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録−ROKU−
第一話「エアチェック」

otonosama

2004/09/30 21:59

エアチェック・・・ラジオ放送(主にFM)を録音すること。


あれはまだ西宮に住んでいた頃、当時の、今考えれば実にしょぼいラジカセで、ラジオ放送を録音して遊んでいた。内容は別に何でもよかった。目に見えない電波に乗って届く誰かが作った声や音や音楽。それがカセットテープに記録でき、何度も繰り返し聴ける事が不思議で、楽しくて仕方なかった。


基本的に気に入った曲はCDを入手することにしているが、やはりタダで様々な音楽が聴けるのはありがたいし、ソフトとして発売されないジャンルの物も多く放送される。何年前からかは忘れたが、私が現在も継続して定期的にエアチェックしているのは、NHK−FMの「FMシアター」というラジオドラマの番組である。

この番組のエアチェックを始めた当初は、Aurexの古〜いチューナーを使って、大学時代に奮発して買ったSONYのカセットデッキ、TC−K333ESGで録音。電波の状態があまりよくない所に住んでいたので、テレビのアンテナ線を分配してチューナーに繋げ、日によっては受信状態があまりよくなかったりして、かなりノイジーな録音になってしまう事もあったが、当時はそれなりに満足はしていた。

言うまでも無いが、カセットテープというのは長さが決まっている。だから基本的には一発勝負である。「FMシアター」の放送時間は50分。100分テープの片面に録音すれば、編集の必要も無く収まる訳だが、流通量が少ないテープだったので高価であった。それに放送内容も50分ギリギリの時もあれば、本編は47分くらいで、残りの時間は音楽を流す時もあった。テープメディアは例外なく、その長さにいくらかの余裕をみている物なので、短い時は90分テープの片面、もしくは46分テープの両面に半分ずつに編集して収録できる長さである。長い時でも50分テープを使えばよいわけだ。

そこで私はHiFiのビデオデッキを使って放送を丸録りし、ビデオのリニアタイムカウンターから本編の長さを把握して、カセットテープに編集する、という手法を使い始めた。当時、ビデオを使ったエアチェックはFMレコパルという雑誌によく紹介されていた。しかしながらビデオデッキのHiFi音声は、数値上のスペックだけを見ると高音質のように思えるが、実は強力な圧縮伸張処理をしているため、本当の意味のHiFi(=再生音が原音を高い忠実度で再現する事)とは程遠い、一言で言えば劣悪な音質であった。テレビに繋げて映画を観る程度なら気にならないが、ちょっといいアンプに繋げてちょっといいスピーカーで音楽を再生すると、まともな耳の持ち主なら耐え難いような音が飛び出してくる。

人の声がメインのラジオドラマなら何とかなるかな?とも思ったのだが、自然音を効果音に使ったものや、ドルビーサラウンドで放送されるもの、ダミーヘッドで録音されたものなどになると、名ばかりのHiFiの弱点がこれでもかというくらい露呈してしまう。エアチェックのためだけにDATデッキまで買う気にはなれず、やがて私は「まともな音質、満足できる形で録音を残せないのなら、もうやめよう」と、しばらくエアチェックから遠ざかる事になる。

その後、エアチェックを再開したのはMDデッキを手に入れてからである。丸録りして後から好きなように編集できるのだから、便利なことこの上無い。音質的にも初期型のものはよく知らないのだが、私が買ったデッキでは不満は無かった。カセットテープに録音していたものも、全てMD化した。後からMDLPという長時間モードの規格が追加され、ステレオセパレーションを少しばかり我慢すれば、FMシアターならMDLP4で74分ディスクに六回分も収録できる。一回あたりのランニングコストはわずか15円程度と、コストパフォーマンスも抜群。唯一の問題は、オーディオタイマーを持ってない私が、放送が始まる夜10時まで起きていられないことか(←早い時は9時には寝る奴)。ディスク残量が充分なら、まだ起きている時間からチューナーとMDデッキをつけっぱなしにしておけるのだが・・・・・・。


ちなみに数ヶ月前まではYAMAHAのAVアンプ、DSP−AX8に内蔵されているチューナーでFMを受信していた。ところが先日ネットオークションで、バブル前後の頃のSONYの高級チューナー、ST−S333ESXIIとST−S333ESGをたて続けに落札してしまった。「こんな額じゃ落とせやせんだろ」と思って入札していたものだったのだが、どちらもその「こんな額」で落ちてしまった。当時は5万近くしたもので、学生だった私はチューナーにそこまで金をかける気にはなれなかった。重さも最近の安っぽいコンポと違い「アンプか?これは・・・?」と思える程に重い。

落札してしまったものは仕方ない。先に届いたESXIIにアンテナを繋げ、MDデッキに直結(AVアンプの入力端子は既に全て塞がっているので)してFMを聴いてみた。


・・・・・・・・・!!!


あえて書かないが、ランバ・ラルの超有名なセリフが頭の中を駆け巡る。仕方ないなんてとんでもない。AVアンプ内蔵のチューナーと単品のチューナーでこれほど差があるとは・・・!当然といえば当然なのだが、実際耳にしてみると驚きを隠せない。受信性能、ノイズレベル、Dレンジ、Fレンジ、チャンネルセパレーション・・・どれをとっても完全に別物である。バロックの森やベスト・オブ・クラシックあたりをMDで録っても、ヘッドホンでも使わない限り一般の人でCDとの区別が付く人はそうはいまい。ESGの方は結線はもちろん、まだ電源すら入れていないが、おそらく同等以上の性能を見せてくれるに違いない。

オーディオは楽しい泥沼だと言っていた人がいたなぁ。キリが無いので、これ以上あまり深みにはまらないようにしなければ・・・。放送の世界でもデジタル化の波は押し寄せているが、FM放送にはできるだけ長く生き残って欲しい、と切に願う今日この頃である。あと、ゲームばっかにリキ入れんと、Hi−MDの据置型デッキの発売も心待ちにしてますよ、SONYさんっ(^^)

つづく


2004/09/30 21:59