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Bob Marley / ボブ・マーリィ

「不思議なタフゴング体験」
                Pantetsu


使命感と言うか努力と言うか、何に惹かれるのか自分でも理解できない。

私が十代の前半くらいの頃、74年位か?レゲエなる活字と独特のヘアースタイルをしたボブマーリィの写真を目にする機会が多くなり、レスポールのスイッチ部分が妙に大きく不思議と情熱的に見えた写真は何故だか頭に染み付いたが、ロックに目覚めたばかりの少年にはどう見てもボブマーリィはロックスターには見えず、その音楽に対する興味は全く起こらなかったのである。

ビートルズの「オブラディ・オブラダ」はレゲエのリズムと書かれていた。益々何だか解らなかった。そして私の人脈の中にはレゲエなる音楽の音源を持ち合わせている友達は一人も居なかったし、私もレコードを買うほどの興味は無かったのだが、何かが気になったままだ。その後に取り合えずアルバムを一枚聴く機会が有ったが、思春期のロック小憎には強力につまらない代物て゜歪んだギターも8ビートも無く退屈な演奏とリズムがひたすら続くだけで、かなりショックだった。

そして後にパンクロックの中にレゲエなる言葉を発見する事になり、今度は期待を込めて違うアルバムを聴いてみるが又もや「チキショー同じじゃねーか!」「ダメだダメだ!こんなのロックじゃねー」当然だ、ロックでは無いのだ。私はひたすら勘違いを続けていた。

その後もワールドミュージックのブームだとか、レゲエブームだとか、クローズアップされるごとに何故だかCDを買い足していた。その頃にはボブマーリィ以外のレゲエに対して「ダメだダメだ、こんなのレゲエじゃねー」と感じつつも「ダメだダメだ!こんなのロックじゃねー」の勘違いも続いており、それなのにボブマーリィにロックを求め続けていたのである。全く意味は無い。しかし、何故かボブマーリィを好きになる努力をしていた。

悲しい事にレゲエ志向をオシャレの代名詞にするかの様な馬鹿げた時代や、日本製のレゲエ君達の登場によって、益々私の中でボブマーリィ・ロック化計画は進行し、「俺のボブマーリィはそんな浅はかなファッションでは無い」と信じつつCDを買いつづけるが、何度聴いても「ダメだダメだ、こんなのロックじゃねー」と体が受け付けないのである。何故、無理してまでも聴こうとするのか自分でも理解できなかった。始めにレゲエなる言葉を知ってから10年以上の長期戦だった。当然ボブマーリィ以外にレゲエCDを買う事も無かったし、当時ここまで買い足してきたボブマーリィのCDは、買った日以来2回と聴く事も無く棚に並べられた。

しかし、ある日何かが突然起こった。何が起こったのか解らなかったが、私には一切の霊感も無く、何一つ不思議な体験をした事は無い。超能力だって当然無い。そして、この日を境にして精神世界なんて事にも興味をもつ事になる。

特別な用事も無く、特別聴きたいCDも無く・・・ただ何となく「レジェンド」をプレイヤーに入れ、仰向けになって天井を眺めていた。窓から入る日差しと、何故だかこの日はレゲエのリズムが心地よく、しばらくボーっとしていた。二曲目の「NO WOMAN NO CRY 」のギターソロを聴きながら「何だか随分と素晴らしいギターだなー」と妙に感心しながら「THREE LITTLE BIRDS 」では声が脳に響いてくる様な感覚に襲われた。それはまるでアンプのアウトプットからピンジャックを直接頭の左右に差し込まれたように、一切の空気の振動を感じさせない直接的な音だった。そして音は体中に血が巡るように充満し、まるで全身が音でコーティングされ、私は言い知れぬ多幸感を「ONE LOVE 」によって与えられ、「REDEMPTION SONG 」の苦しみに涙が流れてしまったのである。チョットやソットの涙の量じゃなかった。「CD聴きながら泣く事なんて有る訳ねーだろ」と自分に言い聞かせながらも、自分の体に何が起こったのか解らなかった。解った事はボブ・マーリィは間違いなくPUNKだって事だ。そしてモーレツに好きになったのだ。

原爆以上の不幸を経験した事が無い島国の人間には絶対的に理解できない思想であるし、理解してはいけない、認識する事だけが重要なのかも。怒りと苦しみ悲しみ、そして愛と血を伝える手段として、又その苦境から逃れる為の喜びの表現として、もしくは政治的宗教的プロバガンダなのかもしれない・・そんな事はどーでも良いが、ファッションじゃ無い事だけは間違いない。

昨今、民族音楽を勘違いしながら場違いに利用するのが多くの日本人の常だが、黒人音楽に対する無理解な嗜好の充満にも呆れて言葉も無い。私の身近にも下手なギター好きオヤジなんかが、偉そうに言うんだよ「ロック?・・・30歳過ぎたらブルースでしよー」・・バカか?ブルースっーのはテメーみたいなヘボなギターオヤジの姥捨て山的なジャンルじゃねーんだよ。「ヤッパ夏はレゲエだよねー」とか必ず言うヤツいるし、女子高生も群がるR&Bブームとか・・・生粋の黒人音楽愛好者には申し訳ないが、こんなヤツが多いのは事実でしょ?

そして私はカリブに旅立ったのだが、バスの中は会話不可能な大音量で「LEGEND 」が鳴り(普通の交通手段としてのバス)町の小さなCDショップではボブマーリーが店内の40%を占め。レゲエのコーナーはボブマーリーの他は3タイトルくらいで、他のものはキチンと「その他のレゲエ」なんてコーナーが設置されており、何故だか私は腕組しながら勝ち誇ったように頷いた。

Bob Marley & The Wailers 「LEGEND」 Bob Marley & The Wailers「LEGEND」
PHCR-94020
血を感じる数少ないミュージシャンの一人である神様ボブマーリィのベスト盤。ベスト盤と言えども巷に溢れる無意味なベスト盤とは格が違うと言うか受け入れられ方が基本的に違うと言うか、同タイトルは様々あれども世界中でレジェンドと言えば、このアルバムの事だ!(と俺は感じている)編集盤なんて嫌いな人は「トーキン・ブルース」からでも!



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