クリスマス小曲集

今回は、主として中世・ルネサンス期のドイツで歌われたカロルを中心に取り上げてみた。本日は器楽合奏で演奏するかあるいは原語で歌うが、讃美歌にあるものは歌詞を付している。なお、一部省略した部分がある。

羊たちは安らいで草を食む
NHK−FM「朝のパロック」のテーマ曲で、ご存じの方も多いことと思う。もとはバッハのカンタータ第208番「美しき狩こそわが悦び」第9曲のアリアである。バッハ27歳ごろの作品で、ザクセン・ヴァイセンフェルス公国の君主クリスティアン公の誕生日の祝宴音楽として作曲された。いつごろかクリスマスに演奏されるようになったのかは不明であるが、誕生祝ということと、牧歌的な曲調が好まれたのであろうか。歌詞の大意は「優しい牧人に見守られて、羊たちは安らいで草を食べている。統治するものだ善く治めている所は、静けさと平和に包まれ、そして国々を幸福に導いていた」というものである。

この日、人となりぬ(讃美歌第二編126番)
この日 人となりし御子を 声も高く歌いまつらん 喜びて
神の御子は御倉を下り 人の姿とり賜へり へりくだりて
知恵に富める博士たちも 御子の前に来たり捧ぐ 宝の箱
低き者も 高き者も 天使たちと歌え 声も高く  −神の御国に栄光あれ−

ヨセフ、愛するヨセフ(讃美歌第二編122番)
「静かに眠れ、愛しき子よ」とむずかるイエスを優しくマリアがあやす。
救いは下りぬ 清けきこの日に、来たりて拝せよ イエスを。
イエス、イエス、世の望みなる主を。

マリアは歩みぬ(讃美歌第二編124番)
マリアは歩みぬ 茂る森影の 茨の小道を
胸に抱けるは まどろむ幼子 平和のイエス君
茨の枯れ木も 血に染みしのちに 清き花咲きぬ

スザニ、スザニ(讃美歌第二編220番)
来たれや、御使い、歌えや、来たりて歌えや、みどり子主イエスに。
竪琴忘るな、歌えや、ともども奏でよ、みどり子主イエスに。
神には栄えを、歌えや、人には平和を、みどり子主イエスに。

バラの花
バラが一輪咲きいでた かわいい頃から 昔の人が歌ったように。
エッサイを親として 小さな花が開いた 寒い冬のただ中に そして夜のただ中に。

アルメイン、ブランル
クリスマスの明るく、うきうきした楽しい雰囲気を良く伝える小曲

天の高き所より下り(讃美歌101番)
ルターがキリストの降臨を子供達に語り聞かせようとして作曲した。最も初期のコラールの一つであり、本日はクルムホルン4本で演奏する。
いずこの家にも めでたきおとずれ 伝うるためとて 天よりくだりぬ
マリアの御子なる 小さきイエスこそ 御国にこの世に つきせぬよろこび
神なるイエスこそ 罪がきよむる きずなき小羊 救いの君なれ

あまき喜び(讃美歌102番)
もろびと声あげ よろこび称えよ かみのめぐみ この世に現れ
ダビデの村の いぶせき馬屋に きよき御子は うまれたもう
もろびと声あげ 喜びたたえよ あめのとびら 今しも開かれ
つきせぬめぐみを 身に帯び給いて きよきみ子は うまれたもう

楽器について

クルムホルン:マウスピース(歌口)の内側に2枚のリードがあり、奏者が狭い穴を通して息を吹き込むと、内部でリードが振動して音を出すというしくみになっているルネサンス期には最も一般的な楽器の一つであった。名前は「曲がった笛」の意味。

ハープ:ハープは最も古い歴史を持つ楽器の一つで、歌の盛んであったイギリスのウェールズ地方やアイルランド地方などにおいて1000年も前から用いられていた。9世紀のアイルランドでは高度なハープ音楽が確立され、厳しい訓練を受けた吟遊詩人が生まれた。半音階が出せないため調を変えて演奏することができなかったが、半音キーのついた楽器が17世紀末(バロック期)に発明された。19世紀に入るとさらに改良が加えられて現在のペダルハープ(オーケストラハープ)の完成に至る。本日演奏する楽器は半音キーの付いたもので、アイリッシュ・ハープまたはサウル・ハープと呼ばれるものである。


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2002/01/20 10:48