診断メーカーより
『自分からは何度決意しても離れられなかったから
嫌われて捨てられたかった』マエド


 魔導師を倒すための長い旅が終わって一年、急に兄の態度が冷たくなった。
 急にというのは語弊があるかもしれない。正確にはじわじわと距離を置かれた。旅の間何度か紡いだ愛の言葉は消えて、城内の事務的な会話のみで終わる一日が増え、触れることをやんわり拒まれ触れられることはなくなった。
 そして僅かな言葉の端々に棘を感じることが多くなった。国の内政には関わらせてもらえない。せめて自身の鍛錬は怠らないようにと日々のトレーニングは欠かさずにいると、その力を無駄に眠らせるのか、十年も城を出ていたのに今更ここに居場所を求める気かと、遠回しに国を出ることを促されるようにもなった。
 そんな状態が二年三年と続き、それでも反論せず黙って城に留まり続けた五年目の秋、疲れた顔で机に伏したまま寝ている兄の背に毛布をかけた時、ふいに体を起こした兄が悲痛に歪んだ目を向けた。
 ──自分からは何度決意しても離れられなかった。だから嫌われようとしたのに、どうしてお前はいつまでも優しいんだと苦しそうに告げられ、全部分かってたよと答えると兄は滂沱の涙を流し、五年ぶりに少し痩せた体を抱き締めた。

(2017.09.04)