ROCK ARTISTS BIOGRAPHICAL DEPARTMENT
JAPANESE ROCK ARTISTS SECTION



東京ビートルズ

「忘却の和訳ロックへのレクイエム」
  松田裕之


「meet the 東京ビートルズ」こ、こ、これは凄い!全4曲全てビートルズの日本語カヴァーで、1曲目「抱きしめたい」の♪アワナ・ホ〜ジュ〜ヘ〜〜〜ンの歌声を聴いただけで脳味噌はドーパミンをドクドクと放出し、笑いすぎで腸捻転になること請け合い。

情熱的な歌声と裏腹な冷めたバック演奏がアンバランスで哀しい。こんな最終兵器が30年も眠っていたとは。まさにアフリカ奥地から太古の昔より眠りから目覚めたエボラか、サンダーマスク。何度聴いても笑える。あまりの凄さに、大瀧師匠と高田文夫氏の創ったフェイクではないかと疑ってしまうぐらいだ。

日本のロックやポップス黎明期のカヴァー物の時代はカオス的で面白い。黒船に乗ってきた外人の格好良さに憧れてスーツを着てみたが頭はチョンマゲみたいな雰囲気がある。何せロカビリー御三家全盛の時代では、朝FEN流れた新曲を夜のステージで演奏する事も有ったらしい。これじゃ新聞だ。だから東京ビートルズが結成より僅か2週間後にライブをしたのは別段珍しい事では無い。その約2週間後にレコーディング。発売までの間にTV出演し、週刊誌に話題を振りまいている。

この時の記事がライナーにあるのだが、これが現代では想像を絶する内容だ。ちょっと引用すると、


歌っているのは真っ白いシャツとタイツ姿の四人の少年達。その姿を見ながら、ワーッ、キャーという女性の嬌声があがる。

"イジリたいワッ!"
"もっとキブンを出してオコシを振ってヨオ........"
<中略>
そのうちに客席からたまりかねたように、女性が舞台にかけあがってゆく、
<中略>
マジックインキで、少年達の真っ白いシャツやタイツに、思いっきり落書きをはじめた。
"キミコはあなたのものよ"
"愛して"
"たまらない"
<以下略>


純白のユニフォームはすぐに真っ黒になり10日ごとに新調した。観客のリアクションももの凄いが、これには理由があって、タイツ姿の股間のモッコリが水商売の女性に人気を博したのが原因らしい。その後、日劇のウエスタン・カーニバルに出演して音楽雑誌に酷評される。再度ライナーより引用すると、

● なんともいえない異様さ、ラスプーチンが踊り出したとでもいおうか。

うぅむ、どんなモノだったのか全然想像がつかない。後期には"リバプールサウンドにゴーゴーを取り入れた演奏でうけている"といった意味不明な評価もあったそうだ。(「The Sound Of 1965」というアルバムで聞けるが、こちらは至って普通)

今ではすっかり黙殺され続ける、時代の狭間で生まれた"和訳"ロックの貴重な一枚であることは間違いない。


東京ビートルズ「Meet The東京ビートルズ」 東京ビートルズ「Meet The東京ビートルズ」
VICL12010 ビクターエンタテインメント
全4曲和訳ビートルズのカバー。「乱痴気騒ぎ」などの凄まじい和訳が時代を感じさせる。未成熟時代の日本のロックを知る貴重な1枚。


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