三国志のはじまり りょう99@笠原良太

 

■2011年1月5日
「三国志」 1巻  吉川英治著 講談社

184年頃だろうか。
劉邦からはじまる漢室もおとろえ、各地に黄巾賊が蜂起していた。

黄巾の党は張角を頭目としている。
張角が薬をとりに山に入ると道士が「お前を待っていること久しかった」と三巻の書物を張角にさずけて
「これは、太平要術という書物である。この書をよく体して天下の塗炭を救い道を興し善を施すがよい。
もし自信の我意栄耀に酔うて悪心を起こす時は天罰たちどころに身を滅ぼすであろう」
といった。張角が名を問うと「我は南華老仙なり」といって白雲となって飛び去ってしまったという。
里の人は、「わしらの郷土の秀才に神仙が宿った」と真に受けて、たちまち張角を救世の方師と崇めて触れ回った。
たちまち諸州にわたって彼の勢力は広まった。
張角は自己の勢力に服従してくる愚民どもへは「太平を楽しめ」と逸楽を許し、「わが世を謳歌せよ」と暗に略奪を奨励して
その代わりに逆らう者には仮借なく罰し、人間を殺し、財宝をかすめとることが党の日課だった。
思想の悪化、組織の混乱、道徳の退廃、これをどうしようもない後漢の末期だった。

劉備は何年かムシロやスダレを売ってまわり、そのお金で母が一生に一度は飲んでみたいといっていた茶を買う。
親孝行者の劉備であるがそこを黄巾賊につかまってしまった。黄巾賊の荷物をせおい寺で休んだ。
劉備を見た老僧はいった。
「あ、あ!あなただっ。わしは長いこと待っていたよ。あなたこそ魔魅跳梁を退けて暗黒の国に楽土を創りて
乱麻の世に道を示し塗炭の底から大民を救ってくれるお方にちがいない。
あなたの人相骨柄に現れておるよ。青年、聞かしておくれ、あなたの祖先は帝室の流れか王侯の血をひいていたろう」
劉備「ちがう、父も祖父も楼桑村の百姓でした」
老僧「もっと先は」
劉備「わかりません」
老僧「わからなければ、わしの言を信じたがよい。あなたがはいている剣は誰にもらったのか」
劉備「父の遺物」
老僧「もっと前から家におありじゃろう、古びて見る面影もないがそれは凡人のはく剣ではない。
琅玕(ろうかん)の珠がついていたはず、かつ珠とよぶ珠だよ。剣帯に革が錦の腰帛(ようはく)もついていたよだよ。
王者の佩(はい)とそれを呼ぶ」
琅玕の珠は茶う買ったときにお金がたりず手放してしまったのだ。

黄巾賊に茶を持っていることがばれて茶も剣も盗られてしまった。
劉備は逃げだしたが数人に追いつかれ危うかった所を助けてくれたのが張飛だった。
あっという間に数人の黄巾賊をやっつけてしまった。なんという豪傑だろう。
おまけに茶と剣まで張飛は取り返してくれた。
劉備は助けてもらったお礼に大事な剣を張飛に渡した。
張飛のような豪傑に剣を使ってもらった方が剣にとっても本望だと思ったからだ。
張飛の剣と取り替えた。

劉備は何年かぶりで楼桑村の家に帰った。桑の木が見える。劉備の生まれた家である。
劉備の家の裏には何百年もたつであろう桑の大木があって村のどこからでもその木が見えた。
楼桑村という村の名前もその桑の木からとったものかもしれないとのことだった。
家に帰るとお茶を買ってきたということで母は泣いて喜んだが、ふとなにか眼にはいったのか劉備の体をまじまじとみつづけた。
劉備が黄巾賊につかまったことを話し張飛にたすけてもらった礼に剣を与えたことを話すと
母は茶の壺をもって川までいきそれを投げ込んでしまった。
劉備は母が気がふれてしまったのかと思った。
母はいった。「私は子の育て方を誤った。亡き父上にもご先祖様にも申し訳ない、
おまえは漢の正当な血筋をひいているのですよ。一度は中国を統一した血がおまえには流れているのですよ。
あの剣はそれを証明する大事な剣なのです。おまえは性根まで水飲み百姓になりさがってしまったのですか」
劉備「すみませんでした」
母 「そんなに簡単に誤られては私の言ったことがおまえに伝わっているとは思いません」
劉備は心を新たにするのだった。

ある日、魯の李定というものがたずねてきた。いつも山羊をひいて酒を売りにくるので羊仙とよばれているらしい。
羊仙はいった。
「お宅の桑の木を見て偉い物を見たよわしは。あの木は霊木じゃ。この家から必ず貴人が生まれる。
重重、車蓋のよう枝が皆、そういってわしへつぶやいた。
・・・遠くない、この春。桑の葉が青さをつく頃になるといい友達が訪ねてくるよ。蛟龍が雲をえたように。
それから、ここの主はおそろしく身の上が変わってくる」
張飛が訪ねてくることを予言したものである。

ある日、街角に高札が立った。「あまねく天下に義勇の士を募る」というものだった。
黄巾賊の被害に泣いている地は山ほどある。何人も兵士になるぞっというものがいた。
劉備は誰もいなくなるまでその高札をながめていた。
そこへ劉備に話かけたのが張飛だった。
それでも劉備は「私には母がいるから兵隊にいこうとは思いません」っと張飛にいった。
張飛「嘘だ!!」 前に張飛にやった剣をみせて張飛はいった。
「この剣は貴公にあったら返そうとおもっていた。なぜならこの剣は私のような匹夫のもつ剣ではないからだ」
張飛は剣をぬいて剣を振った。
「そなたはこの剣の声をきいたことがあるか。君聞かずや。なんの声か、そも」
劉備も剣の声を聞いた。劉備のはらわたを断つばかり胸をうった。
劉備はいった。「風にも耳、水にも眼、大事は路傍では語れません。
けれど自分は何をつつしもう、漢の中山靖王劉勝の後胤で、景帝の玄孫にあたるものです。
なにおか好んで、沓を作り蓆を織って、黄荒の末季を心なしに見ておりましょうや」
張飛「そうだったのか!やはりこの張飛の眼に誤りはなかった!あなたは景帝の裔孫(えいそん)だったのか。
ああ有り難い。生きていたかいがあった。今月今日、張飛は会うべきお人に会った。
謹んで、剣は、尊手へおかえしします。これはもともと、やつがれなどの身にはくものではない。
が、ただしです。あなたはこの剣を受け取られるや否や、この剣をはくからには、
この剣と共にある使命もあわせてはかねばならぬが」
劉備「うけましょう」
剣は劉備の手にかえった。

ここまでで終わりにしよう。。。
書きたいことがいっぱいあるが短くできない。。。
とりあえずこうして三国志の物語ははじまる。