ルネサンス世俗曲
ルネサンス時代の音楽といえば、パレストリーナのミサ曲やモテットに代表される教会音楽が最も良く知られているが、実際には一般市民社会を中心にして各地に独自の世俗曲が花開いた時代でもあった。それらは、マドリガル、シャンソン、あるいは各種の舞曲であった。
パウエルとジェルヴェーズの舞曲組曲はどちらも4声体で書かれており、今回は前者はリコーダー・コンソートの形で、後者はブロークン・コンソート(複数の種類の楽器)の形で演奏する。一人の奏者が数多くの楽器をこなすのは、当時としては当たり前のことであった。「ラララ・・・」と「甘い思い出」はフランス語による世俗歌曲で、当時シャンソンと呼ばれ、フランドル楽派の大きな影響を受けながら発達していった。本日は、セルトンの「ラララ・・・」はリコーダー・コンソートを重複しながら原曲の4声の合唱で、またフランソワ世の詩で当時流行した「甘い思い出」は、サンドラによるものを4声合唱として、スザートによるものはアルトのソロに、リコーダーと2本のヴィオラ・ダ・ガンバを加えて演奏する。
使用楽器を簡単に説明しよう。リコーダー(ドイツ語ではブロックフレーテ)は、現在学校で音楽の時間に使われているものと基本的には同じもので、木製でクライネソプラニーノからグレートバスまで8種類以上もの大きさ(音域)の違うファミリーがある。バロック時代まで単にフルートといえばリコーダーのことを指していた。本日はソプラノからバスまでの4種類とソプラノの1オクターブ高いクライネソプラニーノを使用する。クルムホルンもそのファミリーは大小さまざまで、ここではソプラノクルムホルンを使用する。ドイツ語で曲がった笛という意味で現代のオーケストラなどで用いられるフレンチホルンとは全く関係ない。キャップの中にオーボエのようなダブルリードが入っている。リュートはアラブに起源のある撥弦楽器で日本の琵琶と発祥をともにし、アンサンブルの中での単旋律の演奏、独奏、そしてチェンバロのように伴奏楽器として用いられる。当時は上品な楽器とされ、チェンバロと並んで貴族階級に大変人気のある楽器であった。ヴィオラ・ダ・ガンバは一見チェロに似ているが、指板にはフレットがあり、ギターやリュートの仲間といえるもので、ヴァイオリン族とは起源を異にしている。大きさの異なるファミリーがあるが、本日はバスガンバを使用する。
(大谷文彦)
2002/01/20 10:44