指揮者のつぶやき… 〜指揮者の寺子屋〜


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銚子便り (第10便)
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演奏会の不始末 −

TAKAちゃん

2004/11/29 20:23

その1:OPE器楽グループによる秋のコンサートでの出来事

 遠距離会員だから練習に余り出られていない、楽器は岡山で演奏者は銚子だから個人練習もままならない。いずれも決して褒められたことではないから、自業自得・自己責任といえばそれまでだが、演奏には自信がなかった。そのわりには淡々と、大きな破綻もなく演奏会が進んだ。そして、いよいよバッハの「フーガの技法」だ。さすがにバッハによる大曲・名曲で、リコーダー重奏でも演奏しがいのある、正直かなり手強い曲である。アルトから始まり、いよいよベースの出番だ。ボクは大きく息を吸い込んだ。
 ん!なんだか喉がイガイガする。この感触は何だ?そうだ、咳だ。などと思うまもなく咳き込みそうになってしまった。休符まではまだ20小節はある。懸命に咳をこらえながらとにかく音を出そうとするが、咳を押さえようとするとこんどは運指に神経が回らなくて音を間違える。最後まで死にそうに苦しかった。
 次の曲は降り番だったが、その後も後遺症が残った。今回の演奏会録音は聞きたくない。練習の時のと入れ替えてもらえませんかね、おtonoさま!

その2:チューナーのピッチが!

 翌日はOBKVの演奏会であった。演奏会では我が家のポジティーフ・オルガンを使う。経費節約のため調律はボクがやることになっていた。前回帰ったときに確認すると、音程が低かった。練習時には時間がないためそのまま使い、練習終了後に調律することにしていた。
 さて、練習が終わり他のメンバーはゆっくり食事をとっていたが、ボクはステージに上がって調律だ。案の定、6ヘルツほど低い。ボクは恐る恐る調律を始めた。チェンバロの調律はすでにそれなりにお手の物であるが、オルガンはまだ万一を考えると心配である。なぜか、一杯まで高くしないと合わないが何とか1時間ほど掛けて調律を終えた。なかなか良い具合である。
 しかし、ここで一抹の不安がよぎった。440Hzに合わせているのに、なぜここまで高くしないといけないのだろうか。午前中の練習で誰も低いといわなかったがどうしてだろう、プロでピッチにはうるさいはずなのに。念のためと思って使っていたチューナーを確認した。すると何てことだ、ピッチが445Hzになっていた。開場まであと30分、開演まで後1時間である。すーっと血の気が引いていくのを感じた。顔は真っ青、頭の中は真っ白、とはこのことだと思った。
 そんなことを実感している暇のないボクは、直ちにすべての本当は手でさわってはいけないパイプのふたを、素手で引き抜いた。ご存じのことと思うが、パイプオルガンではパイプを長くすると音が低くなる、また、ふたを押し込む(パイプを短くする)方が作業がしやすいのである。奮闘すること40分、ようやく一応440Hzでの調律を終えた。すでに開場され聴衆の何人かは入場していた。ボクが楽屋に帰るとすでにステージ衣装に着替えたメンバーは発声練習に余念がなかった。ボクが慌てて片隅で着替えをすませると、すでにステージの袖に移動を始めていた。
 ボクはその演奏会の間中、オルガンの調律が心配で仕方なかった。ピッチは大丈夫か、素手でさわった影響は出なかったか。結局、そこそこ調律はうまくいっていたようで、誰にも指摘されることなく無事に演奏会を終えた。

 余談だが、チェンバロの時もはじめは調律が怖かったが、事前に弦が切れたことから否応なく弦の交換と調律する羽目になり、以降はメンテナンスすることに不安が無くなった。これでオルガンについても、かなりのことは出来るようになることだろう。


2004/11/29 20:23