ROCK ARTISTS BIOGRAPHICAL DEPARTMENT
JAPANESE ROCK ARTISTS SECTION



タコ

「人質ファンク」
  松田裕之

テレビしかない部屋に閉じこもる。ブラウン管を通してのみ外界を知ることが出来る。食事は必要最小限に留め、睡眠は妨げられ、部屋の壁の色は白一色。もちろん窓は無い。完璧な防音処理を施されたその部屋で、ただひたすらに俺はテレビだけを見続けている。突然、頭上右上からテレビとは別の声が聞こえる。

「殺せ!道行く者を皆殺しにするのだ!」。命令口調なその声は自分の気持ちとは裏腹に抗しがたく、俺は鈍ったカラダでノロノロと刃物を探し出す。ありもしないのに。魔境?素っ裸で何もない部屋をのたうち回りながら、残った理性がそう教えてくれる。疲弊しきった心身はようやく平静さを取り戻したが、今度はブラウン管の中の出来事が拡大再生産され、現実となって津波のように押し寄せてくる。

「あなたを愛してます」とアイドルが言うてる・・・あははははははは・・・わざとらしく挿入された笑い声のサンプリングが頭を離れない・・・「死ね!死ね!死ね!」ああぁぁぁ、やっぱりそうなのかあぁぁぁ・・・・非現実な現実の洪水に飲み込まれた瞬間に目が覚めた。薄暗い部屋のステレオからはタコの「人質ファンク」が流れていた。嘘のような白昼夢。

タコは知識だけにしがみつく腐れインテリに支持された。暴力的ならパンクと思いこんでるアホどもにも。だから山崎春美は素晴らしい。ゲスト陣の顔ぶれを眺めるだけで充分満足の「タコ大全」は必聴というか必携の1枚。

タコ「タコ大全」 タコ 「タコ大全」 lDNーSSE SSEー8022CD
参加メンバーに町田町蔵、坂本龍一、EP−4等々。ジャケットが花輪和一。
な・い・し・ょのエンペラーマジックでの回収騒ぎなど話題の方が先行しがちだが、内容も素晴らしい。
80年代日本のインディ・パンクを語るには欠かせない1枚。


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