独り言:平成17年8月22日(月)「蚤」

仕事が終わり帰宅すると、祖母から目覚まし時計が動かなくなったので見て欲しいと言われた。
たぶん電池切れだろうなと思いつつ、時計背面の電池カバーを外してみる。
見ると、電池から液が漏れだしているではないか。
時計内部に液が染み渡っている状態で、買い換えた方が良いと判断するには数秒かからなかった。
その事を祖母に告げると、私はその目覚まし時計を処分しに、倉庫のゴミ置き場へと向かう。
ゴミは分別して置いてあるのだが、日も暮れ始め、辺りは薄暗く、どのゴミ袋がそうか判断するのに少々時間がかかってしまった。

時計を処分すると、仕事で疲れた足を引きずりながら二階の寝室に上がる。
新しい時計を買うことを忘れないようメモ書きをする為だ。
寝室の机に走り書きのメモを残すと、ふぅ〜っと一息つき、階下の居間へと踵を返した。
階下へ向かう途中、ふと、足首が痒いのが気になった。
靴下の締め付けだろうか?
ゴムの強い靴下をはくと、痒くなることは良くあることだ。
足同士擦り合わせ、痒みを軽減する。だがまだ痒い。
居間に降りると、明るい照明のもとで自分の足首を見た。

・・・黒ゴマ?

何故か黒ゴマが、靴下と素足の境目に4〜5粒くっついている。
今日、黒ゴマ料理食べたっけ?
・・・いや、違うぞ、黒ゴマじゃ・・・ない?
こ、これはもしや・・・蚤(のみ)!?
一瞬身体が硬直する。
ゆっくりと身体を屈め、足首を食い入るように見つめる。
・・・確かに蚤だ。
一体いつの間に!? しかも4〜5匹に一気に刺されるなんて初めての経験だ。
そ〜っとその蚤を一匹捕まえ、プチッと潰す。すると蚤の体液と共に吸われた私の血が滲む。
か、痒い!
だが今ここで掻きむしると蚤を逃がしてしまう。
痒みに我慢しつつ、更にもう一匹、もう一匹と捕まえ潰していく。
あっさりと捕まる吸血に夢中の蚤もいれば、危険を察知し、逃げ跳ねまわる蚤もいる。
また一匹、更に一匹と捕まえる。
そして逃げて床で跳ねる蚤を一匹、あっちにも一匹・・・。

ここでふとあることに気が付いた。
今、捕まえて潰した蚤は何匹目?
・・・そう!
最初に4〜5匹と思っていたのは大間違い!!
黒っぽい靴下をはいていたので気付かなかったが、なんと数え切れない程の蚤が靴下に貪りついているのだ!!
な、なんということだ!
私は戦慄を覚えつつも、とにかくこの蚤を一匹残らず退治しなければと、無心に蚤との格闘を続けた。
靴下をずらす度に数匹の蚤が一斉に飛び跳ねる。
その様子は、まさに蚤の線香花火!
火花を演じるは、大小様々な蚤達。
でも、この火花は熱くないんです。痒いんです。黒いんです。地面に落ちてもまだ跳ねるんです!

どのくらいの時間が経過しただろう。
私は、蚤を捕まえては、潰していく。
近くにあった粘着テープにその死骸をくっつけていった。
やっと、靴下を動かしても、飛び出てくる蚤はいなくなった。
ふぅ〜っと溜め息をつく。

粘着テープに付けられた蚤の死骸の数を数えてみる。
・・・その数30以上!
なんという数だ!!
そして足首の吸血箇所を確認する。その箇所20以上!
これもなんという数だ!
異様なまでにハングリーな蚤達! 信じられない!!

吸血箇所が数珠のように繋がり、足首をぐるっと回っている。
か、痒い!

蚤に刺されると、蚊が刺した時と同じような痒みと赤い湿疹が出てくるのだが、蚊と違うのは、症状がゆっくりと現れる代わりに、なかなか消えないのだ。

ここではたとある事を思い出した。
そう言えば、二階から降りてくる時、足を擦り合わせた気が・・・。
ヤバイ! 二階に蚤が放たれたか!?
私は急いで二階に駆け上がり、床を食い入るように見つめる。
・・・いたぞ。1匹・・・2匹・・・。
私は慎重に蚤を捕まえては潰した。
そしてそのまま寝室に向かう。
やはりここにもいた。潰して、粘着テープに貼り付ける。
なんと言うか、ここまでくると蚤を貼り付けるのが快感になってくる。
気分は狩人。称して「ノミハンター」!!
でも、あまり格好良くない。

一通り部屋を回り、蚤を捕まえ終わると、粘着テープに貼り付けられた数を再度数えてみた。
その数・・・なんと40匹以上!

一体この大量の蚤はどこから発生したのだろうか?
寝室や居間、家の中で発生しているのか?
いや、今日は大掃除したばかりだと相棒が言う。
じゃあ、私の身体で蚤が大量発生したとでもいうのか!?
私の靴下に40匹以上の蚤が発生!?
私の足に一体どんな秘密がっ!?
足部門「ベスト血液賞」に、蚤だけにノミ(蚤)ネートされたとでもいうのか!?
蚤、大絶賛!
・・・そんな血液にはなりたくない。

しかし、帰宅するまでは何ともなかった。
では、帰宅後の行動に何らかの原因があるはずだ。
帰宅してからの行動を思い返してみる。
えーと、祖母から壊れた時計を受け取って・・・倉庫に行って・・・ゴミ置き場・・・に!?
ゴミ置き場!?
あそこかーーー!?

両親に確認すると、最近野良猫がゴミを漁りに来ることがあるという。
ということは、その野良猫が寄生経路か!?
野良猫から蚤がゴミ置き場に付着。
夏季独特の高温多湿。そして餌と暗がりのグッドコンディション。
蚤の大量発生、大集落。いや大都会のスクランブル交差点状態。蚤祭り開催中!

ネコノミは人間に寄生することはないようだが、血は吸うので、ゴミを捨てにやってきた私に本能的に飛びかかって来たということなのか。
しかし、数分しかいなかったのに、その間に40匹以上の蚤が足に食らいついてきたと思うと、一体そこには何十匹、いや何百匹の蚤がいるというのだろう?
想像するのも恐ろしい・・・。

翌日、早速蚤の駆除剤を購入し、倉庫内に散布。
特にゴミ置き場は重点的に、徹底的に、壊滅的に散布!
倉庫内に薬剤特有の臭いが蔓延する。
これで一安心だろうか。
居間で一息つく。
ん? なにやら床に黒ゴマが・・・。
今日は黒ゴマ料理・・・って、蚤だーーー!
即座に捕まえる。あ、ここにもまた一匹!
・・・合計5匹捕まえた。

どういうことだろう?
駆除剤で死滅しなかったのだろうか?
それとも、やっぱり私の足に何か秘密が!?
足部門「ベスト血液賞」は不動のものかーっ!?
蚤ランキング毎週一位かーーっ!?
蚤、まっしぐらかーーーっ!?
そうなのか!? そうなのかーーー!!??
奴らが、奴らが来るーーー!!!
ぎゃあああああああああぁぁぁぁ・・・・・・・・・。

突如始まった蚤との戦いは、まだ終わりそうにない。

・・・痒いJAN。


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