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バッドカンパニー 

「これぞ男のロック」
   Pantetsu

 「貴方の一番好きなドラマーは?」と問われた時、かれこれ25年以上に渡って「サイモンカーク」と私は答えている。とにかくスネアドラムのフラムにしてもタムの落とし方にしても絶妙なバランスで曲を締めるのである。人類最古の楽器であろう打楽器は、その原始的な「叩く」と言う行為であるからこそ人間のもつ「間」や「呼吸」が重要であり、その「間」や「呼吸」がリズムとなり聴き手に伝わるのである。中にはポリスのスチュワートコーポランドの様に絶対的な自己の音を持つ人、キースムーンの様に楽曲を無視して暴走する人、嵐の様に叩きまくり存在を主張するサイモンフィリップス・・等、強力に個性的なドラマーも数々居るが、得てしてドラマーはバンドの最後部で音を支える地味な存在である事が多い。しかし、その地味な存在の「呼吸」がバンドの音の「生」を作り出し、導き出しているのだ。そんなサイモンカークの呼吸が私には生理的に合うらしい。

その サイモンカークが在籍したバンドが「バッドカンパニー」だ。

前身は、伝説的泣きのギタリスト「ポールコゾフ」でも有名なブルースロックの大御所「フリー」である。その「フリー」後にVoのポールロジャースとDrのサイモンカークが結成したのが「バッドカンパニー」だ。基本的に「フリー」の延長線上に位置するような音楽だが、所構わず泣きまくるポールコゾフに変わって、地味ながらも日高昆布のような味わいのミックラルフスがギターに加わる事によって音楽的に巾を持ち、よりロック色が増した型と成っている。ミックラルフスはグラムロックの帝王イアンハンター率いる「モット・ザ・フープル」から、ベースのボズバレルは「キング・クリムゾン」からの参加である。しかし、両者の前歴から継続されるような音の印象は全く無く、不変的に完成されたポールロジャースの歌を最大限に引き出すスタイルに徹している。これは正真正銘「男」を感じさせるロックバンドだ。

バンドはレッド・ツエッペリンのレーベル「スワン・ソング」の第一弾として、1974に1stアルバム「BAD COMPANY 」でデビューを飾る。このアルバムの1曲目「キャント・ゲット・イナフ」はロックの基本的名曲の一つだ。この冒頭から前記した「間」と「呼吸」を感じる事ができる。カウントを数える声から始まり、バスドラとスネアのフラムを合図に音が鳴るのだが、この音が鳴るまでの僅かな「間」は、一口目のビールが喉を通った瞬間の様に鮮烈な喜びを感じさせてくれる。私は毎度この「間」で唸ってしまう。

僅か十日で録音された1st「BAD COMPANY 」には、そんな呼吸だけで作られた物言わぬ信頼感を十分味わう事が出来る傑作である。

そして2ndの「Straight Shooter」もサイモンカークの絶妙な呼吸によるタム落としから始まる。私にとって、この「Straight Shooter」はロックの教則盤と言うかバイブルであり、全編通して楽曲の素晴らしさは他のアルバムを寄せ付けないほどに完成されており、神の声の様に説得力を持つヴォーカル、呼吸を感じさせるリズム、控えめながらも正確に「間」を埋めるベース、そして狂おしいくらいに中途半端なミックラルフスのチョーキング!どれを取ってもロックの正しい姿であり「男」を感じるプレイなのである。しかし、ポール・ロジャースの歌声って腹に来るよ。

Bad Company 「BAD COMPANY」 Bad Company 
「BAD COMPANY」
AMCY-3045
ロックの定番的名曲「キャント・ゲット・イナフ」を含む記念すべきデビューアルバム。
グラム、プログレ全盛期に送り出された正統派ロックの象徴とはこのアルバムのことだ。
Bad Company 「Straight Shooter」 Bad Company 
「Straight Shooter」
AMCY-59
間違いなくバッド・カンパニーの最高傑作は「Straight Shooter」だ!ロックたるべき重要な要素が凝縮された本作こそ、男の呼吸を真っ向から感じる事が出来る硬派な名盤だ!腹に響くポール・ロジャースの歌声は、雲をも掴む神の領域に限りなく近づき、ロックヴォーカルの真髄を余す事無く表現している。奇をてらう事無きロックの名盤。




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