名誉を求める騎士よ、心にとどめよ。 「――そろそろか」 薙ぎ倒すように兵を切り裂いた愛剣ダンスニーの血を振払う。 独り言のように呟いた友の声に、マイクロトフはそびえる城壁を見上げ、そして広がる大地に視線を巡らせた。 ほぼ混戦模様だった流れが徐々に変わりつつあった。 目指すは敵の最後の砦、皇都ルルノイエ。誰もがこの戦いの意義を知らぬはずがなかった。交ざりあう様々な兵服の群れ、怒声や悲鳴で埋め尽くされた世界にひとつの兆しが見えた。 様子を探らせようと辺りを見渡したマイクロトフの元へ、早駆けの伝令が届けられる。 マイクロトフとカミューは顔を見合わせ、『主力メンバーのルルノイエ侵入成功』の伝えを受け取った。 「思った通りだ」 「では外側を固めるか」 「自分に正直になれ、マイクロトフ。皇都潜入に加わることができなくてあれだけ悔しがっていたくせに」 「む、しかし……」 鬼軍師の形相を思い浮かべた瞬間、一部から轟いた地鳴りのような響き声に二人ははっと顔を弾かれる。 ハイランドの最後の抵抗を見て取った赤と青の元両騎士団長は、互いを横目で試すように見定めた。 マイクロトフの瞳は左脇を、カミューの瞳は右脇を。 「これでも我慢できるか?」 「……成る程カミュー、お前の言う通りだ」 「背後に回るか? それとも正面から?」 「無論」 口唇の端を釣り上げたマイクロトフの頬は、乾いた血に汚れていた。 同じくにやりと笑い返したカミューの乱れた髪に、土煙が紛れて風が通り過ぎて行った。 マイクロトフが右手に昂々とダンスニーを掲げる。 「聞け、同盟軍の勇ましき戦士達よ!」 カミューが対として左手に持ち替えたユーライアの美しい刀身を掲げた。 「勝機は見えた! ここから先は故郷を想え友を想え家族を想え、自分の誇りのために戦うがいい!」 「勝ち戦は我々のものだ、いざ正面から迎え討て!!」 馬上に煌めく血に濡れた刃に、瞬時のどよめきがうねりのように拳を突き上げてそれに応えた。 雄叫びをあげながら突撃を開始する仲間の姿を確認し、カミューは手綱を強く引いた。 「遅れを取られる訳にいかんぞマイクロトフ!」 「ああ、軍師のお小言なら後でたっぷりと聞こう!」 カミューがウィンクをする。 「二人でな」 「愚問だぞ、カミュー」 「生きて帰るぞ」 「当たり前だ!!」 きつく固めたマイクロトフの左の拳、突き出した対の左の傍らへ。 等しく握りしめたカミューの右の拳、応えて対の右の傍らへ。 ぶつかりあうふたつの拳が激しく火花をまき散らした。 「鬨の声を上げろ!!!」 勇気は掲げる盾ほどに高く、 洗練され、大胆で、陽気で、穏やかであれ。 あらゆる技術を尽くして騎士道に貢献し、 喜んで、愛を高く掲げよ。 名誉を求める騎士よ、心にとどめよ。 |
とうとう赤青オトコ同盟が50名突破致しました。
御参加下さった皆様、本当に有難うございます。
ますますオトコらしい騎士を大好きになってもらいたいなあと思います。
これからも赤青オトコ同盟を可愛がってやって下さい。
2001.07.18 蒼玻玲拝
↑当時のコメントそのままです。
この話、今読み返すとオトコらしさに行き詰まって
すげー無理してますね……(笑)