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■塔矢アキラ増殖計画(一)

 進藤が女だって?何かの冗談だろう?
 誰もがそう思った。もちろんオレも思った。でも、ホントらしい。
 何でも、何千万人かにひとりの特異体質だとかで、今まで男に見えた身体は実はどっちつかずの状態であり、この期に及んで女に落ち着いてしまったのだという。もちろん、自分の身体がそんなことになってるなどと知るはずもない進藤は、最近なーんか身体の調子がヘンでさー、とばかりに病院に行ってみたら、あ、キミ女の子だからとか医者に言われて、
「もう頭まっしろ!心臓、5秒くらい止まってたんじゃねーかな」
だそうだ。
「参っちゃったよー、オレ。今日から女子トイレ使わなきゃなんないんだぜ?」
 低段者の手合い日である水曜日。対局開始前のひととき進藤は、そう言って上目遣いにオレの顔を伺う。
 かわいい。
 そう、「かわいい」のだ。最近の進藤は特に「かわいい」という言葉が似合う。もともと愛嬌があって下手すりゃ女の子よりかわいいと言われるヤツだった。初めて出会った頃はどっちかというと、やんちゃでうるさいフツーのガキって感じだったのに。それがどんどんかわいくなっちゃって ―― かわいいのは見かけだけで碁の実力はどんどんかわいくなくなってるんだが ―― でも、男に「かわいい」って言うのはまずいよなァと思って誰も言わなかったけど、…いやァ、男じゃなかったんだな。
 よし、そうとなったら早速おつきあいだ。
 オレにとって、院生の頃から何かと面倒見てやった進藤はいわば弟みたいなものだから、こいつとの「おつきあい」は、いくら女の子とわかったところで抵抗がないわけじゃない。でも、こいつと遊ぶのは楽しいと思うんだ。かわいく着飾らせて、ショッピングしたり映画見たりメシ食ったり…ちょっとこそばゆい気もするが。今までの付き合いで気心知れてるから、話したりするのもすげー気楽だし。気持ちが慣れれば、いいことずくめじゃねーか。
「なぁ進藤、今日昼さ、外へ食いに行こうぜ。おごるよ」
 オレは上機嫌で笑いかけた。
「お、サンキュー!絶対だぞ、忘れンなよ!」言ったあとで進藤は、「でも珍しいなー、いつもケチな和谷がさ」そして慌てて口を押さえた。そんな仕草すら、この前会ったときよりかわいく見える。
 オレはうきうきと昼の休憩を待った。が。
 進藤とふたりきりだと思っていた昼メシは、見事に裏切られた。何やらいろいろな奴がくっついてきやがったのだ。
「進藤、ポテトいるか?」
「アップルパイおごってやろうか」
「これ、カスタード入りだってよ、食ってみろよ」
皆、かいがいしく世話を焼いている。
 せっかくのオレと進藤の楽しいひとときを、何しやがんだてめぇら。
 とは、言えない。ほとんどの人がオレの先輩だ。
 当の進藤は、いや今日はそんなに食べたくないよ、とか何とか言いながら、今日みんなヘンだよな、どうしたんだろ?とオレに耳打ちする。
 てめーのせいだろ。
 のどもとまで出かかったが、ぐっと堪えてコーラをすする。
 奴らの考えは手に取るようにわかる。オレも同じだからだ。だから、奴らの下心をここで進藤に晒すわけにはいかない。「和谷、おまえもそーいうつもりで昼おごるとか言ってたのか!?」と、不審の目を向けられる恐れがある。そんな、藪をつついて蛇を出すような真似はごめんだ。
 男たちの火花の散らし合いと牽制は続く。
「今日、帰りヒマか、進藤?」
「オレと映画見に行かないか、進藤?」
「ラーメンの旨い店、教えてもらったんだけど一緒に行かないか、進藤?」
 ハンバーグをほおばる進藤は目を白黒させている。
「な…何か悪いんだけどさ、オレ今日、用事あるから…」
迫力に押されてか、及び腰に進藤が答えた。男たちの視線が一斉に集まった。
「何!?用事だと!?」「デートか!?」
「そんなんじゃないって!碁を打つだけだよ、塔矢と…」
 塔矢と。
 その名を聞いた途端、男たちの目が呆けた。
 塔矢アキラ。
 進藤の「永遠のライバル」。
 進藤の塔矢に対する情熱は尋常じゃない。オレがはじめて進藤と会った頃から四六時中、寝ても覚めても塔矢塔矢、「いつか絶対追いつく!追い越す!」と燃える瞳で虚空を睨む様子は、「絶対彼を振り向かせてみせるわ!」と意気込む乙女と何ら変わりがなかった。少なくともオレたち外野は、そう捉えていた。やがて進藤が非常識な成長を遂げ、名実ともに塔矢のライバルにのし上がっていくにつれ、「恋する乙女」は無敵だよな、などと囁きあったものだ。その後、オレとおまえで何千局も何万局も打とう!というまるで蜜月のような仲に突入するに至っては、「両想いおめでとう!」と祝いだか揶揄だかわからない言葉をかけるしかなかった。言われた進藤は「何だよそれ!オレたちはライバルなんだからな!変な言い方するなっ!」とむくれていたが、実際に塔矢とふれあう後ろ姿からは「カレのハートをがっちりキープ!ふたりの未来は薔薇色よ♪」というオーラが立ち上っていた、ように見えた。
 そんな、もともと塔矢しか見えていない進藤が、女になったからって変わるだろうか。変わるわけがない。変わるとしたら、もっと重症になるんじゃないだろうか。
 ひとり、またひとりと男たちが席を立った。いつのまにかそこには、オレと進藤だけが残された。
「…どうしたのかな、みんな」
事情が飲み込めない進藤は、不思議そうにオレを見る。
 オレは何も答えることが出来ない。
 塔矢が本気になったら、オレたちにまず勝ち目はない。
 進藤が「おつきあいの相手」として塔矢を見始めたら、オレたちに入り込む隙間はない。
「行くぞ、もう休憩が終わる」
 そう呟いてオレは、進藤を促し店を出た。

 オレたちの杞憂を余所に、塔矢と進藤の間には浮いた噂のひとつも聞こえてこなかった。
 やっぱり、身体は乙女になっても心までそう簡単には乙女じゃないか、進藤。
 ライバルはライバルであってライバル以外の何ものでもないか、塔矢。
 一時は打ちのめされていた男たちも、またぞろ何か画策し始めた。
 曰く、
「だいたい、塔矢の女の趣味が進藤だとは限らない」
「たとえば進藤が好みだったとしても、どうおつきあいを発展させればいいかわらないに違いない」
 言えてる。塔矢は、育ちも顔も成績もいいけど、激しく碁バカだ。女の子の扱いに長けているとは思えない。でも、それを言うなら進藤も激しく碁バカだ。バカの度合いがこのふたり、丁度つり合いが取れている。塔矢の女扱いがどうであれ、進藤が気にしなければどうってことないんじゃないのか?
「だからこそ!進藤が塔矢に恋愛感情を持つ前に、オレが進藤を陥とすんだ!鉄は熱いうちに打て、だ!」
 男たちの鼻息は荒い。
 が、それって難しいんじゃねぇ?まず進藤の目をこちらに向けるにしたって、あの碁バカの気をどう引けばいいんだ。塔矢以上の棋力があれば別だけど、そんなヤツ、ここにはひとりもいやしない。
 でも、めげない男たちは、それから折にふれ進藤をデートに誘った。それがデートだと思っていない進藤は、時間と気の許す限りほいほいついてきた。オレも誘ったことはあった。楽しかったけど、どう考えても「お友だち同士でじゃれています」以上ではなかったように思う。
「塔矢とはこういうところ、来たりするのか?」
渋谷を歩きながら進藤に聞いたことがある。
「来ないよ。行くとしたら碁会所くらい」
 やっぱりな。
「塔矢のお母さんとなら時々来るけどね。銀座とかね」
 え?塔矢の、お母さん??何故???
「オレと来るの、楽しいんだって。一緒に服見たりごはん食べたりさ。このあいだなんか、服買ってもらっちゃったよ」
 ちょっと待て。
 何やら、すごく嫌な予感がしてきたぞ。
 オレは、勇気を出してもう少し突っ込んでみることにした。
「仲、良いんだ。塔矢のお母さんと」
「おう!」
「じゃ、塔矢んちにもよく行ったりするんだ?」
「うん。泊まったりな」
 …泊まったり?
「でさ、このごろよく『うちの子にならないか』って言われるんだ。それがけっこう真剣みたいで、なーんか困っちゃうんだよな。うちの親に言ったら機嫌悪くなるしさ」
 それって…。おまえ、嫁に来いって言われてるんでは…。そりゃ機嫌悪くもなるよ、おまえんちの親も。
 やばい。やばすぎる。
 塔矢自身が朴念仁だからって油断はできなかったんだ。まわりがノリノリなんじゃねーか、親とか。
「め、名人は?元名人も何か言ってたのか?」
かつて囲碁界八大タイトルの五つまでを手にし、「神の一手に最も近い男」の名をほしいままにした全国八千万囲碁ファンのアイドル・塔矢行洋元名人の名を、オレは思わず口走っていた。
 進藤は、しれっと答えた。
「早くアキラと結婚して、孫の顔を見せてくれないか、って」
 オレは顎が落ちそうになった。頭がぐるぐる回ってくる。
 だめじゃん。あの元名人にそこまで言われたら。誰も太刀打ちできない。進藤が塔矢家に嫁ぐのは時間の問題ってことじゃねーかよ。
 オレの動揺をよそに進藤は、なおも爆弾を落とし続ける。
「まったく、せっかちだよなー、塔矢の親父も。心配しなくたって、そのうちイヤっちゅーほど見せるって、なぁ?」
 なぁ、って何だ!そこでオレに振るなよ!
 てゆうか、すでに産む気かよおまえ!おまえが産むんだぞ、わかってるのか?
 それ以前に、おまえの中で塔矢との結婚はもう決定事項なのか?
 「レンアイ」はどーした?まだ「おつきあい」もしてねーだろーがよ、おまえら!
 いろいろ言いたいことはあったが、言ったところで「オレたち、盤上をとおしてわかりあってるし」とかあっさり言われそうで、言うだけ無駄な気もする。
 これだから碁バカはよ。
 進藤はにこにこしながらショーウィンドウを覗いている。オレは混乱した頭を抱えながらそのあとに続く。
 わかっているのは、オレのささやかな恋がそのとき、終わったということだ。恋、と呼べるほどに育つ前に、あっけなく。
 ほどなく、進藤に言い寄っていた男たちも、見果てぬ夢を追うことをやめたようだ。
 進藤の周りは、また静かになった。塔矢とふたり、特に浮いた噂もないが、切り離して語られることもない状態が続いている。
 そんな奇妙な凪のような空気の中、しかし事態は深く進行していたのだ。
 誰も気づかず。
 進藤の野望と共に。

 それは塔矢が十八になった日。
 進藤と塔矢がいきなり入籍した。
 あろうことか、その数日後に第一子が誕生した。
「一応、入籍が先だからな。順当だろ?」
見舞いに行ったら、そう言って進藤が笑っていた。
 ズレてないか、おまえら。
 だいたい、いつのまに妊娠してたんだよ進藤!細身でいつもだふだふした服しか着てねーから、気にもしなかったよ!確かに「ちょっと太ったか?」とは思ったけど、誰が臨月だなんて思うか!言うことも顔も子どもみたいなくせしやがって、おまえに生理があることすら思いつかねーよ!
 それと塔矢!おまえだおまえ!色事なんて全然知りません、って顔してて何だよ、この手の早さ!全く、これだから遊ぶことを知らない碁バカは…!おつきあいも何もすっとばしていきなり子どもはないだろう!少しは周りを気にしろ!
 おまえらなぁ、お互い若手ではトップを争う人気棋士じゃねーか。立場わかってンのか?塔矢なんか、あの塔矢元名人の御曹司だぞ!こいつは、スクープっつーよりはスキャンダルだろーがよ!
 どう収拾つけンだよこの事態をよ!
 って、どうせやきもきするのは周りだけなんだよな。本人たちは気にもしちゃいない。
 気の毒なのは、週刊碁の編集部だ。「塔矢アキラと進藤ヒカル、結婚!」という、囲碁界にとってはまたとないめでたい大ニュースなのに、その記事は、暮れも押し迫った週刊碁の片隅にひっそりとなるべく目立たないように載せることしかできなかった。当然、第一子誕生は黙殺された。ひとかどのおじさんたちが主な購読層である週刊碁だ、おじさんたちの憧れの星・塔矢元名人の一人息子・アキラ(囲碁界の貴公子)が、「法定結婚年齢前に女の子孕ませてあわてて入籍」…はまずすぎる。事実はどうあれ、世間はそう見るもんだ。
 第一子誕生は、いずれできるであろう第二子の誕生報道のときに、「あ、そーいえばもう第一子がいたんですよいつのまにか。てへ♪」で済ます方針になったと聞いた。
 が。
 世の中、そうそう思惑通りにいくものじゃない。
 週刊碁編集部が謀るところによる「第二子のお披露目→どさくさ紛れに第一子のお披露目」計画は、あっというまに頓挫した。
 塔矢家の新婚夫婦に、またすぐ子どもができたのだ。
「って、おまえ!こないだ産んだばっかだろーが!」
 判ったのは、ようやく梅雨が明けようという頃。予定日は来年2月。上の子とは年子だ。進藤も塔矢も今年で19。
「おまえなぁ、もう少し計画性持てよ!何サカってるだよ!」
「うるさいなぁ」進藤が上目遣いに睨む。かわいい。「いつ、どれだけ子ども産もうが、和谷には関係ないだろ!」
 女になっても進藤は、ちっとも言葉遣いを変えようとしない。そりゃあ仕事で人前に出るときは多少は気を遣うようだけど。
「オレはばんばん産むからな!誰にも邪魔はさせない!」
「ばんばん!?まだ産む気か!」
「オレには大いなる野望があるんだ!」
 子どもで団体戦チーム組んで棋戦を荒らし回る気だろうか。
「この家を、塔矢似の子どもで埋め尽くす!」
 …はァ!?
「かわいいだろ、この子」目が点になったオレなど意にも介さず進藤は、傍らに敷かれたマットに眠る赤ん坊を見て目を細める。「塔矢似で、すげー美人だろ。将来も絶対美人だ」
 塔矢父子ファンの多い週刊碁編集部のオヤジたちをして、「この娘の写真を週刊碁で華やかにお披露目できないなんて!」と号泣させたという、伝説の赤ん坊。確かに、このまま育つと塔矢そっくりになるだろうと予感させる顔立ちをしている。
 満足そうに進藤が微笑んだ。
「オレ、塔矢の顔、好きなんだ。あんな綺麗なヤツ、他にいない。あいつに笑いかけられるともう、それだけでどきどきしちゃって幸せで」
 オレは苦手だけどな。あの取り澄ました顔。昔から虫が好かない。まぁ、綺麗なのは認めるが。
「だからオレ、塔矢と同じ顔の子どもがたくさん欲しいんだ。塔矢の顔に囲まれて暮らせたら、すげー幸せじゃねぇ?」
 オレには地獄に思える。
「がんばるぞー!和谷も協力してくれよな!」
 何をだ。
 …あぁ、頭痛がしてきた。こいつは真性のバカだ。
 その証拠に、肝心なことを忘れている。
「なぁ進藤、どうでもいいけど、産まれてくる子が全部塔矢に似る保障はどこにもないんじゃねーのか?」
「大丈夫だ!オレ、毎日子どもに語りかけてるから。塔矢に似ろよ、絶対似ろよ、って。間違ってもオレに似るんじゃねーぞ、捨てるぞ、って」
 …おい。
「胎教はばっちりだ!」
 胎教じゃねぇよそれ。拷問だよ。
 腹の子がかわいそうじゃねーかよ。
 オレは思わず、心の中で、まだ見ぬ他人の子に語りかけていた。
 大丈夫、たとえ進藤に似てもおじさんが、捨てられないようにとりなしてやるからな…と。

 臨月まで進藤は、元気に棋戦に出ていた。細身にだふだふの服を着ていたら、やっぱり目立たなかった。予定日前後はさすがに前もって対局の日程を調整してもらっていたが、それでも気づいたヤツはほとんどいないはずだ。
 生まれた子どもは男の子、これまた一目で塔矢似とわかる、目鼻立ちのすっきり綺麗な赤ん坊で、週刊碁編集部のオヤジたちに地団駄を踏ませた。
 当の進藤は、この世の幸せを全部集めたみたいな顔をしている。そりゃそうだ、今まで百発百中、ハズレなしの塔矢似だ。
 一緒にいる塔矢自身もにこにこと微笑んでいる。が、気のせいか、どうもいまいちすっきりしない表情に見える。
 何かあるんだろうか?
 いや、他人の家庭のことだ、オレが首を突っ込むことじゃない。
 でも、気になる。
 何か家庭内に問題があるのなら今のうちにオレにできることはしてやりたい。仮にもかつて、もしもの時には捨てられないようとりなしてやろうと誓った子の将来がかかっているのだ。他人ごととは思えない…って、なんでいつまでもオレ、進藤ンとこのことを気にかけてンだろう。
 仕方ねぇ、とりあえず塔矢には探りを入れてみるか。でもオレ、昔から塔矢が苦手なんだよなぁ…と二の足を踏んでいたら、さっさと伊角さんが聞いてきてくれた。
「自分に似た子どもばかり増えてもね、ってことらしい」
 ふーん、けっこうまともな反応だな。
「塔矢は、進藤似の子どもが欲しいそうだ」
『想像してみてください!進藤に似ていてしかも小さいんですよ!かわいいと思いませんか?思うでしょう?ね?』
と、伊角さんに掴みかからんばかりの勢いでまくし立てたそうだ。その時の、公式戦ですら滅多に見せないような熱気あふれる真剣な塔矢の顔をおまえにも見せてやりたかったよ、としみじみ伊角さんは語る。
 塔矢ってそーいうキャラだっけ?と首をかしげながら、オレはふと疑問に思う。
 塔矢は、進藤の野望を知っているんだろうか?
 伊角さんに聞いてみたら、知っているという。進藤のヤツ、嬉々として塔矢に披露したらしい。きっと、「協力してくれよな!」のひとことを付け加えることも忘れなかったろう。一方、話された塔矢はそれを阻止すべくがんばっていたという。
「がんばるって、どうやって…」
「毎日、念を込めて進藤を抱きしめたそうだ。進藤に似ろ、ボクに似るな!って」
 何やってるんだ、あいつら。
「で?塔矢が力負けした、ってことだな、結果を見ると」
「自分の遺伝子があんなに強力だと思わなかった、ってしょげている。どうやったら弱めることができるのか、真剣に悩んでいたぞ」
 バカじゃねーの?
 塔矢が世間からズレたバカだってことは今まで見ていて薄々わかっていたが、そこまでバカだとはなぁ…って、そうか、あの進藤の連れ合いだもんな。
 しかしなぁ…そんな家庭に生まれてきて、捨てられはしなかったけど、どうなんだろう。幸せなのかな、その子。
 でもそれこそ、もうオレにはどうすることも出来ない問題だ。



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