J.S.バッハ:カンタータ106番

本日演奏するカンタータ第106番「神の時こそいと良き時」は、前回の演奏会で取り上げたカンタータ第4番、第196番とともに、バッハの最も初期のカンタータの一つで、バッハが再評価された19世紀当時からたいへん人気があり、シュヴァイツァーらにも激賞されて有名になっている。この作品は、バッハのミュールハウゼン市の聖ブラジウス教会のオルガニスト時代、おそらくエアフルトで没した母方の伯父、トビーアス・レンマーヒルトの葬儀(1707年8月16日)において演奏されたものと考えられている。葬儀に寄せて死の問題を掘り下げるテキストは、主として聖書の句を綴り合わせ、そこに若干のコラール詩節を加える形で書かれている。器楽はリコーダーとヴィオラ・ダ・ガンバ(各2)と通奏低音からなり、含蓄に富んだ古雅な響きを与えている。なお、第5曲のリコーダーに現れるコラールは「我、わがことを神に委ねたり」の旋律であり、当時の会衆にはソプラノの呼びかけが神への信頼を意味することを、即座に理解できたことと思われる。


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2002/01/20 10:44