ROCK ARTISTS BIOGRAPHICAL DEPARTMENT
JAPANESE ROCK ARTISTS SECTION


遠藤賢司

エンケン様の魂の唄を聞け!ROCKはスタイルじゃないんだよ!
                   

 < マサキ >

俺は 九州の筑豊・元産炭地で今ではすっかり寂れきってる田舎町で商いをしている。
もう11年前の話だが数十年前の話ではない。

真ん前は酒屋で朝から数人の男がカクウチで酒を飲んでいる。
そこに毎日通うジイさんがいた。
気の毒なくらいにヨボヨボで50mくらい歩くのに一分以上はかかる。
だけどこのジイさん、眼光だけは異常に鋭いジイさんだ。
そして「ボン(坊主)、売れるか?」と声をかけて行く。
「ボチボチやね。」と答えるとこれがまた信じられないくらいにニコッと可愛い笑顔を投げかけてくる。

このジイさんは昔市会議員だったらしい。
当時の筑豊ではヤクザまがいな議員も少なくなかったようだ。
それが保証倒れで嫁さんと子供に愛想をつかされ逃げられたらしい。
指も一本なかった。
そしてその頃では生活保護を貰い家賃3千円の長屋で一人住まいだった。
毎日酒をカクウチで飲みすぐ側のパチンコ屋に入って行く。
ジイさんはパチンコをしない。
中で酒呑み同士の揉め事があるとヨボヨボのくせに一喝して騒ぎを静めるらしい。
生活保護を貰いながらカクウチで朝から酒を食らう輩で一杯だったそのパチンコ屋ではしょっちゅうケンカがあったのだ。

それがジイさんの日課だった。
来る日も来る日も。

ある日ジイさんが店の前を通った時に流してたエンケン様の「猫が眠ってる、NIYAGO」を聞いて「ボン、琵琶法師みたいな歌やのう。」と言った。
笑みだけ返して「確かにそうだな。」と思った。

そのジイさんもある雪の降り積もった朝に雪に埋もれてJRのガード下で倒れて死んでいたらしい。
夜中にあのヨボヨボ足でどこに向かっていたんだろう。

エンケン様が小倉の某ライヴハウスに来た時にライヴ前日に前夜祭という形で話をする機会を持てた。
エンケン様にそのジイさんの話しをすると興味を持って聞いてくれた。
「へぇ〜、ボンっていう呼び方がいいねェ。無法松みたいだね。いまだにそんな話しがあるんだぁ。悲しくて切ないけど何か胸打つ話だね。」って言ってくれた。

ライヴは勿論素晴らしいものだった。
パンクもロックもフォークもクソもない。
圧倒的な魂の歌!
圧倒的な叫び!
圧倒的なヴァイブレーション!
圧倒的なROCK!!

ライヴ終了後押さえきれない感動をこらえながら汗まみれのエンケン様の側へ行き買ったCD「史上最長寿のロックンローラー」にサインを求めると「ぼんちゃんへ」と書き添えてくれた。
今でも宝物で部屋の壁に飾っている。

エンケン様のお勧めCDはすべてだ。
どれを聞いても圧倒的な言葉(魂)と唄(魂)で貫かれている。
世界中のどこを探しても見つからない日本のエンケン様だけの魂に触れることが出来る!

まんざらあのジイさんも最長寿まではいかなくとも長寿なロッカー、パンカー、ブルースマンだったのかも知れないな。
ジイさん飲んでるかい?乾杯!

エンケン様、アリガトウ!
今夜も酒がうまいです。


     遠藤賢司 / NIYAGO    
AVEX IO



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