独り言:平成19年6月8日(金)「本当にあった怖い話」

暖冬で桜の開花時期が狂ったり、暑くなったと思ったら雹が降ったりと、異常気象は止みそうにないこの頃。
それでも無事に紫陽花が開花し、梅雨の季節がやってきた。
桜を見るとワクワクするが、紫陽花を見ると落ち着くのは私だけだろうか?

さて、今日は金曜日。
今日の仕事を乗り切れば、久し振りの土日連休だ。
そんな事を思いながら、朝、いつも通り玄関で靴を履いた時だった。

・・・チクリ。

ん!?
左足の親指前方に刺すような痛みが走った。
靴を脱いで、靴の中を確認する。
・・・何も無い?
靴を床にトントンと叩き付けると、埃が少し出てきただけ。
・・・はて?
何か、ステイプルの針とか、尖ったものが靴の中に入ってたのかなぁ?
左足の親指が、じわーんと痛む。
靴下を脱いで痛む箇所を見るが、刺し傷の赤い点があるくらいで腫れた様子も無い。
大丈夫かな?
気を取り直すと、靴下と靴を履き直し、車に乗り込んだ。
じわーんと、若干痺れるような感覚の混じった痛みだが、車の運転に支障をきたす程ではなかった。
そして、会社で仕事をする内に痛みも徐々に治まり、いつもと変わらぬ一日が過ぎた。
夕方には仕事を終え、定時に帰路につく。
残業は無いが、妙に気忙しかった一日だ。
家に着くと、いつもの様に車を停め、玄関に向かって歩き始めた時だった。

・・・チクリ。

また!?
同じ左足の親指、今度は側面だが、また何かが刺さったような痛みを感じた。
今朝と同じような、じわーんと痺れるような感覚の混じった痛みがする。
すぐに靴を脱ぎ、中を確認するも、何も無し。
・・・うむむ?
やっぱり何かの針か、トゲでも潜り込んでいるのかなぁ?
そう思い、靴の中に手を突っ込んだ。
靴の内側から、底と側面の縫い目を指でなぞってみる。
しかし、手に触る異物は何も無い。
爪先付近を満遍なく手で探ってみるが、何も無い・・・。
懐中電灯を持ち出し、靴の中に光りを当ててみるも、やはり何も見あたらない・・・。
うーん。何だろう?

「何してるの? 早くJr.達に夕飯食べさせて!」

不意に、相棒のお怒りの声が聞こえてくる。
でも、こっちはそれどころではない。
靴を地面に叩き付けてみる。

バシンバシン!

強めに叩き付けるも、小さな埃だけで、針らしきものは何も出てこない。
うーん、気になる。
再度、手を突っ込む。
針っぽいものだろうから、隙間に深く入り込んじゃったかなぁ?
正に手探りで、しつこい程に靴の内側を探ってみる。
縫い目や中敷きを中心に、指先の感覚を頼りに探すが、なかなか見付からない。
諦めかけたその時。

・・・ん?

何か指先に尖るものが触った。
あった!
やった!
これに違いない!
だが残念ながら、その尖ったものをすぐに見失ってしまった。
うぬぬ。絶対に見付けて、取り除いてやる!

・・・。

どこに行った?

・・・。

・・・ん?

手に再度、尖った感触が当たった。
よし、下手に動かさず、そーっと手に引っかけて持ち上げ・・・。
あぁ、ダメだ。また見失った・・・。
まいったなぁ。次こそは・・・。
もう一度、手探りでその尖ったものを探そうとした時。

・・・もぞり・・・。

えっっ!?!!??
とっさに手を靴から引き抜いた!

・・・。

確かに今、・・・何か。

・・・動いた感触が?

・・・。

何処からともなく恐怖心が沸き上がってくる。
今まで何の疑いもなく、躊躇無く手を突っ込んでいたが・・・。
・・・気のせい?
だが・・・。
じわりと汗が滲む。
恐怖心と共に沸き上がった疑問を解決すべく、今度は素手ではなく、台所にあった割り箸で恐る恐る靴の中を確認し始めた。

・・・。

・・・やはり何も無い。

まさかね・・・。

・・・まさかとは思うが、まさか・・・。

靴の内側上部(足の甲の部分)に通気性を良くするために貼られているメッシュ状の布を割り箸で突いてみる。

・・・変化は無い。

うん。気のせいだよね。
そうだよねぇ。いくら何でもねぇ。
と、割り箸で削ぐように内側を撫でていた時。
靴の一番奥(爪先部分)から、何かが勢いよく這い出て来たっ!!

一瞬だった。

私は、反射的に靴を放り投げていた。

そう、正に一瞬だった。

瞬きするほどの瞬間であったが、靴の奥に現れた「それ」を確かに見た。

その外見的特徴は、一瞬でも十分な印象を脳裏に焼き付ける。

あれは・・・、あれは・・・。

そして放り出された靴から、・・・「それ」は現れた。

黒光りする10cm程の体をうねらせ、数えきれぬ黄色い足で靴から這い出した「それ」

そう! 百の足と書いて、「ムカデ」である!
疑問の糸は解かれ、不安が現実のものとなった!
なんと、靴の内側に貼られた布の更に内側に、一日中ずーっと潜り込んでいたのだ!!
それが今、目の前で信じられないほどの機敏さで地面を這い回っている!!!
針などでは無かった! 牙だ!
ムカデに咬まれていたのだっ!!
全てを! 全てを今、・・・理解したっ!!!!!

そこからは、スローモーションの様だった・・・。
周りの空気を押し分けるように、足が持ち上がる。
持ち上がった足は頭上を越え、硬い身体が悲鳴を上げるも、更に高さを増していく。
いつしか大気圏を突き破り、宇宙へと高く振り上げられた足は、頂点に達すると、ゆっくりと振り下ろされた。

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!!!

大気圏再突入!
大気摩擦による空力加熱によって、足の表面温度は一千度を軽く超え、周りの希薄空気がプラズマ状態となって光り輝く!
この高温から足を防護する耐熱システム、「スネ毛」の融解・蒸発により熱を外部へ放出!
長い光の帯を纏いながら、高度5万メートルの成層圏へ到達、通過!
超高速で接近してくる地表に躊躇うことなく、目標に向かって一気に加速っ!!

ドガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァッッッ!!!!!

地面は穿ち、空は轟き、隣人は転んだ・・・かも知れない。
何事かとギャラリー(Jr.達)が現れ、動かなくなったムカデを指さし、ざわめいているのも遠くに感じる。
そして、全てが終わった・・・。
深呼吸をしながら、滲んだ汗を拭う。
・・・いや?
まだ、・・・終わってない?
背後から殺気!

「まだー!? 早く夕飯!!

はいぃぃ。今すぐに!!


そんな訳で、思い返してみるに、確かに靴を履いてて若干圧迫感を感じてたけど・・・。
靴下を新調したので、気のせいかなと・・・。
靴の中にムカデがいて咬まれたという人は結構いるかもしれないけど、靴に潜り込ませたまま1日仕事を共にしたというのは、私だけだろう!
しかも、手を突っ込んで、取り出そうとしてたような・・・。
ああああああぁぁぁぁぁぁ・・・・・・。

・・・泣きそうJAN。


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