指揮者のつぶやき… 〜指揮者の寺子屋〜


[バックナンバー]


春の気配
TAKAちゃん

2002/04/08 13:35

 もう何度か書いたが、ボクが給料をもらっているところは大学である。今年度の研究室には4年生のゼミ生6名と修士課程の学生2名が所属している。ここでは、鉱物の合成を中心として研究の指導をしている。このページをご覧の方は先刻ご承知のことと思うが、念のため言っておくと、ボクの研究分野は音楽関係ではない。1月の最終週あたりから3月始めまでは、大学、特に私立大学の教員にとって、定期試験、入学試験、卒業・修士論文の指導と発表・審査会、それらの判定の教授会と続くもっとも忙しい時期である。特に、発表・審査会の前の数日は、学生さんも学生時代の最後を飾る(?)忙しい時とは思うが、教員にとっても大変な時期である。学生さんは自分の発表さえまとめればいいのであるが、こちらは7人分の指導をしなければならないのだから、‘超’が3つ付くぐらい忙しい。家に帰るのが午前様になるくらいである。

 私の勤務する大学は山の上にある。広報活動では「小高い丘の上」と言っているが、どう見ても丘ではなく、れっきとした山である。(名前はオカヤマ○○大学であるが・・・・、関係ないか!)。山の上というのは意外に平地が少ない。そこに無節操に場当たり的に学舎を建てたものだから、空き地も少ない。よって駐車場がない。まるで落語の三段論法みたいであるが、まさにその通りである。したがって、ほとんどの教職員は、最近開通した路線バスか、山の下の借り上げ駐車場から徒歩または送迎バスでの通勤となる。ボクのように大学から直線距離で2km以内に住むものは、当然のように徒歩通勤と相成る次第である。以前は自転車通勤をしていたこともあるが、健康のことも考えてここ数年はなるべく徒歩を心がけている。片道25分ほどだから、ちょうど良い距離である。しかし、この25分がかなりつらい。特に忙しい時期や、朝1番の講義がある日は特につらい。朝1番と言っても9時10分からだから、一般の勤労者から見れば遅いほうであろうが、夜遅く朝も遅いのが習慣になっているから、ボクにとっては厳しいのである。従って、ついつい車で送ってもらうことになってしまう。帰りはどうするかって?帰りは娘の勤め帰りに寄ってもらうことが多い。大体は夜9時頃である。そうでなければ、歩いて帰る。運動になるし、下りだから少しは楽である。それに、夕食の時のビールの味が良いというおまけまで付いてくる。(以前に、姉妹校の看護学校の校長に、こんなことを考えるようになったらアルコール依存症の始まりだと言われたことがあるが、気にしていない)

 忙しい時期が一応終わって、昨日久しぶりに徒歩通勤をしてみた。するとどうだろう、そこここに春の息吹が感じられた。ついこの間まで、茶色一色だった草むらに、緑がちらほらと見られた。ボクは、植物の名前にはあまり強くないので、まず、芽を吹いていたのは、おそらくヨモギであろう。菊に似た緑灰色の新芽を伸ばしていた。また、田圃の畦にはイヌノフグリが可憐な青い花を付けていた。そして、道に面した家の庭のは、すでに満開であった。寒風の中でも、これらの草木はちゃんと春が近づいているのを感じ取っているのだろう。徒歩通勤をすると、このような自然に巡り会えるし、季節の移り変わりを肌で感じ取ることが出来て嬉しい。学生にも、バイクや自転車ばかり使わず、たまには歩くことをすすめているのだが、実行するものが少ないのは残念である。

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 ここまで書いて、また忙しくなって2週間が過ぎてしまった。会議と役員をしている学会の役員会での出張、年度末を控えての歓送会が続いたのである。宴会もたまなら美味しいものが食べられ沢山飲めて良いのであるが、5日間も続くと少し応える。決して歳のせいとは思いたくないが、パソコンに向かう気にならなくなってしまう。

 2週間の間に、春の気配はボクの家の庭にもやってきた。桜草の芽が出始め、木蓮のつぼみも膨らみ始めた。前半を書いていた頃は水仙サザンカだけだった。庭に出しっぱなしだったシンビジウムも花が咲き始めた。そして、ヒヨドリメジロといった野鳥も訪れるようになって、賑やかになってきた。木蓮はボクの好きな花の一つである。初春の青空を背に、まだ芽吹く前の枝だけの木に咲く、大きな花が美しい。また、咲く前のつぼみが、一日一日と膨らんで来るのを見ると、まるで春が一歩また一歩と近づいてくるような感じがして、とても楽しいものである。木蓮には色々な花色があるが、代表的なのは白と紫である。ボクは紫木蓮の方が好きだ。だから、庭の手入れをしてもらったとき、わずかに空いた隅のスペースに紫木蓮を植えてもらうように植木屋さんに頼んだ。そして翌春、花の咲くのを待ちわびていた。その木蓮には、なんと白い花が咲いた。白い紫木蓮だろうか、そんなものはないはずで、結局のところ植木屋さんが間違えたのであろう。でも、せっかくボクの家に根付いたのだから、今も大切にしている。木蓮の花の命は短い。一斉に咲いたあと、決まったように雨が降る。翌朝のボクの家の前の道には、汚れて茶色になった‘白い’花びらが一面に散っている。


2002/04/08 13:35