|| 道徳 ||

さわやか3組
脚本/萩生田宏治、音楽/竹内信次、 出演/前田公輝(子役)ほか
今年度のさわやか3組は案の定ペースを変えた。去年と同様にコメディタッチで、音楽も主題歌を含めてまるきり一緒だが、登場人物が前ほど壊れていない、ごく普通の生徒や大人にまとめてきた。
強いて言えば保健室の養護教員がオカマで、担任の女教師がいつもボーッとしていて道徳ドラマの担任しくない。あと、レギュラーの子どもの数が多い。
去年・おととしまでの3組が、とことんコメディに仕上げることで情緒育成を図ったのに対し、今年の3組は従来の道徳教育に戻った感じだが、時にかなりシビアなテーマも取り上げ、伝えてくることもシンプルでわかりやすい。
第一回、給食を食べることができない少年。食べられない理由も言わず、給食のかわりにコンビニのおむすびを食べている生徒に、他の生徒も、おそらくこれまでの担任も黙認していた風なのが生々しくて、第一回から度肝を抜かれた。
最近の教育現場はこんななのか?個性を尊重するってえのはこういうことなのか?と。
しかしこの回は新米でドジばかり踏む先生が、クラスと、問題児と初めて心を通わせる大事な回であった。
「なぜ先生になったのか」という生徒の問いに「他になれるものがなかったから」みたいな答えだった[なんとなく先生になった]新米教師が、どうしたら給食を食べてくれるのか、どうしたら心を開いてくれるのか悩んでひとり教室で涙している。これを見た生徒たちが、このままじゃいけないと食べられない本人を含めて努力する、という運びである。
さて何回も通して観てきたが、毎回この先生(青井愛・確かこの人モデル出身の人ではないのかな)がドラマ中、大きくとりあげられる意味がわからない。
今年は主要登場人物の子どもの人数が男女合わせて10人、主人公のハルオは少年の頃のキムタクにちょっと似たカワイイ子だし、サブキャラのタカシも個性的で、この子を見て松本大洋の「鉄コン筋クリート」のクロを演らせたい、と思ったような悪ガキヅラ。デブキャラの男子もいるし、おしゃべりな健太郎は、前3組で引っ越していった潤一郎と入れ違いに転入してきた漫談口調のイデマンこと井出満役だった子で、強烈な個性を持っている(女子については特に言うことなし。1人演技の上手い子がいるな)。
これだけの面々を揃えておきながら、なぜに先生までをも印象的にする演出なのかが疑問なのね。
なんだろ。先生だって1人の人間なんだということを伝えたいのかしら。じゃあオカマである必要性は?
かえって印象がバラけてしまい、大味であまり面白みのない道徳ドラマになってしまってると思うの。
が、とりあげるテーマは先にも言った通り、シビアなものもあるので(いじめとか生と死とか老いとか)面白みがどうとかいうドラマではないし、子どもがみなカワイイ子なので良しとする(だからナニサマ)。


虹色定期便
脚本/ 長川千佳子、音楽/藤掛廣幸、テーマ音楽/白石哲也、出演/山岡太郎(子役)ほか
高学年向け道徳ドラマということもあり、伝えたいことが多すぎて結果、ドラマ自体が暗くなったり、どうしてもセリフが凝ってしまうので、子役が小憎らしく見えてしまう傾向がある虹色定期便。
昨年度の憎らしさは例年の比ではなかったが、今年はちょっと違う。
今年の舞台は静岡県焼津。漁村が好きだなあこの枠は。
オープニングで出演者がニヤニヤ出てくるとこは変ってないし、どの子もやはり演技が小上手いのだが、背伸びした感じがない。一人、男子でちょっとカッコつけな役の子がサブい演技を見せてくれるが、それ以外の子はみな雰囲気の良い子である。
なにしろ主人公の男の子がかわいい。演技は決して上手くないが、小太りで、せいいっぱい困った顔をしてみせたり、変声期の前兆すら見えない声でのナレーションもほほえましい。
脚本も、ながら聞きしていても十分面白い。
昔から道徳ドラマの終わり方というのが、結果はどうあれ過程に重きを置いている。たとえば上級生に空き地をとられた、泣き寝入りする主人公たち、だけど不正には立ち向かわなければならない、紆余曲折を経て抗議することにした主人公たち。決然と、上級生が我が物顔で遊ぶ空き地に向かう、で終わり。教室で観ている子どもたちには「エエエエエ!!!」となるラストなのだが、あのパターンが今回多用されていると思う。ああ道徳ドラマの真骨頂。
ところで「浮いた演技の憎たらしさ」がなぜか「さわやか3組」に飛んでいってしまったようで、誰がそうかって3組の主人公ハルオ少年のオヤジだ。

                        
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