剛の者レポート:平成15年8月10日(日)「初出産」
●8月9日(土)
去年の冬、突然ベランダに現れたコウノトリが大きな紙を広げ、私に向けて突き付けた。その紙には大きく「祝!ご懐妊!」と書かれていた・・・かどうかは定かでない。
そんな訳で、それから相棒が妊娠して10ヶ月近くが経った。かかりつけの産婦人科による今日の検診結果では、胎児の体重は推定約2,900グラムということである。
相棒の身長は150cmも無いので、骨盤もそれなりの大きさだ。胎児の大きさから言えば産道が狭く、普通分娩は危ういらしい。
お腹は、スイカでも隠しているのでは!?というくらいで、はち切れんばかりだが、まだお腹は下がってきていない。
出産の兆候は全く無い様子だ。出産は、だいぶ先だろうか?
出産予定日は8月22日、もしかしたら遅れるかもしれないな・・・。
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●ちなみに性別は不明。 8月に入ってから聞こうと思っていたのだが、聞けば、医者曰く大きくなりすぎて分からないとのこと。 うーむ。大きくなればなるほど、分かり易いと思っていたが、そうでもないらしい。 そんなことで、検診結果の報告も兼ねて、私の実家に一泊することとなった。 |
| スイカを隠している!?相棒 |
●8月10日(日)
日頃の疲れか、私はぐっすり寝ていた。ふと早朝5時頃、相棒に起こされる。
寝ぼけ眼に、相棒から尿が勝手に漏れるみたいだと聞かされた。
え? それって、本当に尿か? もしかして破水じゃないのか!?
嘘!? 本当!? どうしよう!?
取り敢えず、両親を起こし、かかりつけの産婦人科へ電話である!
産婦人科の看護婦曰く、破水かもしれないので、病院へ来て欲しいとのこと。普通に車に乗って来て大丈夫ということだ。
本当に大丈夫なのか?
そして車を走らせ、産婦人科に到着。当直の看護婦に診てもらうと、やはり破水ということであった。
さっきまで全く何の兆候も無かったのに、突然の出来事に戸惑いの色が隠せない。もしかして今日出産になるのであろうか?
| ●相棒の様子は血色も良く、特に痛みも無い様子。 医者が来るまで朝食でも食べて待機することとなった。すると、しばらくして、相棒に痛みが出始める。 |
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| 余裕で朝食を食べる相棒 |
●陣痛か!?
お腹に付けた測定器からでる波形では、約5分置きに陣痛が来ている様子だ。痛みが出ている間、相棒の腰をさすってやる。
そして到着した医者の診察後、話を聞くと、どうやら今日出産する可能性があるとのことだ!
予定日より12日も早いぞ!?
●昼頃、相棒の両親も到着した。
相棒の実家は遠方にあるので、時間が掛かるのだ。
陣痛の間隔が少しずつ狭まっていく中、合間に診察を行う。その結果を聞くと、胎児はゆっくり下がってきているらしいが、骨盤に対する胎児のサイズから考えて、普通分娩か帝王切開か判断が難しいとのことだ。
相棒は陣痛の痛みが激しくなってきたのか、時々息む。
息むと、一時母親の呼吸が止まる訳で、しかもお腹から胎児を圧迫し、胎児への酸素供給等が悪くなる。
それにより測定器を見ると、胎児の心拍数が随分下がる瞬間があるのだ!
だ、大丈夫なのか!?
息むな! 呼吸をゆっくり、大きく! 胎児の為に、酸素を吸えっ!!
冷房が効いているにも関わらず、相棒は汗びっしょりである。
痛みを和らげる為に腰をさすっていたが、あまりの痛さに最早それを通り越し、さすると逆に痛みが増すようである。
後は、上がった体温による暑さを和らげる為、両親達とうちわで扇いでやるか、声を掛けるくらいしかできない。
●陣痛に耐える相棒。
普通分娩か、帝王切開か判断が出来ぬまま、どんどん時間が過ぎていく。
その間、親戚の人や、私の妹達も様子を見に来てくれた。
午後5時頃、陣痛の間隔は2分程になっていた。だが、子宮口(出口)はまだ普通分娩できるほどに開いていないのである。
医者曰く、最初は出口が3〜4cm位だったが、徐々に時間を掛けて少しずつ開き、今はやっと9cmくらいになっているとのことである。
しかも胎児の髪の毛が、ほんの少し見えているらしい。もう少しだ!
そういった診察の間、待合所では、両家の両親達が固唾を飲んで待っている。
陣痛が始まってから随分長い時間が経ったように思われた。
まだ判断は出ないのか? 普通分娩か!? 帝王切開か!?
●相棒は長い痛みに耐える疲れからか、陣痛の合間に寝ている様子だ。
1分寝て、1分痛みに呻く。その繰り返しだ。
しかし痛みの合間に寝れるとは、なかなか剛の者である。
午後6時前、院長がやってきた。診察をする為、他の者は一時待合所へ下がる。
・・・今までより診察の時間が長い。
・・・どうなったんだ?
私は堪らずドアと開け、カーテンで見えないが、中の様子をそーっと聞く。
なにやらバタバタしているぞ。会話の内容から判断するに、分娩の準備のようだ!
●普通分娩に踏み切ったの!?
おいおい! 家族に一声掛けてくれ!
というか、立ち会いできるのか? 夫の立ち会いができるらしいが、きちんと病院側に言ってなかったので、呼ばれるか不安である。
中からは、限界に挑むように相棒の息む声が聞こえてくる。自分の鼓動が早くなるのを感じる。
やばい、立ち会いできないかもしれない!?
とにかく、受付で看護婦をつかまえ、立ち会いの件を聞いてみた。
看護婦曰く、医者に確認するとのこと。そして確認してもらうと、その直後、分娩室前に呼ばれた。
看護婦に言われた通り、手を洗い、待機する。
●準備OKだ!
まだか!? まだ入ったらダメなのか!?
仕切戸一枚を通して、相棒の息む声が聞こえてくる。それに合わせて、こっちの心拍数も急上昇!
まだか!? まだ呼ばれないのか!? 長い時間のように感じる!!
そして、やっと仕切戸が開かれ、中へ呼ばれた。
中では院長を含め、医者、看護婦数名に囲まれて分娩体勢の相棒がいた!
その相棒の頭側に立たされる。
どうなんだ! どうなったんだ!? 状況がよく分からない!
「頭が出ましたよ」
その声と共に、相棒のお腹越しに頭らしきものを見せてくれた。
おおおっ!?
そして、看護婦達が、息む時に掴まる棒等を外している。
え? どういうこと?
どうやら、一番の難関である大きい頭が出たので、後はそんなに息む必要はないらしい。
えええーーーっ!?
力の入る一番の山場に、立ち会えなかった訳!? 頭をもう一度引っ込めて!・・・とも言えない。
相棒の場合、普通分娩の難しさから、母体の事等を考えて入れてくれなかったのであろうか?
TVでよく見る、気が遠くなるような息むシーンに、相棒の側に居てやれなかったのが残念だ。
●後は、胴体だ!
看護婦達が、再度相棒を息む体勢にさせるが、今回はそんなに限界まで息まないでもいいみたいである。
そして医者達は、赤ん坊の胴体を出す為、赤ん坊の体をゆっくり捻りながら出そうとする。
って、そんなに捻って大丈夫なのか!?
そして相棒が息むと、意外と太いヘソの緒と共に、するりと出てきた。
おおおーっ!!
ヘソの緒は切らせてもらえるのかな?
って、医者が切ってるJAN!!
切らせてもらえないのっ!?
・・・まあ、仕方ないことかも知れない。基本的に切ったりすることは医者にしか許されていないことなのだ。
そして赤ん坊をまじまじと見る。ん? その股間にあるものは!?
お、男の子だっ!!
相棒が、慌てたように私に「どっち!?」と聞く。男の子だよと答えてやる。
出てくるまで分からなかったので、感動もひとしおである!
ヘソの緒を切ると、体重等を量る為に看護婦が運ぼうとするが、その時、赤ん坊が小さい声で泣き始めた。
そして段々大きな泣き声になっていく!
赤ん坊に命があるという安心感が、急に沸いてきた! よかった! 元気な赤ん坊である!
●相棒の後処置の為、その場を出されてしまった。
私は分娩室を出ると、そのまま待合所へ向かう。ドアを開けると相棒の母が駆け寄って来た。
私の「生まれた! 男の子だ!」の言葉に、達成感や安堵感の為か、皆はうっすらを涙を浮かべたのが分かった。
お互いにお祝いの言葉を掛け合う。私も嬉しい!
そして電話であちこちに産まれたことを報告するのであった。
●看護婦が赤ん坊を抱えて出てきた。
皆が、赤ん坊を一目見ようと駆け寄る。
平成15年8月10日、午後6時32分出生。
体重3,145グラム。性別、男。
くりくりっとした目が、きょろきょろする。
十分な体重がある元気な赤ん坊だ。もし予定日までいっていれば、体重はもっと増え、もう帝王切開しかなかっただろう。
出産が早まって、丁度良かったのだ。お疲れ様、相棒よ。
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●しばらく後、私は再度分娩室へ呼ばれた。 私だけに赤ん坊を抱かせてくれるらしい。手を洗い、無菌服のようなものを着せられ、向かう。 |
| 相棒と産まれたばかりの赤ん坊 |
●そこには、相棒の横で、生まれたばかりの赤ん坊が保育器の中にいた。
よく見ると大きい頭が不自然に伸びているではないか!
なかなか分娩まで至らなかった為か、長時間圧迫されて伸びているのである。看護婦曰く、数週間もすれば元通りになるとのことだが、やはり心配してしまう。
このまま頭が戻らなければ、異星人に間違いなし!
赤ん坊は目を開け、虚ろな様子であちこちを見る。視点が定まらない様子だ。見えているのか、いないのか分からない。
そして、泣く赤ん坊を恐々と抱いてみた。頭が据わってないので、怖い。
実感がなかなか湧かないが、今日は随分と長い一日だったように思う。
こんにちは赤ちゃん。今日から私が、君のオヤジだ。
●相棒は、その横で仰向けのままじっとしている。
看護婦から、しばらくはそのまま動かないように言われているのだ。
出産後、だいぶ落ち着いてきた相棒曰く、分娩の瞬間よりも陣痛の方が痛かったという。
今までの人生の中で、一番の痛さということだ。私には想像できない痛さであろう。
その痛みに約10時間、陣痛約3分間隔で計算すると、約200回の陣痛に耐えたことになる!
これはもう剛の者としか言いようがないだろう! 母は強しっ!!
●さて、これから名前を考えなければならない。
どんな名前にしよう?
時代に即応して「IT」か、8月生まれだから「八丸」ってのはどうだろう?
やっぱり「ウエタマンJr.」か!?
とにかく、これからやるべき事が沢山ある。
そう、正義の味方として、赤いジャケットを用意しなければならない!
そして瓦センベイを割れるように、パンチ力を鍛えなければ!
待ってろ息子よ! 退院したら、特訓だっ!
赤い夕日を背負って立つ男になれっ!!
私は、借金を背負わないように頑張るよ・・・。
●今回のレポートはこの辺にしたいと思う。
それではまた。この試練の部屋にて。