ROCK ARTISTS BIOGRAPHICAL DEPARTMENT
JAPANESE ROCK ARTISTS SECTION



ルースターズ

「再現出来無いジグソーパズル」
  松田裕之

殺人事件なんかが起こると犯人の知り合いが出てきて「あんないい人があんなことを起こすなんて・・・」てなことを言ったりする。人なんて相手によってパーソナリティを都合良く変えてるんだから、そういう評価が出てしまうのは妥当である。

短絡的な思考は決定力を生んで生産的だけど、時には差別的な弊害を生む。犯罪者が出た家に石を投げるようなことを平然と行うのだ。個を見て全体を評価するのは愚かである。集団あるいはジャンルと個の評価はまったく別物であるという簡単な理屈も分からないのか?

ルースターズてのは不思議なバンドだ。ピースはたくさんあるのにいつも肝心なピースが1枚足らなくていつまでも完成しないパズル。たいていのバンドは強烈な個性の中心人物がいて、その人がいれば何とかってバンドと呼ばれるのが普通だ。ばちかぶりに田口トモロヲが居なけりゃおかしいし、財津和夫が居ないチューリップなんてあり得ない。オリジナルメンバーとして唯一彼らが残ったことになったが、バンド名がそのままのことに異論を挟む奴は居ないだろう。ところがルースターズときたら、象徴とも言うべきボーカルの大江慎也が途中で脱退してしまうのだがそのまま存続し続けた。花田が居るじゃん!という向きもあるが、通して象徴的であった訳ではない。ルースターズの評価をする時、時代毎に分けて評価するのが妥当なのかも知れない。大江嫌いだからルースターズ嫌いてのはかなり大雑把な評価であろう。

ルースターズの歴史の中でエポックメイキングとなるのは何と言っても下山淳の加入だろう。彼はバンドの音をまとめるのがずば抜けて上手い。彼が居なければ大江脱退後ルースターズが存続したか疑問である。大江・花田・下山が揃ったアルバム「DIS」は傑作と言える。ルースターズというパズルが一瞬だけ完成を見た瞬間。大江脱退後では「FOUR PIECIES」。大江嫌いの人も聴いて欲しい1枚。

ルースターズ DIS ルースターズ「DIS」 COCA 12576 日本コロムビア
大江在籍時では「φ」と並ぶ傑作。下山加入によってサウンドに深みが増している。言いようのない緊張感があるアルバム。
ルースターズ FOUR PIECIES ルースターズ「FOUR PIECIES」 COCA 12141 日本コロムビア
最期のオリジナルアルバムとなった本作は、下山淳の楽曲が多いのが特徴。後期ルースターズをサウンド面で支えたのは間違いなく彼。これ以降のルースターズも聴いてみたかったというのは無い物ねだりか?



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