ROCK ARTISTS BIOGRAPHICAL DEPARTMENT
JAPANESE ROCK ARTISTS SECTION


「俺は昆布茶を飲んでティータイムという」
- 鈴木いづみについて -

松田   裕之       

 - 速度が問題なのだ。人生の絶対量は、はじめから決まっているという気がする。細く長くか太く短くか、いずれにしても使いきってしまえば死ぬよりほかにない。どのくらいの速さで生きるか? -

渋谷ルミネの青山ブックセンターでショッキングピンクの色彩にクラクラしながら、ぼんやりと確信する。何も残っちゃあいないんだと。ブロバリン98錠で男は去った。そしてこの女も人生の絶対量を知っていたわけだ。86年のこと。

死ぬだけでカリスマ化するのは気にくわないが、ぶっ飛んだ速度で生き続けるのは難しい。あとはタイミングの問題なのだ。ましてや60年代に呪縛された女が、80年代から始まる「気楽にゆっくり健康で長生き」という世間的な空気の中で生きていくのは不可能なことで、無様な酸欠を繰り返す。90年代以降なら嘔吐。ブロバリンではなく、薫と番で一緒に健康食品買いに行くなど想像を絶するお話しであって、ありえんありえん。

時代は急速に二元論的なポップさを獲得し、誰しも幸せなどというあり得ない前提を目指すわけだが、マイノリティの排除に多量の抗生物質を飲むことを余儀なくされている。90年代を生き続けてしまった俺らは反動を待ち続ける。ワルツを踊りながら。

鈴木いづみコレクション〈5〉 書籍 : 鈴木いづみコレクション〈5〉いつだってティータイム
文遊社

エッセイ集。松浦理英子の解説もよい。表紙はアラーキー。
エンドレス・ワルツ 書籍 : エンドレス・ワルツ   稲葉真弓 著       河出書房新社
映画 : エンドレス・ワルツ  (製)'95年日本 (公)'96年11月
監督:若松孝二   主演:町田町蔵

町蔵が阿部薫を広田玲央名が鈴木いづみを演じる。
取り敢えず観とけや。



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