ルスサンス期のスペイン音楽

15世紀末から16世紀にかけてのスペインは、世界最強の帝国として君臨するとともに、音楽面での充実もめざましく、空前の黄金時代を形成していた。

世俗音楽では、ビリャンシーコと呼ばれる比較的短い世俗歌曲が栄えた。本日演奏する「リィゥ リィゥ チィゥ<Riu riu chiu>」は、クリスマスに歌われたビリャンシーコの一つである。宗教音楽では、本日演奏する「澄みきった目<Ojos claros,serenos>」の作者であるフランシスコ・ゲレーロ<Francisco Guerrero>(1528〜1599)やセビリャ出身のクリストバル・モラーレス<Cristobal Morales>(1500頃〜1553)らが活躍し、穏和で叙情的なマリア賛歌などを生み出している。また、「世の力も富も<Hic vir despiciens mundum>」の作者トマス・ルイス・デ・ヴィクトリア<Tomas Luis de Victoria>(1548〜1611)はルネサンス期スペイン最大の音楽家であり、数多くの教会音楽を書いた。

ルネサンス期スペインでは、他のヨーロッパ諸国にくらべて器楽音楽が著しく繁栄していたことが特筆に値する。器楽音楽は中世・ルネサンス期のヨーロッパにおいても盛んに行われていたが、それは即興そのものであって記譜されることはあまりなく、職業器楽奏者の地位は声楽家の地位よりも数段低いものとして位置づけられていたという。

これは、器楽を異教的なものとみなすキリスト教的な音楽感に基づくものではあるが、過去にイスラム勢力による支配を受けた歴史をもつスペインでは、こういった偏見がなかったことが器楽音楽の発達に幸いした。スペインでは特にビウエラという楽器が愛好され、多くの作品が残されている。ビウエラはギターの普及によって次第に姿を消していくが、スペインで盛んになった器楽音楽は各地にひろがり、16世紀末になると舞曲や鍵盤音楽の流行とあいまって市民権を獲得することになる。


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2002/01/20 10:48