SUPERIOR ROCK ALBUM DEPARTMENT
JAPANESE SUPERIOR ROCK ALBUM SECTION
KENZI&THE TRIPS「青春BABY」 SHINGO
HARDNA POP CD-7
“青春”という言葉を広辞苑で引いてみると「年の若い時代。人生の春にたとえられる時期。」とある。 人生の春であったかどうかは別として、私が“年の若い時代”に聴いていた愛すべき楽曲たちが“青春BABY”というちょっと恥ずかしげなタイトルとともに現代にあらわれた。
近年の“○○トリビュート”と銘打たれたモノのリリースラッシュには閉口していた。本来“○○トリビュート”とは、惜しまれつつこの世を去ったアーティストであるとか、解散してしまいもうプレイを聴く事のできないバンドたちを畏敬の念をこめて取り上げるものではないかと思うのだが、現在出ているモノの多くは今では名の売れたミュージシャン達がよってたかって「ア、キミモコノバンドスキナノ?ジャアイッショニカラオケキブンデアルバムツクッチャオーヨ!」的なノリを、右肩下がりのセールス不振に喘ぐ業界が「ミンナオカネモナイシ、アタラシイモノヲサガシダスヒマモキリョクモナイミタイダカラコンナノダシタラゼッタイウレルッテ!」的な戦略で利用している構図をビンビンと感じてしまい、食指が動かないのである(だって現役バリバリのミュージシャンのもおかまいなしにバンバン出ちゃってるんですもん・・・)。
しかし私はこの一枚にだけは惹かれてしまった。
このアルバムはKENZI一人が色々なミュージシャンの曲を歌ったカバー集であり、そもそもトリビュート盤とは違うものなのだが、このような風潮の中でリリースされた事で先に述べた作品達と一見同種であるように見える。
また他のモノの多くが演者の解釈による大胆なアレンジが加えられていたりするのに対して、ほぼ原曲そのままのアレンジで演奏されていることから、むしろ“カラオケキブン”度は高いように思える。
ではなぜ私は惹かれてしまったのだろう。選曲?いやいやそれなら他のトリビュート盤にもシブイ選曲はいくらでもある。自分がカラオケ気分でいっしょに口ずさめるから??その点は他のモノでも十分に満たす事はできる。トリビュート度の強さ???いやいや、それはおそらく他のモノのほうが強いだろう。ではなぜなのだろうか。おそらく私が惹かれてしまった一番の理由はKENZIの“歌”なのだろう。ダダをこねるいたずらっ子のような独特の“あの”声。原曲に忠実にプレイされる演奏とは対照的に、原曲とはまったく違う曲のように歌ってしまう巻き舌まじりの“あの”歌い方。このKENZIの“歌”を通して聴く“年の若い時代”に聴きこんだ名曲の数々というところが、先に挙げた他の要素ともあいまって心に響いたのだろう。
なんにせよ“青春時代”の様々な事を鮮明に想いださせてくれる、80年代の日本のロックを代表するバンド達の、宝石のような16曲。今聴いてもまったく色褪せていない楽曲のクオリティの高さに改めて驚かされる、ウレシイ一枚だ。
「いっしょじゃねーか!こいつもカラオケ気分で自分の好きな歌を好き勝手に歌ってるだけだよ!」というヒトもたくさんいるだろうが、そう思うならそれでいい。どう思われようが、30代のROCK好きには一度は聴いて欲しいと思う一枚である。KENZIが豪快に歌う16の宝石は以下の通り。
1.LET'S ROCK(THE ROOSTERS)
2.人にやさしく(THE BLUE HEARTS)
3.トランジスタ・ラジオ(RC SUCCESSION)
4.GERONIMO(GASTUNK)
5.Blow The Night(THE STREET SLIDERS)
6.INSTANT LOVE(BOOWY)
7.ゴキゲンRADIO(THE MODS)
8.ピンナップ・ベイビー・ブルース(SHEENA&THE ROKKETS)
9.あの娘にひとめぼれ(THE STAR CLUB)
10.のら猫(子供ばんど)
11.ダディーズ・シューズ(ARB)
12.ロマンチスト(THE STALIN)
13.THE UNKNOWN SOLDIER(THE STAR CLUB)
14.Tokyo Cityは風だらけ(ARB)
15.団地のオバサン(アナーキー)
16.GET THE GLORY(LAUGHIN'NOSE)
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