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録−ROKU−
第ニ話「テレビ録画」

otonosama

2004/10/09 18:56

テレビ録画・・・説明は不要かと(^^;)


DVDレコーダーを買って約三ヶ月。150枚ほどあったLDのDVD−R化を終え、それに続いて200本近くあったビデオテープライブラリーのDVD−R化にも、ようやく終わりが見えてきた。それにしてもHDD+DVDレコーダーって便利だ。これがもし20年前にあったなら、我が友人よっちゃんも私のテレビ録画テクニックを「神業」と呼ぶことは無かったであろう。エアチェックよりも私が熱心だったのが、テレビ番組の録画であった。洋画やアニメ、テレビドラマやNHKスペシャルなどを録りまくった。

最初に我が家にやって来たのは、松下のNV−650というVHSのビデオデッキだった。三倍モードには対応していたが、リニアタイムカウンター、HiFi音声、FEヘッド、どれもまだ搭載されていなかった。しかし私のテレビ録画は、その頃からCMをカットすることを基本としていた。ビデオが二台あれば話は簡単だったのだが、ダビングすれば画質は劣化するし、何より当時はまだまだ高価な買い物で、ここでもやはり一台の機械で一発勝負を余儀なくされた訳である。

みなさんも一度はレインボーノイズを見たことがあるだろう。FEヘッドが搭載されていないビデオデッキで重ね録りをすると発生する、画面の上から下にスクロールする虹色のノイズである。ビデオの信号は、テープの表面積を有効に利用するために、テープに対して斜めに連続して記録される。これを重ね録りの時に消去する際、録再用ヘッドと同じシリンダーに付けられたFE(フライングイレース=回転消去)ヘッドが記録時と同じ軌跡で斜めにトレースして消去すればこのノイズは出ないのだが、当時はフラッグシップモデル並の高級機くらいにしか装備されておらず、テープに対して垂直に設置された固定消去ヘッドで古い信号を消していたため、消え残った古い信号がノイズとして再生画像に現れるのである。

FEヘッドが搭載されていないビデオデッキでそのうっとうしいノイズが極力出ないようにCMをカットするためには、

1.録画一時停止状態を解除して実際にテープに記録が開始されるまでのタイムラグ。
2.いつCMになるのか、そのタイミング。
3.CMが何分何秒で明けるのか。

これらを完全に把握しておかなければならない。それに加えて、ぴったりと時刻を合わせてある時計があれば、私はほぼ完璧にCMをカットしたテレビ録画テープを作る事ができた。

については、NHKの時計の映像が画面に映る時報に合わせて録画一時停止を解除し、その後それをコマ送りで再生すれば1フレーム単位(1秒は30フレーム)で把握する事ができる。ちなみに最初と二台目の松下のビデオでは2秒、三台目以降の三菱のビデオでは1秒と8フレーム(1.27秒)であった。その頃の三菱のビデオは停止状態から再生を押すと、わずか0.3秒で映像が画面に出たのだが、録画の時はそこまで早くなかった。もし録画時もそんな早いレスポンスだったら、逆にCMカットは困難だったろう。0.3秒といえば次元大介の早撃ち並みの早さである。

についてだが、NHKには言うまでもなくCMが無い。だからスタートさえミスらなければ問題ナシである。また、アニメはほとんどが30分番組、CMの長さも1分と決まっていて、本編ではCMの直前にアイキャッチが入るので把握しやすい。本編の時間もきっちり固定されていることが多かった。そしてCMが明ける2秒(1.27秒)前に一時停止を解除すればよいのである。

テレビドラマは少し難易度が上がる。DVDレコーダーを買ってからは意識しなくなったが、TV局によってCMの長さや回数が異なる。また、オープニングの直後に「この番組は〇〇〇の提供でお送りします」なんてのが挿入され、その後続けてCMが流れてくれればよいのだが、CMにならずに即本編に突入されたりしたら、もうパニックである。一時停止のタイミングを逸すると、停止→再生→早戻し→コマ送り→録画一時停止・・・という作業を極めて短時間にやり遂げなければならない。古いビデオはメカのレスポンスが『コイツ・・・赤く塗ってやろうか?それともマグネットコーティングでもしたろかいっ!?』と半分本気で思ってしまうほど遅く、実に大変な作業だった。本編からCMに移る時でも、映像がフェードアウトとかしてくれればタイミングも解りやすいが、昔は何の脈絡もなくCMになる場合が多く、困った事に『オイッ!これCMだったんかいっ!?』と叫びたくなるほど、本編との繋がりが自然なCMもあったりした。

さらにもう少し難易度が上がるのが映画の放送である。放送時間が長いので、その分長時間に渡って集中力を維持しなければならないからだ。私は吹き替えの洋画が好きだ。別に字幕が嫌いという訳ではない。誤解してる人も多いのだが、実は字幕の方が出来の悪い意訳をしている場合が多い。単位時間あたりに表示できる字数が制限されているためで、翻訳者の腕が問われる部分なのだが、字幕で映画を観ている時に『ちょっとちょっと、いまの訳はないんぢゃないの?戸〇〇〇子さんよぉ・・・』と思う事も決して少なくない。テレビで放映される洋画はほぼ吹き替えである。だからLDを持っている映画でも、吹き替え音声目当てでよく録画をしていた。

一番録画しやすかったのは日テレだったと思う。CM時間は一定で、CMになる時刻が何時何分5秒、10秒、15秒・・・という感じに本編が5秒刻みのキリのいい所で編集されていたからだ。一番やりにくかったのはフジテレビ。CMの時間は一定でなかったし、CMになる時刻も全然キリがよくなかった。放送時間が延長されると尚更であった。ただ、大体どの局でもCMに入る5秒前に、画面の端に「××洋画劇場」みたいなスーパーが表示されていたので、油断さえしなければ一時停止のタイミングを誤る事は無かった。今にして思えば、編集担当者が日テレではA型でフジテレビではO型だったのではないだろうか・・・?

もう一つ、私の前に立ちはだかったのが、第一話でも書いたテープの長さの問題である。古いビデオではカウンターが時間表示でなく4桁の数字になっている。その数字からテープ残量を正確に把握する事は不可能であった。だからであろう、当時のビデオデッキは天板の一部が透明で、そこからテープ残量が直接見えるようになっていた。今にも終わりそうなビデオテープを覗き込みながら、『あとちょっと・・・ちょっとでいいんだ・・・がんばってくれっ!』という願いも空しく、番組の最後が切れてしまった録画も一度や二度ではない。

三倍モードを使ってCMカットをすれば、30分枠のアニメなら120分テープ一本に16〜17回分、60分枠のドラマなら8回分、120分枠の洋画は4回分を収録できた。が、やはり放送局によって微妙に本編の時間が異なる。長かったのはこれまたO型(?)フジテレビ。本編が長いのだから視聴者としてはありがたい話だったと思うが、テープの長さと戦う私には全然ありがたくなかった。何しろビデオテープの値段は現在の十倍以上だったのだから。

失敗を繰り返す内に、同じ120分テープでも長さがメーカーごとに異なり、そしてその中で一番長いメーカーを発見した。今は無きScotchである。そーいや雑誌広告で田〇ま〇しをイメージキャラに起用していた事もあったな・・・。ま、それは置いといて、他のメーカーが123分弱から長くて123分10秒だったのに対し、Scotchのビデオテープは124分を超えていた。三倍モードなら3分余計に録画できる。私にとっては実に大きな3分であった。

最初のビデオデッキで既にかなりの数のテレビ番組を録画し、「これホントにこのビデオで一発録りしたの?」と言われるほど繋ぎ目が自然なテープを数多く作成した私だが、二台目のビデオ、松下のNV−F70には前出のFEヘッドが搭載され、カウンターは時間表示、音声もステレオHiFiとなり、レスポンスは今一つながらメカはフルローディング方式、さらにジョグダイヤルとシャトルリングも本体だけにだが付いていた。というか、これが付いているからこのビデオを買ったのだ。ジョグダイヤルがあれば、前にも後ろにも細かいコマ送りが可能なので、私のテレビ録画の精度は飛躍的に向上した。

その後、三菱のHV−S11を入手するに至り、私のテレビ録画技術は完璧といってよいレベルに達した。最も感激したのは、予測を誤ってまだCMが続くのに一時停止を解除してしまった場合、巻き戻しボタンを一押しするだけで、さっき停止していたポイントまでテープを戻して再び一時停止の状態まで自動的に復活くれる機能である。もはや失敗する要因など微塵も残っていなかった。テレビ録画を始めた当初は、放送時間中ずっと画面と時計を睨み続け、集中力を保っていなければならなかったのが、この頃にはもうビールを片手にするほどの余裕があった。


次々と新しい規格が生まれる中、かなり息の長い規格であったVHSも、私の貴重なビデオライブラリーと同じく、その寿命を全うしようとしている。しかしDVDレコーダーや第一話のMDデッキのように、便利な物がどんどん増えていくのに反して、創意工夫というものがどんどん減ってゆくのも憂慮すべき事だな、と思ったりもする。

                      つづく


2004/10/09 18:56