ROCK ARTISTS BIOGRAPHICAL DEPARTMENT
JAPANESE ROCK ARTISTS SECTION
横浜銀蝿
「銀蝿は日本のロックをダメにしたか?」 SHINGO
“キャッツアイ”といわれるサングラスが大流行のようだ。GACKT等がかけている、細くつりあがった形状のヤツだ。現在街では、猫も杓子もこのサングラスをかけているが、このタイプのサングラスは20年程前にも大流行しており(当時の物のレンズは真っ黒で今流行っている物のように瞳は見えなかったが)、当時は世間で忌み嫌われる“ヤンキー”達のかける物だった。それをかけて鮮烈に登場したのが横浜銀蝿であった。
私がはじめて横浜銀蝿の曲に触れたのは10歳の時、デビュー曲の「横須賀BABY」だった。7つ離れた兄貴が聴いていたモノを耳にしたのが最初だったが、「今夜はお前とベイベー最後の夜になりそ〜お〜」という歌詞にちょっと切ないメロディーが絡んで10歳のガキとしてはかなりオトナの雰囲気を感じたものだ。
カセットだったのでルックスはわからず「どんな人たちが歌ってるんだろう・・」と思っていた折、兄貴から「今日のザ・ベストテンに銀蝿が出るぞ」という報告。ワクワクしながら、兄貴と食い入るように見つめていたブラウン管に現れた横浜銀蝿の勇姿にはブッ飛んだ。
クルクルパーマのサイドを強引に流しつけた「リーゼントといってもいいのか?」というようなヘアスタイルに冒頭で話したキャッツアイ、ライダースジャケットに白いドカンズボンで、首に白いマフラー、というわけのわからないファッション。そして歌った曲が2ndシングルの“ツッパリHigh
School Rock'n Roll(登校編)”。
デビュー曲を聴いて勝手に想像していたイメージを完全にぶち壊されたが、このスタイルが当時社会問題になっていた“ツッパリ”や“暴走族”たちに爆発的に、そして圧倒的にウケた。解散までに発表された6枚のアルバムのタイトルにはすべて「ぶっちぎり」という言葉が使われておりクルマのギアをイメージして「ぶっちぎりセカンド、サード、トップ・・・リバース」という具合だった。そしてアルバムの冒頭には改造バイクのエンジン音が挿入され、曲のタイトルは“ぶっちぎりRock'n'Roll”“かっとびRock'n'Roll”“壱から拾までRock'n
Roll”(※1)等々・・・と、歌詞も含めた全てが完全にツッパリRock'n Rollであった。そんなわけでライブに集まる連中も特攻服をしょったヤツやヤンキーが大多数で、会場周辺は異様な雰囲気であっただろう。
そういう若者に支えられ横浜銀蝿はマスコミにもドンドン露出、当時の聖地だった日本武道館も満タンにする、というビッグなバンドに登りつめた。しかし横浜銀蝿が登りつめてしまったからこそ“ロックンロール”というものは“ヤンキーや暴走族の、ならず者達が演る音楽”というイメージが社会的に定着してしまった感があり、後年「日本のロックをダメにしたのは横浜銀蝿だ」という声が少なからず聞こえるようになった。
しかし、本来B級であるはずのこの手のバンドがここまでビッグになったのは、本当に「ツッパリ」に受けたからだけだったのだろうか?私には到底そうとは思えない。私自身は決して“マジメ”ではなかったが“ツッパリ”ではなかったし“暴走族”でもなかった。それでも横浜銀蝿の音楽に魅力を感じていたのは、ロックンロールスタンダード、オールディーズと言われる音楽を小さい頃から愛していたからだろう。1stアルバム「ぶっちぎり」収録の“バイバイOld
Rock'n Roll”(※2)という曲を聴けばわかるように、メンバー達はかなりのオールドロックンロールマニアであったようで、彼らの曲にはそれらの匂いが強烈にしており、ルックスや歌詞が持つ“ヤンキーロック”というイメージを除けば非常に良質なロックンロールであり、横浜銀蝿のファンというのは必ずしも“ツッパリイメージ”だけに引っ張られたものばかりではないと、いろいろな音楽を聴いてちょっと年を食った現在でも真剣に思うのである。
近年の、国政選挙への出馬や覚醒剤使用での逮捕というメンバーの行動には絶句であるが、最後にもう一度断言しておきたい!!TCR横浜銀蝿RS(:フルネーム。ザ・クレイジーライダー横浜銀蝿ローリングスペシャルと読む)の音楽は、非常に良質で素敵なロックンロールであると。
「横浜銀蝿が日本のロックをダメにした」だぁ〜??社会がどう思おうといいじゃないか!そんな台詞は音楽の本質を噛み分けられないクソ評論家の理屈じゃー!!!
☆これを聴け!☆
※1 横浜銀蝿 / スペシャルメモリーズ クレイジーライダー KICS-735〜6 |
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T.C.R横浜銀蝿R.Sの場合、どこを切っても銀蝿サウンドなので入門者にはこの2枚組BEST盤をオ ススメしたい。このバンドはシングル曲は基本的にアルバムに入れていないので、それらの曲が 聴ける意味でもこのアルバムはオトクである。 | |
※2 横浜銀蝿 / ぶっちぎり キングレコード ASIN: B00005F7L1 | |
デビュー盤。すべてはここから始まった。オリジナルはすでに廃盤になっているが、現在復刻版 が入手可能である。 |