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演奏会拝聴 その六
otonosama

2006/04/02 14:41

 『J.S.バッハ ヨハネ受難曲
 アンサンブル《BWV2001》
 2006年2月17日
 浜離宮朝日ホール』


 初めに断っときますが、私は本来、有名人や芸能人のサインが欲しいなどとは思わない人です。仲間由紀恵さんは好きです。篠原涼子さんも(あくまで女優として)好きです。ゴジラのヨメになりそうな戸田菜穂さんもかなり好きです。でももし、本人たちが私の目の前に現れて、自分から「サインをしてあげる」と言ったとしても、多分こう応えます。「サインは結構、お会いできただけで光栄です」私が現時点で会った時にサインをおねだりするであろうと思うのは、日本人ではさだまさし西村雅彦の二人だけです。え?何の話かって?それはまた後ほど。

というわけで、またまたヨハネでございます。が、今回は今までのヨハネとはちょっと違うのです。

   受難の物語に沿って告白されゆくバッハの真情。
   アリアにコラールに刻まれるその想いへの共感を満たすのは、
   アンサンブル《BWV2001》の響き。
   指揮者なしの、16人のソリストたちが躍動し、調和し、深くバッハを体現する。
                            (HPより引用しました)

 ソリストのみで構成された団体であるアンサンブル《BWV2001》。設立時よりその存在を知っていて、いつか聴いてみたいとは思ってました。その《BWV2001》がヨハネを演奏する。私としてはものすごーく聴きに行きたいわけです。昨年の11月に新潟の魚沼でもヨハネを演奏されてます。当然、情報をキャッチしてましたので、新潟在住のmarieを巻き込んでヨハネツアーを画策したのですが、その頃、仕事のトラブルと忙しさで休みもロクに取れず、ストレス溜まりまくりで体調も思わしくなかったため、新潟行きを断念しておったのですよ。ああ、2005年は一度も生ヨハネに行けずじまいだったのねん・・・そう思って再びHPを見てみると、2月に第5回記念演奏会として東京でヨハネの演奏会が。この機会を逃したら、もうアトは無い。まだ仕事がヤマを越えていなくて行けるかどうは不明でしたが、金曜の夜だからなんとかなるかもしれないと思い、HPからチケットを注文しました。

 今回のメンツは最近とんと音沙汰の無いわが妹kurikoに加え、一昨年のマタイと昨年のモツレクでステージを共にし、大学院を卒業後、東京の企業に就職した岡山バッハカンタータ協会HP管理人Fくんの三人。うらやましいことに職場からは電車で15分程で会場に来れるそうな。ま、Fくんは自分でチケット取ったんで席は離れてましたけど。今回、ドキドキする要因のひとつに、生まれて初めてヒコーキに乗る、というのがありました。電車の乗り換えすら妹の手を借りなければ満足にできない、めちゃめちゃ低レベルなおとのさまでござりまするので、事前に知識を頭に叩き込むべく、マイブレインこと友人よっちゃんに教えを請います。

「初めて空路で上京することにした。いつものように『さるわか』にて御教授賜りたい」

ほどなくメールが届きました。


   サルでも分かる雑学−第1回−

  いつもサルでも分かるシリーズをご利用いただき、有難うございます。
  今回は雑学編第1回、「飛行機の乗り方−前編−」です。

  飛行機には国際線と国内線があり、多少手続きが異なりますが、
  今回はシンプルな国内線について解説しましょう。
  飛行機はその特殊性から、電車など、他の公共交通機関とは手続きが
  異なる部分が多少有ります。各手続きを順を追って説明します。

  【1】予約する


       (以下 略)


 わからない事があると、私はよくこの「サルでも分かる」シリーズを発行してもらうのです。今回は前・中・後編に加え、番外編もあったので、長すぎてさすがに全部載せられませんけど、ホントにサルでも分かるくらいに事細かに解説してくれます。性格的にはまるで向いていないと思いますが、彼がもし教師になったら、担当する科目の偏差値は少なくとも10は上がるでしょう。今回空路を選んだのは、往復21000円のチケットを見掛けたから。のぞみ特割きっぷよりさらに4000円安い。のぞみより狭くて騒がしいのは間違い無いけど、小一時間ガマンすればよいわけで。ほぼ毎日ミゼットIIを駆るワタクシ、狭いのは慣れておりまする。でも食わず嫌いなんですが、ヒコーキってなんか恐いんだよなぁ・・・・・・たっかーい所を飛ぶんだよなぁ・・・アタリマエだけど。


  仮に墜落、という事態なってもパイロットの免許もない身にはどうしようもない
                      ・・・byよっちゃん
  落ちたらみんな即死だから痛くないです!大丈夫!
                      ・・・byTia


・・・・・・ありがとう、キミタチ。オイラ安心したよ・・・


 岡山空港へミゼットIIで向かいます。昼過ぎの便だったからでしょうか、駐車場が空港から一番離れた所しか空いておらず、ターミナルまで早足で5、6分かかりました。寒さに備えて通販で買った皮パンツを穿いていたのですが、17日朝の岡山はポカポカ陽気で、足元が熱くなるくらいでした。うーむ、失敗したか?いつものようにジーパンで来ればよかったかもしれない。空港で搭乗手続きを済ませ、待ち合いで待つ間、例によって今夜の食事の案内を頼んである、再就職が決まったばかりのTiaにメール。

「こっちはいい天気であたたかいよ。そっちはどお?」
「すげー寒いっす・・・冬日・・・」

皮パンツは正解だったけど、二日前に行った散髪はマズかったよ、ママン(ToT)

 いよいよ生まれて初めてのヒコーキに乗り込みます。・・・・・・めっちゃせまーい。油断すると頭打ちまくりです。のぞみと同じ感覚で二列の方の窓際の席を取ったんですが、これは大失敗。左右に加えて頭上の荷物入れによる圧迫感がいっぱいです。今度取るときは三列の方の通路側にしよう。少なくとも頭上だけは開放的だ・・・。でも、着席したその圧迫感はミゼットIIにそっくり。確かに狭いけど、これなら二時間や三時間は全然ヘーキですわ。でもって離陸。よっちゃん曰く「ついつい『行きまーーーーーす!』と言いたくなる」とのことだったのですが、期待したほどのGではなく、ちょっとガッカリ。以前、長野のオタク、N氏操縦の第七聖典号(スバルインプレッサ)で感じた加速時のGの方が強烈でした。その時は四人乗車でエアコンONだったので、ホントの全開というわけではなかったのでしょうが・・・。上昇ペースが思っていたより早く、あっという間に雲の上へ。シートベルト着用のランプが消えたので、クワイアットコンフォートとメモリープレーヤーの電源を入れます。のぞみの時には実に快適なサイレントを実現してくれたクワイアットコンフォートでしたが、飛行機の場合は当然ながら鉄道よりもキーンという中高音のノイズが多く、サイレントとは程遠い(事前によっちゃんから聞いてはいたが)状態。それでもクラシック音楽を聴くのに支障の無いレベルにはなります。数十分で再びベルト着用ランプが点くんで、のんびり聴いてはいられませんけど。

 無事空港に到着しまして、モノレールとJRで新橋駅へ。予約したホテルは駅から徒歩7分のはずなのに、到着するのに30分近くかかる方向音痴な私・・・ああ、これだから一人歩きはイヤなんだよなぁ。チェックインして一時間ほど経って、kurikoがロビーに到着し無事合流。「駅から早かったな」「地下道が直結してましたよ」「・・・・・・(ずーん↓)」一息入れて会場を目指します。どうやら私の脚はアライメントがかなり狂っているらしく(←んなわきゃーない)途中kurikoに「そっちじゃありませんよ」「どこ行くんですか?」などと言われながら、浜離宮朝日ホールへ。kurikoにチケットを渡し、「裏に住所書いとくと案内来るみたい。書いといたら?」「そうですね。えーと、書くもの書くもの・・・あったマジック」「・・・なんでマジック?」「要るんです。仕事で使うんです」・・・???よーわからんが、誰かが寝てる最中に足の裏に落書きでもするのか?でもそれって仕事じゃねーよな・・・ま、いーか。しばらくして、その日の仕事を終えたFくんと合流。それぞれの指定席へと向かいます。

 ステージの上に並べられた椅子の数は、楽器を置くのに使用するものも含めて20弱。実に小ぢんまりとしています。客席数は後方通路に並べられた臨時席を加えると600弱。平日の夜なんで第一部に間に合わなかった方もおられたようですが、ほぼ満席。ソプラノのソリストは、初めてヨハネを聴くために上京したときに一番印象に残ったスーパーサイヤ人こと(←コラコラ)佐竹由美さんと、もうお一人は高橋節子さん。アルトはバスの小原センセの奥様、小原伸枝さんと阪口直子さん。テノールはEnsemble14の指揮者のヒグマ・・・いや違った、辻秀幸さん(実は佐竹さんのダンナさま)と、同じくEnsemble14のヨハネでエヴァンゲリストをされていた大島博さん。バスはおなじみの小原センセと、これまたEnsemble14でピラトを歌われていた田代和久さん。実に錚錚たる顔ぶれです。

 演奏が始まります。少人数とは思えないスケールを感じさせる前奏です。残響時間も相当に長く、バッハにピッタリ。そして最初のHerr!で思わず我が耳を疑いました。!!!・・・・・・ステージ上の歌い手は間違いなくたったの8人なのに・・・・・・8人しか歌っていないのにっ・・・!目を閉じると40人を超える人間が歌っているように聴こえるっ!スゴスギル・・・。つーか、あんたたち反則。だって全員スーパーサイヤ人3ぢゃん。「ここにBACHが存在するという真実」・・・チラシに書いてある言葉です。これが決して誇大表現ではないという事を思い知らされます。正にアンサンブル。そりゃトップレベルのソリスト揃いで、おそらく全員がヨハネを指揮できるくらいのスキルを持ってるんだもん。このレベルの演奏となると、もはや「一緒に歌いたい」などという気なんぞこれっぽっちも起きません。自称ヨハネフリークのおとのさまは完全に《BWV2001》のヨハネに呑み込まれてしまったのでありました。

 私の脳内ランキングでは、現在ソプラノのソリストの第1位は佐竹さんです。テノール1位はわれらが団長oniさんで、これはこの16年間不動のままです。バスは三人ほど候補がいますが、1位確定には至ってません。で、アルトの1位はOPEのレギュラーソリスト、脇本恵子さんなのですが、今回、その存在を脅かすソリストに出会ってしまいました。小原センセの奥様、小原伸枝さんです。Esist vollbracht!を歌われたのですが、よい意味でくぐもった、非常にしっとりした声で曲の内容ともベストマッチ。うーん、イイ。同率1位・・・かな?この方のようなアルトはとても貴重な存在ですよね。佐竹さんの超純水のような透明な声は今回も健在で、ついついうっとり。この人のアリア一曲聴くためだけに上京しても悔いはございませぬ。テノールの大島さんはエヴァやって、アリアも何曲か歌って、合唱も全部歌って・・・ほとんど歌いっぱなし。わずかに疲れを感じた部分はありましたが、安心して聴いていられます。小柄な方なのにタフですねぇ。あと、今回初めて聴いたヒグマ・・・いやだから違うっ、辻さんの歌声。見た目によらない声質と、見た目に違わぬ迫力に溢れておられました。

 唯一不満だったのが、対訳歌詞をガサガサと騒がしい音を立ててめくるガサツ極まりない聴衆の皆々様。一応各ページの終わりには「ページは静かにおめくりください」と書いてはあるのですが、そういう注意書きに注意を払うような人はさ、ハナからそんなノイズなんぞ立てないワケでして・・・。LEDの電光掲示板やプロジェクターで字幕をステージ上や反響板に映し出すのは、視覚的に非常に鬱陶しいので好きではないのですが、そうした方がよかったかも。せめて歌詞の改ページ箇所を曲の途中でなく楽曲間に持っていくように編集して欲しかった所です。ま、これだけ素晴らしい演奏が眼前で繰り広げられているのに、下を向きっぱなしで対訳にかじりつくようにしている人々自体、私には全く理解不能ですが。

 休憩時にロビーに出るとCDを販売しておりまして、思わず佐竹さんのCDを2枚購入(^o^)1枚はソロアルバム、もう1枚はバッハの結婚カンタータが2曲(残念ながら1曲は外国人ソリスト)が収録されたアルバム。しばらくミゼットIIの車内で佐竹さんの声が響き渡ることになりそう。いや、まいったねこりゃ(*^^*)

 ほんとにあっという間に終演。もっと感想書くつもりだったけど、言葉にしきれません。各コラールではチェロの田崎瑞博さんが弓を持ち替えて指揮をされてました。最後のコラールが終わり、田崎さんの腕が下り、残響が消え去り・・・しばらく静寂です。学生席の女性が拍手しようかどうしようかという様子でためらってました。このまま何もせずに余韻に浸っていたかったのですが、時間が止まってしまった感じでいつまでたっても拍手が起きなかったので、本意ではありませんでしたが私が拍手の口火を切らせていただきました。本意ではない、というのは常々感じていることですが、多くの演奏会で、明らかに演奏内容に関係なく先を争うようにして拍手をなさる不届き者がおられます。特に音の響きが残っている時点で手を叩き始めるのは(状況によってはそうでない場合もありますが)あれは拍手とはいいません。演奏そのものを破壊する犯罪にも等しい行為です。心ある方は決してなさらぬように。

 話が逸れました。600の聴衆から降り注ぐ拍手の洪水は、当然の如く出演者全員がステージを去るまで続きました。いやぁ・・・ここから動きたくないよ。でもそういうワケにもいかない。我々をおいしい食事に連れて行くべく、駅ではTiaが待機している頃です。同じく余韻に浸りたい様子のkurikoを連れてロビーへ。「あ、みんな出てきてますよ。出演者」「あ、ホントだ」本日の出演者がロビーで満面の笑みを浮かべてます。・・・ん?待てよ。「お前、マジック持ってたよな?」「ええ、ありますよ。ちょっと待ってください、えーと・・・あ、ありました」「ナイスだっ!・・・あれ?さっきのとは違うマジックだな。一体何本持って・・・?ま、いいや。来い!佐竹さんのサインもらうぞっ!!

「あのー、スイマセン。これにサインいただけますか?」とさっき封を切ったばかりのソロアルバムとマジックを差し出すワタシ。「まあ、買ってくださったの?」話し声もイイ声だぁ・・・も、メロメロ。CDのレーベル面に直筆サインが入り、その瞬間、宝物が一つ増え、ミーハー心というものを少しばかり理解してしまったのでした。他にも話し掛けたそうな人がウヨウヨしていたので、握手だけしてもらって早々に退却っ。んで、小原センセにもご挨拶。「いやあちょっと調子が悪くて、もうギリギリでした」調子悪くてあれかよ・・・。ホンマにこの人たちってば・・・。

 Fくんを伴って新橋駅でTiaと合流。「また髪型変わったなあ」「先輩、帽子です、ソレ」なんて言いながら、歩いて数分のジンギスカン屋に連れてってもらいました。今回Tiaカレとは初対面。実にソフトな印象で優しい目をしている。・・・うん、確かに似ている。『○○の○ー○ん』(自主規制)に。店の外で席が空くのをちょっと待つ間、Tiaカレと会話が弾む。MSネタ、ATネタ、二足歩行ロボットネタ等々・・・。流石にTiaカレを務めるだけの事はある。侮りがたし、○ーさ○(;^^A 店内に入ってとりあえず乾杯。んで羊肉がてんこ盛りで出て来ました。店員さん曰く「ナマでもいけますからー」・・・そーなん?食ってみよ・・・おお、ナマでもちゃんと肉の味がする!まいうー!野菜と一緒に焼いて、これまたまいうー!!時間があまり無かったので大酒豪が揃ってる割に深酒はしませんでしたが、大満足でホテルへ戻りました。

 次の日、やめときゃいーのについつい秋葉原へ向かってしまいました。久しぶりだなあ。でも完全にオタク街だなあ。この空気に違和感無く溶け込めるなんて、アンタすごいよ長野のNさんっ!駅からあまり離れるとまた迷子になってしまうので、周辺をうろつきます。ついついオーディオの展示が充実している店で足を止めてしまいますね。ある店の最上段に展示されたチューナーを眺めていると、店員さんに話しかけられました。

「チューナーですか?」
「今でもソニーの333とMD使ってエアチェックしてるんですけど、もう高級品と言われるチューナーって出ないんでしょうね。アキュフェーズの30万のは別にして。ここに並んでるのも、下から指一本で押せばひょいと持ち上がる物ばかりだし。」
「ESシリーズをお持ちですか・・・そうですねえ・・・ディスクメディアももう長くないでしょうし。あっという間にソリッドステートの時代になってしまいましたねぇ」
「MDといえばソニーはもう据置のHi−MDデッキなんて出す気ないんでしょうね」
「ないんでしょうねえ。ONKYOの出してるこれが最初で最後かも・・・(ONKYOの小さなHi−MDデッキを指さす)」
「・・・この大きさならこれ(持って行ってたデイパック)に入りますかね?飛行機で来てるんで荷物の個数増やしたくないんです」
「箱が不要なら大丈夫、エアキャップ巻きますよ」
(無心で)じゃ、これください」

・・・・・・やっぱ秋葉原はキケン地帯だ。ついつい買い物しちまうよ〜。Hi−MDは既に私の中ではこのまま人知れず消えゆく規格だと思ってたのに・・・。デジタルアウトが無いんで生録や編集には使えませんが、長時間の録音ができるんで、やっぱあるとエアチェックには便利ですしね(と自分をムリヤリ説得)

 16時ごろ岡山空港に到着。いい演奏聴けたし、いろいろ買い物したし、佐竹さんのCD&直筆サインはゲッチュしたし(^^)b 今回も大・大満足でございました。しかし、Fくんよ・・・困った事になったよね、君。これが初めての生ヨハネだったんだろ?今回以上のヨハネを聴くのは、多分国内ではムリだと思うぞ・・・。


なんか演奏会の感想とゆーよりただの旅日記みたいですねぇ・・・タイトル変えようかしら?


2006/04/02 14:41