歌と器楽によるルネサンス・バロック小曲集

ここ数年の演奏会と同じく、第二ステージでは独唱と器楽演奏によるルネサンス期およびバロック期の小品を演奏する。

「み名によりて<イン・ノミネ(In Nomine)>」とは「栄光は汝に、三位一体なる神よ」というグレゴリオ聖歌の基づく器楽曲を意味する。ジョン・タヴァナー(1490頃〜1545)がミサ曲の「ベネディクトゥス」の一部としてこの聖歌の旋律を土台に作曲してから、約1世紀半にわたりイギリスの多くの作曲家によって「イン・ノミネ」という一連の器楽曲が書き続けられた。この名の由来は、タヴァナーが「ベネディクトゥス」の歌詞「in nomine Domini」に聖歌の旋律を用いたためであると考えられている。今回演奏するParsleyの作品では、テノール・パート(今回はバス・リコーダーで演奏)が譜例に示す聖歌の旋律を長く引き延ばして演奏し、他のパートは独立した主題とその模倣をからめながら演奏する。

「コヴェントリー・カロル」は15世紀以前のもので、英国中部地方の古都コヴェントリの野外生誕劇に用いられたものである。カロルはクリスマスを祝い素朴な民衆の歌を意味している。歌詞の大意は次の通りである。
  ねむれよ いとしの みこ やすらけく
  このひの まもりに このおさなご めぐりて みなうたう やすらけく
  あわれや きみにと かなしみ われ なみだに こえもなし やすらけく
  ねむれよ いとしの みこ やすらけく

「心安らげ、幸せな者たち」は、イエスの誕生に出逢った者たちに、この奇跡の瞬間に居合わせることができたことの幸いを歌った古曲である。

「乾杯の歌」は、クリスマスの集いの楽しさを歌った古曲であり、歌詞の大意は次の通りである。
  さあ 集まって 乾杯しよう
  緑の樹々に囲まれた中で
  三々五々集まってくる 楽しい僕ら
    愛とよろこびが あなたに訪ねるように
    あなたにも乾杯を
    神がクリスマスを祝福して下さるように。
  いつも物乞いをしてまわる乞食と違い
  僕らは近所の子供たち
  あなたとも前に逢ったはず
    愛とよろこびが・・・・・・
  心優しきご主人様と奥様
  暖炉にあたっている時に
  困ってさまよう僕らを思い出して
  貧しい僕らを思い出して
    愛とよろこびが・・・・・・

<奥野倫世・葛谷光隆・坂本尚史>


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2002/01/20 10:44