SUPERIOR ROCK ALBUM DEPARTMENT
FOREIGN SUPERIOR ROCK ALBUM SECTION


The Professionals / I Didn't See It Coming
プロフェッショナルズ / 炸裂

東芝EMI  VJCP-68059

Pantetsu    

                              
I Didn't See It Coming「ぶん殴る」とか「ぶん殴られる」とか、日常の会話の中でも耳にする台詞であるのだが、いったいどれ位の人が実際に”殴ったり””殴られたり”って行為を経験した事があるのだろうか?ましてや男の勲章の様に暴力行為を自慢する馬鹿も多いが、本当に拳で人間の顔面を殴った経験のあるバカは少ないのではないだろうか。基本的に普通の生活を送っている限り、犯罪に巻き込まれでもしなければ拳で顔面を殴られる事は無いだろう。そうだ、だいたいボクシングや格闘技の試合でもなければ顔面を拳で殴れば犯罪なのである。

ある種の特別な人間関係が無い限り暴力を目の当たりする事は無い。実際、俺自身は拳で人間を殴った事も無いし殴られた事も無く、いたって平和な範囲で暮らしてきたのだが、二十年程前に妻と下北沢で飲んだ帰り道、本多劇場の前でドラマのような光景を目撃した。

夜も9時くらいだったろうか、飲食店の並ぶ本多劇場前の通りをプラプラ歩いていると路地から車が出てきて通りに急停車した。この時、私からの距離は15mくらいだ。その車の助手席からパンチパーマの男が金属バットを持って降り、近くを歩いていた外国人(若い白人男性)に向かって金属バットを振りかざした。あまりに唐突な状況に、誇張表現ではなく生まれて初めて時間が止まったような感覚に襲われた。15m先の光景だけにフォーカスが当たってスローモーションで映し出され、周りの通行人は全て動きが止まっていた。いや、確かに止まっていた。

振り回された金属バットは白人男性の背中や腰などに3発入り、よろけ逃げ電信柱に倒れこんだ時、パンチパーマは完全な殺意を持ったように頭をめがけて金属バットを上から振り下ろした。一瞬俺は「殺人現場を目撃してしまう」と感じたが、振り下ろされた金属バットは電信柱を直撃し、パンチパーマの手から離れた。パンチパーマはバットを拾い車に戻った。白人男性はヘロヘロと起き上がり車の後部にしがみ付いた。車は急発進し白人男性は振り下ろされた瞬間、5mほど先で止まった車のバックランプが点灯した。「が〜・・・バックしてひかれる〜」と思ったが、恐怖の予想に反して車は前方に走り出した。何が起こったのか・・・ほんの1分くらいの出来事だが、俺達以外の通行人もあっけに取られ呆然と立ちすくみ、何故だか俺の頭の中では"Professionals"がBGMとして鳴っていた。その後、もう一軒飲みなおして帰宅途中、しつこく女の子をナンパしている外国人を見かけた。金属バットで殴られていた野朗だった。

まーそんな事はどーでも良い。

まだ"Professionals"の唯一のアルバムである"I Didn't See It Coming"ががCD化される前、何としてもCDで聴きたくて新宿の西口辺りを探し回った。輸入版か海賊盤でも有るだろうと思ったのだが、店員は皆同じように「あっコレね、コレ無いんですよ」と拳を自分の顔に押し付けながら言った。

"Sex Pistols"解散後、正直言って"ジョン・ロットン"は期待通りの方向を示したが、Sex Pistolsファンを喜ばせるような音を出してくれた訳ではない。まーそれは当然の事であるがSex Pistolsの"Never Mind the Bollocks"は純粋に音楽として素晴らしい出来のアルバムであるため「ロックは死んだ」と言われても「はい、そうですか」と簡単に納得は出来なかったので”その音”を追い求めてしまうのは当然である。

"Never Mind the Bollocks"は音として非常に作りこまれた傑作であり、その音の「核」となっているのが"Steve Jones"のギターと"Paul Cook"のドラムスのスピード感だ。その二人が作った"Professionals"の唯一のアルバムである"I Didn't See It Coming"は"Sex Pistols"の延長線では無いにしろ、せっかくの"Paul Cook"の押し込むようなドラムが極めて貧弱な録音で悲しいにしろ、"Steve Jones"のギターが折り重なるように畳み掛ける事が無いにしろ、ヘナチョコなリバーブが掛かったヴォーカルにしろ、文句を言ったらきりが無いが、数少ない"Sex Pistols的"な音を聴く事が出来る貴重なアルバムだ。とにかく興奮はする。




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