剛の者レポート:平成13年11月3日(土)「M氏宅にて鶏団子鍋」
●朝夕が少しずつ寒くなってきた。
段々と鍋の季節が近づきつつある。時期的に少し早いかもしれないが、M氏宅にて、M氏の家族とT氏、K氏、そして私の6人で鍋を囲むこととなった。
今日は天気が悪い。夕方の雨の中、M氏宅へと車を走らせる。これから起きる出来事を予感させるような天気である。
M氏宅へ到着すると、早速準備が整えられていた。
ちなみに今回の鍋の内容だが、昔した鶏団子鍋が好評だった為、今回も野菜たっぷりの鶏団子鍋である。
そして使用する鍋のサイズは10号。3.6リットル入る、大人数用鍋だ!
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●この鍋に鰹節からダシを取り、醤油ベースのつゆを注ぐ。 そして適切なサイズに切られた白菜、ニンジン等の野菜を溢れんばかりに入れ、最後に鶏団子を乗せる。 鶏団子が多くて、野菜が隠れてしまいそうだ。 後は、蓋をして、ガスコンロを点火し、煮えるのを待つだけ。 |
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| 鶏団子を手に持つT氏 |
●さて、その間に各人の前に、ワカメ混ぜご飯と、ゆで卵が配られた。
・・・何故、「ゆで卵」!?
すき焼きに「生卵」なら分かるが、鶏団子鍋に「ゆで卵」!?
鶏繋がりということなのだろうか?
M氏宅の鍋は、奥が深い・・・。
鍋が煮えるのを待ちきれずに、ゆで卵をほおばり、ワカメ混ぜご飯を口に運ぶ者がいる。
何もそんなに焦る必要はない。ゆで卵はふ化しないし、ワカメも海に逃げ帰らない。
それとも私が横取りをするとでも思っているのだろうか?
大丈夫。私は君のご飯を取ったりしないので、安心して欲しい。
●さて、そろそろ鍋が煮え始め、空気穴から蒸気が吹き出し始めた。
蓋を開けると、湯気と共に美味しそうな匂いが部屋一杯に広がる。
煮えたのを確認すると、自分の取り皿を持ち、アツアツの鶏団子に野菜、ダシの取れたスープをたっぷりと注ぐ。・・・つゆだくだ。
各人、鶏団子が行き渡ると、「いただきます」の発声と共に、一斉に食べ始めた!
アツアツの鍋は、はふはふと口の中で冷ませながら、その熱さと大勢で囲む雰囲気が、更に御馳走を美味しく引き立たせるのである。
・・・というより、皆、鶏団子を口に運ぶことに夢中だ。
なんと言うか、昔、ガーキーズ(餓鬼’s)と言わしめた彼らを垣間見たような気がした。・・・ちょっと怖い。
鶏団子鍋もあっという間に無くなり、手元のお茶を一口飲むと、フゥっと一息つく。
身体も暖まり、お腹も落ち着きをみせた。
最後に、鍋に残ったスープで、うどんか、雑炊で締めだ・・・。
| ●なんて事で、彼らが終わるはずはない! 先ほどとほぼ同量の野菜、鶏団子を入れ、何故だかT氏の提案で、シャウエッセン・ソーセージが二袋分投入される! |
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| まだ余裕の剛の者達 |
●第2ラウンドの始まりだ!
ぐつぐつと鍋が熱さを取り戻し、野菜や鶏団子が鍋の中で踊り始める。
新参者のシャウエッセンは、そのてかり具合を増し、頬張ると包み込んでいた薄皮がパリッっと弾け、中からジューシーなアツアツの肉汁が溢れ出す!
・・・危うく火傷するところだった。
皆さんも、アツアツのシャウエッセンには注意されたし。
第1ラウンドと違い、新参者のシャウエッセンがミスマッチし、また変わった風味を出していた。
M氏の家族である女性陣2名の箸の運びが、第1ラウンド程の速度は見せない。流石に大分お腹が張ったのだろう。私もお腹が張ってきている。
だが、他の男性陣は、ものともせず口に食べ物を運び続ける。まさに食欲の秋!!
というか、彼らは年中、食欲の秋のような気もするが・・・。
●鍋の底が見え始めた。
流石にもうお腹一杯ですと口を開こうとした瞬間、T氏が鍋に何かを放り込んだ。
・・・ロールキャベツだ!
にやりとT氏が笑った。そのT氏の体格が、ロールキャベツに見えたのは錯覚だったのだろうか?
ロールキャベツが10個あるから、男性は2個、女性は1個の分配となる。
・・・というかノルマだ! 胃の試練だ!! 英語で言うと、ストマック・トライアルだ!!
鍋の中で、僕を食べてと言わんばかりに10人のロールキャベツ達が騒ぎ出し、湯気が立ち始める。
お腹が十分に張っている為か、箸が鍋に向かうのを拒む。
わずか数グラムの箸が、数キロの重さに思える。茶碗の上に箸を置いたまま、動こうとしない者、取り皿に取ったものの、畳の上に横倒れになっている者。
流石に「食」の剛の者達もここまでか・・・。
だが、無邪気に鍋の中で待っているロールキャベツ達を、そのままにする訳にはいかない。
自分の取り皿に取り、その身体から美味しそうな湯気を出しているロールキャベツを口に運ぶ。
鍋で十分に待機していたアツアツのロールキャベツは、その包んであるキャベツはまるで口の中でとろけるように柔らかく、中からこれまたジューシーな肉汁が溢れ出す!
・・・また火傷するところだった。
皆さん、ロールキャベツにも注意されたし。
●試練のロールキャベツ2個。
超A級難度の肉汁を、はふはふと冷まし、超S級に張ったお腹へと運んだ。
2個、全て平らげた。もうこれは剛の者として十分であろう・・・。
自らを称賛し、両手を広げて待っている畳の上に身体を投げ出そうとした、その瞬間!!
T氏が小脇から「煮込みラーメン」の箱を取り出した。
のぉぉぉぉぉっ!!
正面で横倒れになっている者が見えないのかっ!?
箸が茶碗の上で鎮座したまま動かないのが見えないのかっ!?
明日に未来はあるのかっ!?
というか、何でラーメンなんだーっ!!??
普通、締めは、うどんか雑炊だろう!?
そもそも、今のが締めじゃなかったのかっ!?
そんな心の叫び、いや、魂の叫びを無視し、ガソリンスタンドで「レギュラー満タン」と店員に言うような、ごく当たり前の表情で、鍋に煮込みラーメンを放り込んでいく。・・・しかも人数分。
他の者達は「もうお腹一杯だから終わりにしよう」とも言わない。そこに有る物が全て無くならないと、「ごちそうさま」と言わないのだろうか?
それが当たり前であるかのように、鍋に放り込まれるラーメン達をごく自然に見つめている。これが真の「食」の剛の者なのか。・・・恐ろしい。
そしてネギやモヤシ等の野菜と、トドメと言わんばかりに、シャウエッセンが更に二袋投入された。
見た目は、「これが鍋の始まり!?」というような雰囲気十分である。
そのラーメンが煮えるのを待つ間、横倒しのまま動かない者、じっと鍋を見つめる者と様々だが、その中、私は立ったり座ったりで少しでも胃に隙間を作ろうとしていた。
「ちょっと席を詰めてもらえる? 奥の方へお進み下さい! え!? もう入らない!?」という声が胃から喉にかけて聞こえてきそうな、そんな状態だった。
そして、鍋の蓋が開き、仕上げのラーメンスープが注がれる。
辺りにラーメン独特の「こってり」とした匂いが漂い始める・・・。
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●最終ラウンドのゴングが鳴った!! 各自取り皿に入れたラーメンを、ずずずーっとすすり込む。 第1ラウンドと第2ラウンド、ロールキャベツからダシの取れたラーメンのスープは、とても美味しく、老舗のラーメン屋にも負けないといった風味を醸し出していた。 |
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| 第2R(左)、最終R(右)の鍋 |
●しばし、蒸気と熱気に包まれた異様な空間で、ラーメンをすする音だけが響く。
ラーメンをすすっていたが、超S級であったお腹は、今は超SS級を通り越し、危険信号をオーケストラが盛大に奏で始めた!
お腹一杯というより、張り裂けそうで、お腹が痛い・・・。あぁ。この感じ、どこかで・・・。
そうだ! 8耐鍋だ!!
数年前まで恒例となっていた大晦日8時間耐久食べ続け鍋、略して「8耐鍋」を走馬燈のように、思い出していた。
・・・あの時も凄かった。
だが、今は8時間という時間はない。早く食べないといけない!
そう、何故なら、ラーメンは伸びるからっ!!
これ以上、量を増やす訳にはいかないのである。とにかく麺をすすり込む。
そして、何とか麺を食べ終える事ができた。もうお腹は痛みを伴う程、張り裂けそうである!
だが、取り皿には、シャウエッセンが2本、ゴール寸前の私を阻むかのように仁王立ちである。
空腹時のソーセージなど、他愛もなく一口で終わりなのに、今このソーセージは違う。流石、シャウエッセンといったところか。額に汗が流れる。呼吸も浅い。
シャウエッセンを一口、かじる。ジューシーな肉汁が溢れ出し、口の中一杯に広がる。その美味しさとは裏腹に、飲み下すことができない。
喉元では、帰省ラッシュの如く渋滞し、交通整理の人に後30km渋滞ですと言われているようでならない。
何とか時間をかけつつも、1本を胃に送り込んだ。後1本・・・だ!?
に、2本に戻ってる!?
ふと横を見ると、T氏がにやりと笑った。お、鬼だっ! お腹痛くてトイレに行きたいのに、清掃中の看板が出てて入れないくらい鬼だっ!!
●最後の2本を、結構な時間をかけて、なんとか、なんとか食べきる事ができた。
これ程までに、シャウエッセンがボリュームたっぷりで、小錦並に手強いと思ったことは無い。
お腹が張りすぎて、腹式呼吸ができない。
隣のT氏は呼吸が浅い。その苦しそうなT氏のお腹を少し押せば、凄いことになること間違いなしだ。
だが、止めておこう。自分の身も危うい。
ふと鍋を覗いてみる。少量の麺が残っているだけだった。ゴールは目の前だ。だが、どうしても手をつける事ができない。
じりじりと時間が過ぎていく・・・。少量の麺も少しずつ伸びてきているように見える。
| ●不意に、正面で横倒しになっていたM氏がむくりと起きあがった。 そして、何かに取り憑かれたように鍋にかぶりつき、最後の麺をすすり始めた・・・。 剛の者の意地である。心なしか、彼の手に持つ箸が震えているようだった。 ・・・完食である。 |
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| 最後の力を振り絞るM氏 |
●もう、入らない。
達成感からか、誰からともなく笑いが込み上げてくる。だがお腹が張っていて、笑うことさえ苦しい。
考えてみれば、単純計算で、1人あたり鍋半分以上ずつ食べている事になる。流石、ガーキーズと言わしめた「食」の剛の者達である。
それほどの量を食べたのかと思いながら、安堵感にも似た充実感の中で、皆は、しばし放心状態であった。
ふと、廊下を挟んだキッチンから、何かが運ばれてきた。
デザートの「プリン」と「コーヒー」である。
・・・鬼だ・・・。
そう言えば、デザートに「プリン」を用意してあるような事を、最初に言っていたような気が・・・。
ゴールと思っていたのは、蜃気楼だったのか!?
ここまで来れば、拷問と言っても過言ではないだろう!!
悪魔が、悪魔が「プリン」を運んでくるっ!!
・・・流石に、すぐには食べれなかった。
だが、時間をおいて、全て頂いた事を報告しておく。人間、やれば出来るものだ。
●これで本当に完食だ。
私は、明日の朝食はきっと取れないと思いつつ、剛の者達の宴である鶏団子鍋パーティを後にすることとした。
外に出ると、雨は止んでおり、寒さを含み始めた夜風が心地良い。そんな清々しい夜空を見上げて思った・・・。
もう、・・・しばらく鍋はいい。
●今回のレポートはこの辺にしたいと思う。
それではまた。この試練の部屋にて。