第3ステージ:舞曲を中心として

ブランル
 ブランルは、広く人々に親しまれた村人の踊り、田園舞踊で、フランスの各地では、それぞれのブランルを郷土舞踊として楽しんでいた。人々が手をとって輪になって踊るが、両足をそろえる時に軽く片足を上げて弾む。ブランルの歴史は古く、古代に遡ると普通はいわれているが、中世のバラード、カロル、ロンドなどを源流とする、との考えもある。それぞれ「歌いながら踊った」方で、繰り返し(リフレイン)を持つことが多く、独唱者や先導者が歌い踊れば大勢がそれに応えたものだった。簡単に言えば、ロンドは中世のカロールとなり、次いでブランルへと移っていった。またバラードは端的に「踊る」(バラーレー)から起っている。ブランルには、simple,double,gayがあり、若い人、結婚した人、年配の人という分け方である。

パヴァーヌ
 有名なモーリス・ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」でもわかるように、パヴァーヌはゆるやかな4拍子の曲で、典雅な雰囲気をかもし出す。スペインの教会の踊りから始まったといわれるパヴァーヌは、近代になったからもなお宗教的な場で踊られていたという。初期キリスト教では儀式の中で行列風に踊られていた。中世になって宗教行列への熱狂が一種の恍惚境に人々を誘い、「死の踊り」のような狂信的なものになって禁止されていったが、パヴァーヌの宗教的な雰囲気はそのままに伝わった。のちにフランスへ宮廷舞踊として伝わり、16世紀初頭にはパヴァーヌを歌いながら踊った記録が残されている。1529年にはパリの楽譜印刷業者アテニャンが、フランスで初めて美しい歌曲や舞曲を出版し、市民が音符や舞踊に親しみやすくなる機会を作った。

ガリアルド
 ガリアルドの起源は南イタリア、あるいはローマ近辺といわれ、語義はフランス語で「陽気な、活気にみちた」、イタリア語で「力強く活発」、英語で「威勢の良い、突進する」というものである。それまでの集団の踊りから個人の踊りに変化し、男性が相手の女性の前で技を披露し、時に身振りを交えて求愛の型を示したりする。ガリアルドの特徴の一つは、5拍めにアクセントがあって、そこで高く跳び、6拍めで終止の型を決めて止まるというステップである。ドイツではガリアルドを「山羊の踊り」と呼ぶこともある。山羊の飛び跳ねる様子、後ろ足を蹴り上げる動作を連想するのであろうか。やがてガリアルドはパヴァーヌの続きの踊り、優雅さと対照的な跳躍舞踊として、一連の組舞踊にまとまっていく。ガリアルドの一種、または前身とも考えられる「トルディオン」も5拍めに跳躍するが、それ以外は普通の歩くようなステップで、ガリアルドより穏やかである。また男女が2人で手を取り合って踊る点が、一人で踊るガリアルドと異なる。

<奥野倫世>


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2002/01/20 10:44