ROCK ARTISTS BIOGRAPHICAL DEPARTMENT
JAPANESE ROCK ARTISTS SECTION

THE STAR CLUB　/　ザ・スタークラブ

「ヤクザ映画のパンク」　　 SHINGO

毎年のことだが、今年も年末年始の深夜、任侠ヤクザ映画が一挙放映されていた。

どれを見てもストーリー展開はよく似ていて、裏切りなどによる理不尽な出来事に遭遇した鶴田浩二、高倉健などの任侠ヤクザが、止める女を振り切って復讐の斬り込みに向かう、というお決まりの筋書きである。最後は復讐を終えた主人公が苦虫を噛み潰したような顔をしてテーマ曲とともにどこかへ歩み去る、というものだが、このわかりきった展開にもかかわらず、見終わった後は自分がいっぱしの男になったような気になって、街を肩で風切って歩きたくなるのは私だけではないはずだ。

STAR CLUBの音楽、とりわけライブは、見終わった後これとおなじような感覚に陥らせてくれる。「夢じゃない、力だ」「女を感じさせる音楽は演らない」「お前らに力を」などの男臭いメッセージを吐きながら疾走を続けるリーダーのHIKAGEは日本で数少ないパンクヒーローであり、４０を過ぎた今も私たちオールドファンはもちろん、若手パンクスをも巻き込んで、男達を引っ張りつづけている。その多くをオールスタンディングの会場で行う彼らのライブは、ダイビング咲き乱れ、時には演奏が途中で止まってしまうようなトラブルが客席で起こるなど緊迫した雰囲気が流れており、ハードなパンクロックンロールと男臭さに溺れ、文句なく熱くなれるステージであることは間違いない。そうして会場を出る時にはヤクザ映画を見て自分が主人公になりきってしまうのと同じような気持ちになって、肩で風切って歩いてしまうのである。

恥ずかしながら私はそのライブを体験した折、メジャー2ndアルバム（※１）収録の“POWER TO THE PUNKS”と6thアルバム（※２）収録の“NOW AGAIN”が演奏されたときに涙を流しながら拳を突き上げていたという経験がある。結成から24年、数々のメンバーチェンジを経てオリジナルメンバーはHIKAGEのみとなってしまい、サウンドは様々に変化しているが、パンク魂まるだしのハードな世界は現在もバリバリの現役である。

近年、またパンクが見直されてきていようで、STARCLUBのフォロワーを含め、多くの様々なパンクバンドが出てきているが、私の中でSTARCLUBを超えるパンクバンドは出ておらず、未だ現役チャンピオンだ。またそんなバンドが出てきたとしても、STARCLUBだけは別格で、長嶋茂雄生涯名誉監督のように魂に残り続け、一生私に力を与え続けてくれるバンドであると確信している。

さあ、今日もSTAR CLUBを聴いて、鬼ばかりの世間を肩で風切って渡ろうっと！！


☆これを聴け！☆

	THE STAR CLUB / PUNK!PUNK!PUNK! TKCA-71509
	今もライブで歌われる名曲ぞろいの一枚。スタークラブ初期の、いや日本パンク史上に燦然と輝 く歴史的名盤だ。
	THE STAR CLUB / ROCK'N'ROLL RIDER VDR-1508
	“少年と街”がテーマになっており、よりストレートに、よりシンプルに若きパンクスの心情を 描いている。 私も今だにこれを聴くとゾクゾクする名盤で、入門者にはオススメの一枚だ。

Ｂａｃｋ

Top