ROCK ARTISTS BIOGRAPHICAL DEPARTMENT
JAPANESE ROCK ARTISTS SECTION



四人囃子  

「屈指のへたれヴォーカル」  
      Pantetsu

今となっては「へたれヴォーカル」なんて市民権を得てしまった感が有るが、いくら非セールス主義でしか成り立たなかったであろう当時の日本のロックとしてもコレは凄い。いくら演奏が達者でもインストはNGの感が強かった当時のレコード業界であるから、無理してでも歌わないと皿になりません。ヴォーカル担当の森園勝敏氏も絶対に感じていただろう。四人囃子を脱退した後はフュージョン(当時はクロスオーバーと呼んでいた)バンド「PRISM」に参加し、ソロアルバム「バットアニマ」では若干は歌うものの、ほぼ完全に歌う事を拒絶した感がある。しかし「へたれ歌」ほど、慣れると快感になるのも事実だ。

四人囃子の1stアルバム「一触即発」。当時は雑誌の人気投票などで1位2位を争っていたバンドである。音は簡単に言うとプログレで、ELPとフロイドにディープパープルが隠し味みたいな・・とにかく演奏力は高い。雰囲気先行のバンドでは無い。歌以外は個人の技術力が炸裂するアルバムであり、曲は長いが、曲調の変化にスピード感が有り、聴くものを飽きさせないだけの工夫がされている。

私にとっては当時、興味本位でジャケ買いした数少ない邦楽の内の一枚である。パイプを咥えて象の鼻にぶら下がっているメガネザルらしき生き物に振り返っているカメ・・・・そんな不思議な絵がジャケットだ。歌詞も抽象的なものが多く、詩としては短めで演奏主体のバンドかと思わせるが、へたれながらも歌は重要な部分を占めている。中でも「おまつり」や、シングル「空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ」などはストーリーテイラー的な作りがされており、情景を想像しながら、歌詞として歌われる「セリフ部分」に言い知れぬ羞恥心を感じ、如何様にもロックの可能性を肥大させてしまう。アジテートなロック主張では無く、純文学にも似た常識的方法論の欠落が色濃い作風の詩となっている。詞じゃなくて詩なのだ。

それでもバンドの音がインテリチックなフロントマンに支配される事が無かったのは、詩を外部の人間に依頼しているからだろう。要するにバンドは音が出したかっただけで、歌の世界なんてどうでも良かったのでは無いかと推測する。しかし、その抽象的な詩と、へたれヴォーカルが絶妙にマッチしたのでこの様な傑作が生まれたのだろう。そして、それがバンドのカラーとして世の中に認識されたのであろう。俗に言う「バンドマジック」のなせる技なのか・・・このバンドを森園勝敏氏メインと考えている私に根本的に問題が有るのか・・・・

四人囃子 「一触即発」 四人囃子 「一触即発」 PCCA-00586
森園勝敏氏の在籍していた四人囃子が私にとっての四人囃子である。
2ndアルバムにも氏は参加しているが、やはり傑作は「一触即発」シングル「空飛ぶ円盤・・」であろう。現在入手可能なCD「一触即発」には有りがたい事に「空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ」がシングルCDで付いている。「一枚の絵を描く様」と形容される誰もが認める日本ロックの貴重な一枚。





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