ROCK ARTISTS BIOGRAPHICAL DEPARTMENT
JAPANESE ROCK ARTISTS SECTION
THE STREET SLIDERS / ザ・ストリート・スライダース
「とにかく好きなようにやらせてもらうゼ!」
SHINGO
今思えば、私がSTREET SLIDERSの音を初めて耳にしたのは「夜をぶっとばせ!」という映画のビデオを見たときだった。シンナー中毒の非行少女が米軍キャンプで歌うロックバンドに憧れてグルーピーに・・・というようなストーリーだったと思うが、よく憶えていない。 その劇中のバンドがSLIDERSだったわけで、今思えば“BLOW THE NIGHT”(※)などの名曲が登場していたわけだが、その時はなんら気にすることもなく、それが実在するバンドであることすら気付かなかった。 その頃私はパンクに頭を痛打されており、新しい音楽を受け付けないカラダになっていた。そんな意固地な時期に思わぬ事からSLIDERSと再会することになる。当時通いつめていたレコード店でふと手にした12インチシングルのジャケットが異様にかっこよく見えた。オオカミのように髪を立てた男の顔が写っており「BACK TO BACK:THE STREET SLIDERS」(※)と書いてあった。「このルックスはパンクやな」と勝手に思い込み購入、急いで家に帰り針を落とす。 「なんや〜、パンクちゃうやん!」という落胆が最初に来たが、それが新しいバンドを見つけたときのアノ喜びに変わるのに時間はかからなかった。ナチュラルに歪んだギターの音と腹にズンズン来るリズム、そしてだるそうなルーズなボーカル。「本当に日本のバンドか!?」というほどのカッコよさで、一気に心を持っていかれた。そして次のバイト料が入るのを待ちかねて既出のアルバムを遡り購入。期待通りカッコよかった。 今まで洋楽も含めて、この手の横ノリの音にあまり興味を示さなかった事を疑問に思い、本気で悔いた。そして聴きこんでいくうちに冒頭の映画に出ていたバンドが彼らであったことに気付き、急いでビデオ屋に行ったが既にその商品は置いてなかった(もう一回見たい!)。その映画が撮影された時、彼らは本当に福生の米軍キャンプで演奏していたバンドであり、役でもなんでもなかったようだが、当時福生では「リトルストーンズ」と呼ばれ人気を博していたらしい。 ストーンズと言えば日本ではRCサクセションがよくそれに例えられ、後にSLIDERSもそう呼ばれたが、私にはこの「リトルストーンズ」のほうがSLIDERSにはしっくり来るように思う。RCにはご存知忌野清志郎がおり、彼がミックジャガーである。チャボは文句なしにキースリチャードであろう。しかしSLIDERSにはミックジャガーがいない。ボーカルをとっているのはハリーだが、彼の持つ雰囲気はどう見てもミックではなくキースである。 しかしサウンドは間違いなくストーンズばりであり「リトルストーンズ」と呼ぶのが相応しい。本家ストーンズのようにいつまでもあのサウンドを聴かせて欲しかったが2000年「リトルストーンズ」SIDERSは解散してしまった。残念でならないが、デビュー以来20年弱一切スタイルを崩さず、マイペースで黙々と素晴らしいロックナンバーを演り続けた4人の男達に賞賛と感謝の気持ちを贈りたい。そして最後に彼らのスタンスを見事に表している“EASY ACTION”(※)と言う曲の一節を紹介してペンを置きたい。 世界を変えるなんて出来ない相談だぜ いつもとびきりROCK'N'ROLL俺たちゃこれだけ、鼻歌でEASY ACTION 横目でBYE BYE 悪いけどEASY ACTIONかまわずやらせてもらうぜ! |
THE STREET SLIDERS BOX SET CD「ROX IN THE BOX」 ESCB-2204〜14 | |
残念ながらTHE STREET SLIDERSの作品は解散とともに全タイトルが廃盤になってしまい、全てこのBOX SETにまとめられた。少し高価だがSLIDERSの未収録曲等も含めたすべてが詰まっているので興味のある方はこれを求めて頂きたい。 P.S.このようなオススメのしかたしかできないことを、私のこの雑文に目を落としていただいた、全ての人たちに心よりお詫びするとともに、CD製作関係者の皆様に一言だけ苦言を呈したい。 今回のBOX SETという発売の仕方は、一方では一気にバンドの作品群が手に出来るという意味でいいのかもしれないが、その発売と同時に全てのタイトルを廃盤にするというのは、いかがなものか。 確かに11枚組で2万円という値段は既知のファンが一気に買い揃えるという場合にはお得でいいかもしれないが、逆になんらかのきっかけで「聴いてみたい」と思う、新しいファンには一気に2万円という価格はなんとも手がでにくい。値段の関係で買うことが出来ないという理由でこのような素晴らしい作品を聴く機会を逃す人が出るのは、音楽を愛するものからすれば非常に心苦しいし、淋しい。 自分が惚れこんだ作品であるからこそ、解散した後でも一人でも多くの人達に聴いて欲しいと願うのは、そのミュージシャンを愛するものなら当然考えることであると思うし、ミュージシャン自身もそうであると信じたい。 勝手なことばかり並べ立ててしまったが、貴業界のシステムなどまったくわからない素人の意見、とお許しいただくとともに、音楽を心より愛する者の意見としてお受け取りいただき、バラ売りの復活について御一考願いたい。 |