ROCK ARTISTS BIOGRAPHICAL DEPARTMENT
JAPANESE ROCK ARTISTS SECTION



友部正人

「メインディッシュまで辿り着けよ!」
  松田裕之

中華料理だろうがフランス料理だろうがコースのメインディッシュを一番最初に出す料理屋は無いだろう。当たり前だ。後から出てくる料理がバカみたいだからね。フォークを聞き始めた頃にいきなり友部正人を聞いてしまった俺は前菜を楽しめない不幸な奴だ。

今から20数年前のフォークといえば、それまでの暗いというイメージを脱却しようと「ニューミュージック」なるジャンルを作り「僕たちはニューミュージックという新しい音楽をやってま〜す!フォークなんて暗くってやだね〜」などという、今まで〜莊と名乗っていたのが〜アパートと改称するだけで家賃を吊り上げると言ったような不遜な態度でレコードセールスを伸ばしていた時代だった。そんな見え透いたイメージ戦略に乗ってしまうほど純粋でなかった俺は、四畳半ですか?暗いねえ。手を取り合って「さあ、みんな一緒に歌おう!」ですか?プッ!てな感じでフォークを聴く者を罵倒しまくり、やっぱり俺はロックだよなあなどと自己陶酔する愚か者であった。阿呆である。

丁度その頃FMで日本のロック史を特集する番組があって、金の無かった俺はこれ幸いと録音に励んでいた。名前も忘れたが思えばこの時のパーソナリティーは随分趣味のいい方で、久保田麻琴と夕焼け楽団、外道、村八分、INU・・・当時ほとんど日本のロックに対して無知だった俺には刺激的だった(選曲も良かった)。番組も終盤にさしかかって、そこそこリアルタイムで聴いた曲も流れ始めた頃、突然「この人を忘れてはいけません!」と言ってかかったのが友部正人の「一本道」である。なんでフォークを・・・と思いつつ聴いていたのだが、これがメチャメチャいいのである。今まで自分の中にあったフォークの概念は崩壊し、ある種のカタルシスを感じた。早速「にんじん」を購入。その後友部正人のアルバムを買い漁ったのは言うまでもない。

彼の曲を聴くにつれ、フォークだとかロックだとかパンクだとかなんだのというカテゴライズの無意味さを思い知った。彼がフォークだけでなく数多くのロックやパンクミュージシャンから尊敬されているのも頷けるし、あの時の放送で「一本道」を流したパーソナリティーの選曲も当然だったのである。

「誰も僕の絵を描けないだろう」この曲は絶対に聴くべきである。たとえいきなりのメインディッシュだとしても。(あがた森魚のカバー<アルバム:「永遠の遠国」収録>も素晴らしくいい)

友部正人「にんじん」 友部正人 「にんじん」
TOSHIBA EMI TOCT-9290
初期の大傑作。友部正人の言葉がのど元にナイフを突き刺すように響いてくる。フォークだが、その辺のパンクよりもパンク。
友部正人「ブルースを発車させよう」 友部正人「ブルースを発車させよう」
TMオフィス TM009-010
町田町蔵(現:町田康)等のゲストも参加した集大成とも言える2枚組のライブアルバム。その鋭さは幾分も衰えていない。
友部正人「誰も僕の絵を描けないだろう」(ベスト・セレクション) 友部正人「誰も僕の絵を描けないだろう(ベスト・セレクション)」
ソニーSRCL1906
「直線の嵐の中で人は気が狂うだろう」傑作。



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