| 著者紹介 | |
|
戸川幸夫(とがわゆきお) 明治45年4月佐賀に生まれる。旧制山形高校中退。 昭和12年毎日新聞社会部に入社。記者生活の中で小説を執筆し、「高安犬物語」で29年下期の直木賞受賞。30年に毎日新聞社退社、以後作家生活に入る。 「戸川幸夫動物文学全集」「野生への旅シリーズ」「すばらしい動物の世界」など著書多数。日本動物愛護協会理事、世界野生動物保護協会日本委員、日本哺乳動物学会会員その他をつとめる。 ※上記は「イリオモテヤマネコ」の著者略歴より引用。 戸川幸夫氏は動物学者ではなく作家ですが、イリオモテヤマネコが学術上の新発見となる手がかりを得た人です。戸川氏の尽力なくしては、イリオモテヤマネコがこの時期に発見されることはなかったであろうという重要な役割を果たしています。 |
|
![]() |
原始の島 −日本の最南端・西表− |
| 戸川幸夫著/新潮社/1966年1月10日発行 | |
|
戸川幸夫氏の書き下ろしのドキュメンタリー「野生への旅」シリーズの第5弾がこの「原始の島」です。 著者はこの「野生への旅」シリーズの題材として、当初取材先を石垣島と考えていましたが、旅の途中に寄った那覇で「西表島にヤマネコがいるらしい」という噂を聞きます。そこで以前から交流のあった琉球大学の高良鉄夫教授(動物学)に会い話をしてみたところ、高良氏からどうもそれは本当にヤマネコらしいのでデータを集めてみてくれないか、と頼まれ、行き先を西表島に変更したのでした。 つまりこの本を書くという目的から著者は西表島を訪れることになったわけで、そこからイリオモテヤマネコの発見につながった、という意味でこの本は重要な一冊です。 この話は西表島の昭和40年当時の風物を描いている点でも非常に興味深いですが、なんといっても物語のメインはイリオモテヤマネコの発見の話です。一時期は動物学者を目指したという著者が新種らしい動物を追い求めていく過程には読むほうもわくわくさせられました。 著者が持ち帰った毛皮からイリオモテヤマネコが「新種らしい」ということになった後、作者は再度西表島を訪れて、完全な標本となりうる骨と毛皮を得ていますが、本書はそこまで記されています。 当時アメリカ施政下であり、またかなり不自由な離島であった西表島での作者の奮闘ぶりが伝わってくる作品です。 なお巻末には今泉吉典氏が「科学読売」1965年9月号に掲載した、イリオモテヤマネコについての解説がありますが、この説は「当時」のものであり、現在のイリオモテヤマネコに対する見解とはかなり違った部分があるということを付け加えておきます。 | |
![]() |
イリオモテヤマネコ 原始の西表島で発見された”生きた化石動物”の謎 |
| 戸川幸夫著/自由国民社/1967年9月1日発行 | |
|
基本的には上記の「原始の島」とほぼ同じ内容の西表島の紀行文が書かれているのですが、こちらは「原始の島」に記されている以降の、イリオモテヤマネコ生け捕りから引き渡しに至るまでの経緯も描かれています。 生け捕りされたイリオモテヤマネコは、国立科学博物館の準備が整うまでの約2年半の間戸川氏の自宅で飼育されたのですが、その時の飼育日誌にも大きくページが割かれています。イリオモテヤマネコを飼育した日誌が一般に公開されているものはこれしかありませんから(漫画では沖縄こどもの国で飼育した「ケイ太」の飼育日誌がありますが…)、非常に貴重な資料と言えるでしょう。 また今泉吉典氏の研究論文の内容についても詳しく記されています。 | |