が10度上昇するごとに、寿命が半減する、10度2倍則に従うようです。一般に信じられている(かもしれない)ように、無限に近い寿命をもつわけではありませんが、他のランプの寿命(HID だと500時間)よりもはるかに長く、突然の球切れを起さないことは、非常にメリットがあるでしょう。
ところで、HIDランプの寿命はカタログで500時間だとすると、Technical な用途の水中ライトにしようとする人は、潜る前には、必ず、バルブを換えましょうね。
最近は、白色LEDなんてのも出来てきて、水中ライトを試作してみました。
他の光と同列に扱うことができない、夢の光源。特徴は、位相が揃っている、単色性である、集光性が良い、コヒーレンスである、などなど、電波と同じような感じで扱うことができる光です。CDの普及にともなって、赤色レーザダイオードが手軽に入手できるようになってきました。
応用例1: レーザポインタ。くだらん、法規制でややこしくなってきてますが、Junk 屋で600円ぐらいで買えます。ひとつポケットに入れておくと、モノを指すとき便利です。水中用もあって、一時期、ガイドさんに人気でしたが、けっこう、光点が見にくいので、最近はあんまり、使ってる人を見ません。ムラカミ商事から出ていた初期タイプのものが、構造上の欠陥により、よく壊れた、ってのも原因でしょう。私も3個ぐらい修理しました。
応用例2:通信する。レーザはけっこう届きます。半導体レーザそのままでも200mは飛ぶのです(それ以上は半導体レーザの収差のため、うまく飛びません。レンズで整形してやる必要がある)。変調をかけてやれば、先進っぽいでしょ。ちなみに、向かいの家のガラスに反射させてやって、反射波を拾って復調してやると、音が聞こえるらしい。レーザの性能ってのは、そんぐらいあるのだよ。
応用例3: 干渉させる。