私がQUEENと出会ったのは、小6から中1のころだった。小さいころからどこかひねくれていた私は、みんなが良いと思うもの(流行とも言う)に流されるのがいやで、anti○○の精神ですごしていた。だから、QUEENとの出会いも、単純にantiベイシティーローラーズのほかならなかった。ただ、一応あのタータンチェック族に対抗するのであるから、曲が良いかどうかだけは調べておこうと思い、兄の部屋に潜入して、QUEENの入っているテープをすべて聴いてみた。と言っても、当時は"KEEP
YOURSELF ALIVE"と"KILLER QUEEN"そして"BOHEMIAN RHAPSODY"くらいしか知られていなかったから、たいして時間もかからなかったのだが・・・。
"KILLER QUEEN"をまず聴いて、気に入った。ボーカルの声、歌がうまいグループだと思った。そして、なんともいえないギターの音色・・・今までに聞いたこともないような音色だった。BEATLESのジョージ・ハリソンなんか、とはまったく比べようがない、独特なあの音色の虜になった。次に"KEEP YOURSELF ALIVE"を聴いた。何だ〜?津軽三味線のようなこの入り方は???流暢な調べの"KILLER QUEEN"とは違いアップテンポで軽快なこの曲、とても一緒には歌えそうもない・・・だけど、コーラスがまたいい!この2曲を聴いただけで、充分だった。『ベイシティに勝てる!!』 そう確信した。
"BOHEMIAN RHAPSODY"や"YOU'RE MY BEST FRIEND"がヒットして、日本でも少しずつQUEENの知名度が上がってきた。『おかまの集団』とからかわれ、『白黒タイツ』が話題になった。友達から、『オペラ座の夜』と『華麗なるレース』のテープを借りて聴いた。おそらく、当時QUEENの代表作といわれる2枚のアルバムであろう。
いままで、シングルとしてしか聴いたことがなかったので、アルバムを通して聴いてみて、又も感動した。はじめの1曲から終わりまで、ひとつの物語になっているような、そんな感じ。聴き始めたら、途中できりたくない。最後の曲が終わるまで、ラジカセの前でうっとりしていた。そんな私が、うまれて始めて買ったレコードは、「戦慄の王女」だった。ラジカセではなく、ステレオで聴いたときにまた、新たな感動があった。あ〜絶対にQUEENはステレオで、しかもボリュームをなるべく大きくして聴くべきだ!近所迷惑と言われそうなら、ヘッドホンの使用をお勧めする!右から左から、折り重なるようにして流れてくるサウンド、ラジカセでは聞き取れなかった複雑な音の絡みがたまらない。聴けば聴くほど味が出てくる。決して飽きることはない。深いサウンドだ。このアルバムで好きな曲は"LIAR"そして"THE
NIGHT COMES DOWN"・・・優しく切ない声、はげしくかっこいいだけのフレディーではないのだ。あ、でも"GREAT
KING RAT"も結構好きだな。起承転結があるんだよね。(ちなみに、歌詞はあまり考慮していません、あしからず)
次に買ったのは、「SHEER HEART ATTACK」。単に曲数が一番多かったから選んだこのアルバムが、一番好きなアルバムとなった。QUEENサウンドとしてかなり完成されたものがある。でも、まだ完璧ではない。その微妙な不完全さがたまらなく好き。"BRIGHTON ROCK"・・・でだしが面白いな〜と思って聞いていたら、甲高い声で歌が始まり・・・CHORUS部分のすてきなこと!5分もあるこの曲のほんの20秒ほどのフレーズが好きで聴き込んでいた。それこそ、ヘッドホンで聴くとわかる、いろいろ凝った演出のある曲。"LILY OF THE VALLEY"や"DEAR FRIENDS""MISFIRE"など、短くて可愛い感じの素敵な曲もあって、とにかく面白い。ただ、心臓の弱い方は"IN THE LAP OF THE GOD"のでだしに気をつけたほうがいい。あの、おたけびは、何回聞いてもドキッとする。
1枚目、3枚目、ときたら、次は2枚目だろう。QUEENUを買うことにした。"WHITE QUEEN"と"BLACK QUEEN" ・・・静と動、明と暗、初めのうちはBLACKのほうが好きだった。"OGRE BATTLE"で始まってから、ずっと息がつけない。どの曲も好きで、いっきに"THE SEVEN SEAS OF RHYE"まで聴いてしまうのが心地よかった。"NEVERMORE" この曲は涙が出るほど好き。ピアノから入る曲はたいてい好きなのだが、この曲はまた格別に好きだね。私の最後のときには、ぜひこの曲をかけてもらいたい、と思うほど!ところで、WHITEのほうはどうかといえば、歳をとって改めて聴いてみると、しっとり落ち着いたいい曲があるではないか!中学生のころより、大学生のころに聴いた時の方が、いいナと感じられた。♪Joyful the sound,the word goes around From father to son ,to son…♪このフレーズだけ、一緒に歌って満足してた。
QUEENは日本が大好きで、よく来日してくれた。コンサートもかなりよくやってくれたように思う。田舎モノの私は、チケットをどうしたら取れるのかわからずに、そのまま、彼らの公演を見ることなく過ごしてしまった。今になってすごく後悔している。もう、絶対にアノ勇姿を見ることはできないのだから・・・
『世界に捧ぐ』のアルバムを最後に、しばらくQUEENのアルバムを買わなくなった。6枚目のこのアルバムで、少しQUEENの音楽が変わってきたように思ったからだ。もちろん、このアルバムもいい曲はたくさんある。"ALL DEAD ALL DEAD"から"SPREAD YOUR WINGS"の流れ、"WHO NEEDS YOU"から"IT'S LATE"のあたりは、やはり私の好きなサウンドなのだが、何曲か、ちょっと好きじゃないな、と思う曲があったのだ。今までQUEENの曲はみんな好きだったから、好きじゃないと思う曲の存在に私自身戸惑った。『あばたもえくぼ』の状態で熱烈になっていた相手のちょっとわからない一面に出会って、さ〜っと熱がさめていくような、そんな心境。「BICYCLE RACE」がでた時に、もう決定的になった。
以後、QUEENのアルバムは「GREATEST HITS」が出るまで買わなかった。皮肉なもので、全米ナンバー1になった曲は、私の買わなかったアルバムから出た。シングルカットされたものは、どれも私の好きなQUEENだったのでうれしかった。別れた彼氏にもう一度思いを寄せ始めた、そんな心境。QUEENの音楽は進化している。その進化に気がつかず、ついていけなかった私だったのだ。
私はバンド小僧ではないので、詳しいことはよくわからないが、70年代から80年代そして90年代と音楽の手法が変わってきたよね。70年代は、自分達で演奏するのが当たり前で、だから、みんな、ギターやドラムを必死になって練習した。スタジオを借りたり、自室の雨戸を閉め切って外に音が漏れないようにしたりして、憧れのアーティストのまねをしたあの頃・・・ピアノを習っていた私もBEATLESの LET IT BE だけは弾けるようになりたくて、楽譜も見ずに耳で聞き取った音を頼りに弾いていた。
QUEENが現れて、その練習曲の対象はBOHEMIAN RHAPSODY や 先述した NEVERMORE に移っていった。バンドのコピーだと、コードで書いてあったりするので、よくわからない。ピアの用にアレンジした楽譜だと実際にない音が出てきたりして(ボーカルの旋律など)これもまた、いやだ。だから自分の耳で聞き取ったもので弾きたいのだが、BEATLESと違いQUEENの音は複雑で、素人の私が聞き取れるようなものじゃない。テープを何回も聴いて、巻き戻して、また聴いて、音を拾い、またテープを聴いて、確かめて・・・こんな要領の悪い、非生産的な時間を費やすことに燃えていた時期が確かにあった。少しでも弾けるようになったときの満足感が、たまらなかった。きっと、バンドをやっている人たちも、自分達の技術が向上して一つ一つ曲が出来上がっていくことがものすご〜くうれしかったんじゃないかな。
70年代後半から80年代初めは、ディスコブームだよね。何だってディスコ調にアレンジすれば売れちゃう時代。昔々のカビくさ〜いナンバーが見事にお色直しをして登場してたっけ。ディスコナンバーではないのにヒットした曲には敬意を払ったよ。
QUEENの曲って、ディスコにはならないよね。軽くないから。重厚なサウンドだから、もしもディスコ調にするとQUEENがQUEENでなくなってしまうだろうね。単調な、画一的な曲風が流行して、その後に来るものは・・・シンセサイザーなるものの普及!初めてシンセドラムを聴いたときのあの悲しい気持ちは忘れない。味も素っ気もない。あの時はじめて、ロジャーテイラーが偉大なるドラマーであることを認めた。QUEENの中で、ロジャーが一番好きじゃなかった私は、彼の実力をなかなか認めようとはしなかった。フレディーのボーカルはほかに類を見ないすばらしいもの。ブライアンのギターの音色はほかでは絶対に聞くことのできない、独特なもの。だけど、ドラムは、別にピータークリスだっていいじゃん!リンゴスターじゃちょっと困るけど・・・そんな風に思っていた。(ジョンディーコンのベースは?そこまでかんがえてません!ポールよりはうまいんじゃない?)とにかく、デジタル化が進み、なんでも機械で音を作り出してしまえるようになると、演奏がどんどん安っぽくなっていった。お手軽な時代になった。誰でも、ちょっと操作の仕方を覚えたら、一人でもバンドの音楽を創り上げてしまうことができるんだから。あの3人4人で集まって、汗だくになりながら作り上げていった音楽はなんだったんだろうか?
何年ほど前になるか・・・エリック・クラプトンのコンサートのチケットをたまたま手に入れて観にいく機会があった。生はいい!あの迫力、たまらないね。CDで何度も聴いた曲なのに、生演奏のあの感動は格別だね。QUEENは、一度もメンバーチェンジをしなかった。改めて聴いてみると、ロジャーのドラムとフレディーのボーカル、そしてブライアンのギター、絶妙なタイミングで絡んでくる。(おい!ディーコンを忘れるな!)やっぱりこの4人でなければならない必然性があったのだと思う。とにかくQUEENは、この4人で、時代と共に変化していく音楽のスタイルを受け入れながら進化していった。でも、どこかに必ず、昔と変わらない彼らの音楽があった。
90年代初めにしばらくぶりで、QUEENのアルバムを買った。「GREATEST HITS」である。よく聴いていた、懐かしいあの歌この歌から、始めて聴いた歌まで、17曲も入っている。よく考えてみれば、「オペラ座の夜」と「華麗なるレース」を持っていない私は、SOMEBODY
TO LOVE も YOU'RE MY BEST FRIEND も手元に持っていなかったのである。このアルバム、実はCDとLPの両方で持っているのだが、面白いことに、入っている曲が若干違う。LPバージョンのほうがすきなのだが、(UNDER
PRESSURE がはいっている)レコードプレーヤーがになかったため聴けなくて、新たにCDを買ったらなんと聴きたかったお目当ての曲が2曲も入ってなく、(TEO TORRIATTE と UNDER PRESSURE)その代わりに、BICYCLE
RACE と SEVEN SEAS OF RHYE が入っていたのだ。ま、CDの解説を読むと、7種類も違ったバージョンがあるらしい。そのうちの2種類を持っていると言うことになるのだろうか。まったく同じものを2つ持っているよりはいいかな。さすが、BEST! いつ聴いてもいい歌ばかり。心が癒される。
GREATEST HITS を買ってから、またQUEENに対する思いがよみがえってきた。そういえば、彼らは今、どうしているのだろう・・・そんな時、ふっと耳にしたニュース・・・フレディーがエイズ?!ありえない話ではない。妙に納得してしまう私が悲しい。それにしても、大丈夫なんだろうか?ほかのみんなにはうつってないだろうか?余計な心配までしてしまった。早かったのは、それから1週間もしないうちに彼の昇天のニュースを聞いたこと・・・INNUENDを買ったばかりで、久々昔のQUEENを聞いているようでうれしかったのに、もうあの美しいボーカルも、QUEENならではのコーラスも聴けないのかと思ったら、すごく悲しかった。まだまだ新しい曲をこの世に贈り続けてほしかった。石原裕次郎を失うことよりはるかに大きい損失だと思った。彼はまさしくアーティスト(芸術家)であった。このINNUENDOに彼の生きてきたすべてが、心の叫びが、詰まっている。いわゆる遺作である。私は、遺作の1つ前のアルバム、THE MIRACLEも買って聴いてみた。INNUENDOに比べると、ちょっと抵抗感がある。おそらく目がいっぱいのパッケージのせいだと思う。気色悪〜。このイメージと、THE INVISIBLE MAN の曲のイメージがどこかつながってしまい、目がどんどん細胞分裂して増殖して、私達を脅威にさらしていく〜怖いイメージ。
だけど、そんな私を開放してくれるフレーズもあった。♪That time will come
one day you'll see when we can all be friends♪そう、THE MIRACLE の最後の部分・・・混乱している中から、初めはかなり遠くのほうから、聞こえてくる天使のささやきのようなこのフレーズ。いろいろやってきた彼らが最後にたどり着いたメッセージのようにも聞こえた。I WANT IT ALL・・・力強いうた中にも、とても繊細で美しいフレーズが流れて、、、また力強いコーラスで終わっていくフレディーってそんな奴なんだろうな。強さと繊細さの両方を持っていた彼の音楽。それはまさに彼自身。そんな気がした。この2枚のアルバムに関しては、私も今までとは、聴き方が違っていた。こじつけなくてもいいのだが、つい、フレディーの人生と結び付けてしまう。必死に、彼からの最後のメッセージを受け取ろうとしていた。
INNUENDO : 暗示、と取るべきか、風刺、ととるべきか
先ほども書いたが、このアルバムは、妙に懐かしい思いでいっぱいになる。HEADLONG、DON'T
TRY SO HARD、ALL GOD'S PEOPLE 、I CAN'T LIVE WITH YOU などなど、昔確かに聞いたぞ、これぞまさしくQUEENのメロディーだ。でも、私が好きなのは、静かに、消えていくように歌ってるTHESE
ARE THE DAYS OF OUR LIVES・・・過去を振り返っている歌なんだよね。前に前に攻めていくフレディが過去を振り返っているんだよ。残りの人生があとわずかであることを知っていたからこの歌ができたんだと思うと、なんか、たまんない・・・大事に受けとめたい曲だ。DELILAH・・・最後まで彼のそばにいて、彼を慰め励ましたのは、DELILAH(猫)だったのかもしれない。この歌もすき、可愛いから!でも、それでもTHE
SHOWMUST GO ONにこめられた、死を打ち負かそうとする最後の最後の強い気持ち、プロ魂には圧倒されるものがある。QUEENは永遠に不滅である。フレディー万歳!そう叫ばずにはいられない。フレディーの替わりは誰にもできない。だから、彼がいなくなってしまったことで、QUEENの歴史も終わってしまった。残念だけれど・・・でも、一番多感な時期に出会えて、同じ時を過ごす事ができて、本当によかった。ありがとう。