出てる子供ほとんどがことごとくバカで、劇中叫びっぱなしの主人公という、既存の道徳教育ドラマの枠を破った今年度の「さわやか3組」。
調べてはいないがおそらく前年度のさわやか3組と同じスタッフが制作していると思われる。
前回のさわやか3組は、男の子のようなルックスで女の子の自分を受け入れられないミハルが主人公だった(このコはカワイかった)。
主題歌も2年前までは少年少女合唱団が唄っていたが、前回からポップにアレンジされ、前フォルダが唄い、ドラマもあくまでコミカルで明るく漫画的。
しかし去年はスタッフの、古い教育番組制作者に対しての様子伺いであったように今は思う。
ホントはコレがやりたかったんではないのかな。
去年が女の子の主人公であったのはたぶん不本意だったのでは。
流れで仕方なく(あるんでしょうな、その前は男の子だったから次は、みたいなのが)女の子にしなくてはならなくなったが、できるだけ「男子」のバカっぽさ、突拍子なさ、チョーシこきさ(!?)を出したがっていたように思う。
そしてこの度の3組は、まさに作家が、演出家が作りたかったドラマになったに違いない。
賭けてもいいが、絶対にこの脚本家もしくは演出の人は、望月峯太郎の「バタアシ金魚」を読んでいる。または大友克洋のファンだ。
子供の頃からマンガをたくさん読み、特撮ヒーローに憧れて山ほどカードを集めた世代の人たちが作った新しい道徳ドラマである(違ったらゴメン)。
主人公の内田かつらは自分を「
だってオレってバカじゃん!!」と言って憚らない。
友達のはるきはマンガ家志望、かつらの暴走についていけなくなったこともあるが、かなりのバカだ。
潤一郎は、クールでキザで目立ちたがらない、かつらとは正反対のタイプであるのに、なぜか4月に転校してきたときから、かつらと反発しあいながらも互いに惹かれあっている。
女子グループは、作家の「女子」に対する思い込みがかなり象徴されていて、卑怯だわつるむわ、気は強いわ薄情だわ。
かつらに「
アンタってなんでそんなバカなの」と言うクラゲが大好きなちさと。
ロマンチストだがしたたかなかおり。
カワイイ顔で潤一郎のマドンナでもあるが、かおりと手をつなぎ大声で歌いながら登校してくるみゆき。
コイツらも全員バカ女である。
今回の3組が型破りな点の1つ、第一話「いざ、かまくら」で、転校してきた潤一郎の回想シーン、鎌倉にくる前にいた学校の教室、知らない町へ越していくシャイな彼に、担任教師が「いざ、かまくら」という言葉を教えて勇気づけるのだが、この担任教師、平成11年度の「3組」の担任をしていた女教師である。
潤一郎は前年度のさわやか3組のクラスから転校してきたことになるのだ。
取り囲み見送る児童たちの顔の中には前3組のメンバーがおり、「鎌倉に行っても元気でね」などと言っているのは前述のミハルだ。
こんな遊び心も、たぶん、たぶん前例のないことで、知ってる人にしかわからないココロニクイ演出なのだ!
また、かつらには秋に妹が生まれる。赤ちゃんのための模様替えでかつらの勉強机は廊下に出され、ド級の音痴でもあるかつらが家族の前で唄っていると「お腹の赤ちゃんに悪いからやめろ」と言われ、「オレと赤ちゃんとどっちが大事だ」と言い返すと、家族全員が「赤ちゃん」と言い放つ。
新しい家族が増えるときのタブーを次々やってしまっているのをサラッと、こんなこともあるよ、という風に描いている。
コワい上級生グループも登場する。この「
極悪トリオ」は下級生からトレカをまき上げたり、声変わりしたての低い声で「テンプラァッ!!」とか言って脅したり、遊んでいるかつらたちの場所を「ナメクジ山はオレたち極悪トリオのナワバリだ」と言って横取りしたりする。
かつらたちの担任、美人教師・夢野先生に褒められたいがために、街のゴミ拾いを、下級生を威嚇しながら励行したこともある。その極悪トリオをこらしめるのはかつらたちの悲願だ。
しかし実際はいつも屈服し、へつらうパターンになる。そしてそれを恥ずかしいことのようにも捉えさせない。悔しくても、敵がいるのは子どもといえど社会の中ではきっと仕方がない。
かつら役の豊田淳くんは辰吉丈一郎似の、なかなかカワイイ男の子で、いつも大声でわめいているバカなガキを演らせたら今世界一だろう。
子役がみな楽しそうに演技をしていて、時々素になって笑ったり、セリフの合間でアイコンタクトして間を計っている様も可愛らしい。
較べてやはり、やや年長の極悪トリオの演技や呼吸は自然で、後姿までもイジメッ子上級生のたたずまいなのはさすがである。
だが1番目をひくのは女子グループのちさと役、須永佐友美ちゃんで、度々主役級の登場があるのも彼女の実力をいわしめている。
その独特の声、キャラクター、演技中も目が泳がず、本気でかつらの耳をひっぱり、かつらの悲鳴にリアリティを出させるあたり、同じくらいの年の子たちからは群を抜いたプロ気質だ。
いつもドラマ自体が高いテンションでダァ―――ッと終ってしまうので、道徳ドラマとしてはどうなのかしらん、とは思うが、とりあえず狙いであるところの『どうせなら楽しく』は的を外していない。
子どもが家に帰って家族に、「今日のさわやか3組はイマイチだったなあ」などと話す時間を与えられれば、それだけで成功している。