SUPERIOR ROCK ALBUM DEPARTMENT
JAPANESE SUPERIOR ROCK ALBUM SECTION



恋すれど廃盤

「多様化なんて嘘だね」 
            松田裕之

いつの頃からか歌謡曲というジャンルは急速に勢いを失っていった。それは多分バブルの時代に金にモノをいわせた浮かれ日本人が「多様化だ!個性の時代だ!」等と煽り、騙くらかされて踊り狂い「私って人と違うしぃ」なんて能書きを垂れていた時代と一致するのである。

マーケティングと情報化(データーベース化)の発達は、茶の間に若い女の子が居ることを発見し新たな顧客層を開拓したのだけれど、熱狂やブームを視聴率だの販売数だのに置き換え、TVは未知の物を見られるという立場を追いやられ、あらかじめ知っていることの確認に使われる道具にされてしまった。大衆は合意点を確認した上で多数に属する方向へ進み、安直に数値化されたマイノリティをカテゴライズすることで安心を得ようとするからね。だいたいの人は。だけど多数派に属した彼らにとても「多様化」という呪縛はつきまとう訳だ。そりゃそうだよな。彼らがもっとも忌み嫌う「没個性」と安息の地は相反する物だから。

ところがどっこい。売り手の方はちゃーんと上手いことカラクリを考えてたんですな。そりゃあもう最新のマーケティングですから当然です。1つのジャンルで売れる物が集中してしまうのであればジャンルをいっぱい作ってしまえばいいんだ!至極当然の結論です。このカラクリは見事に的中しました。消費者側も多ジャンル≒多様化と勘違いして、何だか自分がとっても個性的な奴だと思えるようになったから。

アナログからCDへ移行時期というタイミングもバッチリで、曖昧でごった煮だった歌謡曲というジャンルの解体は始まった。流行歌だなどと訳の分からないカテゴライズが許されるはずもなく、歌謡曲を細分化することが多ジャンル化への近道なのは誰の目にも明らかだったからね。そして歌謡曲は死んだのである。そしてロックも今その危機に晒されているのかも。

「恋すれど廃盤」シリーズはCDで聴かれるべきでは無いのかも知れない。少なくとも現在の進んだオーディオ環境で聴くのは興醒めだ。出来れば一度カセットテープに録音して、音の悪いラジカセで聴くことをお勧めする。田舎道をドライブしていて、CDなんて勿論積んでいない年代物のサニーのちゃちなカーステレオから「白い色は恋人の色」が流れてきた時は泣けたよ。マジで。


VA「恋すれど廃盤ベストコレクション 12枚組」 コロムビア・ファミリー・クラブ
12枚組192曲。懐かしいけど新しい歌達ばかり。ドーナツ版で聴いた名曲の数々が詰め込まれた宝石箱は歌謡曲ファン必携。



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