寝支度を終えてまだベッドには潜らず、ソファに並んで腰掛けながらその日一日の他愛のない出来事を語り合う。 こちらが提供する話題は仕事中のささやかな発見や部下との会話の切れ端くらいで大した面白みもないのだが、マッシュが穏やかに伝えてくれる城で過ごす朝から晩までのストーリーは実にちっぽけで暖かく、眠る前に心を安らげてくれる大切なひと時だった。 マッシュの肩に頭を預けて身を寄せて、体温を分け合いながら静かに会話を楽しむ。靴に入り込んだ砂を廊下に散らかしていたのがばあやに見つかった、などと子供みたいな報告に苦笑しながら、そろそろ話題も尽きた頃。時刻的にも眠りにつくのに丁度よく、マッシュの口調もゆったりと遅くなってきていて眠いのだなと理解できる。 だからこそ気になることを尋ねずにはいられなかった。 「なあマッシュ」 「何?」 「お前、さっきからずーっと俺の尻を触っているのに理由はあるのか?」 きょとんと瞬きしたマッシュは、背中に回した腕の先、大きな手のひらがもう長いこと兄の尻を撫で回していることに今初めて気づいた顔をして、慌ててその手を離した。 全くの無意識だったのか、と呆れて小さく吹き出すと、ごめんと前置きしてからマッシュがしどろもどろになって言い訳を始める。 「何というか、その、つい、触り心地が良かったと言うか……」 「ほう」 「触ってると落ち着くと言うか、気持ちいいと言うか、深い意味はなくて」 「そうか、それは残念だ」 「えっ」 「てっきり誘っているのかと」 肩を竦めるとマッシュがあっと口を開けてその頬を赤らめた。 「眠そうだし、そろそろ寝るか」 「あ、いや、その」 「なんだ?」 すっかり眠気の覚めた目をしたマッシュに意地悪く返事をすると、マッシュは浮かせていた手を再び尻に下ろし、先ほどとは違う意図を持った手つきで撫で始めた。照れ臭そうに眉を下げた情けない表情とは裏腹に、触れる指の蠢き方はしっかりと大人の意思表示をしている。 「……誘っても、いい?」 遠慮がちに囁かれた声に笑ってしまった。有無を言わせない触り方をしておいて。 「どうぞ」 マッシュの首に腕を回して顔を近づけると、蕩けるように濡れた瞳に自分の顔が映ったのも束の間、唇を塞がれて自然と瞼を下ろしてしまった。 握り締めるように掴まれた尻に若干の痛みを感じながら、その奥を暴かれる瞬間を期待して体の全てをマッシュに委ねた。 |