ROCK ARTISTS BIOGRAPHICAL DEPARTMENT
JAPANESE ROCK ARTISTS SECTION



阿部薫

「最高のジャズの美の保証」
  松田裕之

「大粒の梅干しのことを考えるな。小粒ならいい」と叫ぶとき、あなたはすでに大粒の梅干しのことを考えている。周りの者は梅干しが大粒か小粒かを気にし出す。厳密な境目などもともとないのに。

伝説とういうのは実にやっかいな代物だ。講釈師見てきたような嘘を言いではないが、人は伝説を語るとき誇張し美化する。具体的な事実に結びつけられて口承されてきたものは、やがて歴史化・合理化される傾向をもつ。その結果、事実がどうであろうと伝説の方が一般的事実となる場合がある。二度とお目にかかれない梅干しは想像の中で肥大化するのである。それが自殺まがいのゲロを詰まらせての窒息なんていう無様な死に方であろうと。

阿部薫は伝説である。ジャズ・ミュージシャンであるが、その生き様は60年代から70年代に命を落としたロック・スター達と酷似している。狂気に近い超絶的な演奏と引き替えの暴力・セックス・ドラッグ・・・。

人間の快楽はより死に近い側に存在する。そして美への鋭利な感覚も。彼がなぜ自己破壊的に限りなく死に近づき、生の最高の場所ギリギリに居続けなければならなかったのか?答えは見えているのだが、俺にはそれは伝説でしかない。結局、彼はラインを超えてしまったのだから。

阿部薫「彗星パルティータ」 阿部薫 「彗星パルティータ」 VSCD3050 Vivid
阿部薫の音源としては珍しい2枚組のスタジオ盤。とは言え鬼気迫る演奏に変わりはない。日本フリージャズ史上に残る歴史的名盤。
阿部薫「風に吹かれて」 阿部薫 「風に吹かれて」 TKCA71097 徳間コミュニケーション
やっぱり阿部薫はライブがいいのかも知れない。これを聴いていると見てみたかったと思う。



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