ナチュラルに結婚式を挙げた後の双子です。
突っ込みたい気持ちは埋めてください。


「全く……断ることを知らんのか……」
 足元も覚束ないほど酒を飲まされた大きな身体の新郎に肩を貸して、本日のもう一人の主役である新婦エドガーは弟であり夫となったマッシュを引きずってホテルの部屋まで辿り着き、キングサイズのベッドの上に首まで真っ赤になっている巨体を転がした。
 挙式は滞りなく済んだのだが、仲間を交えてのパーティーにてマッシュの両脇をロックとセッツァーが陣取った時から嫌な予感はしていた。
 案の定二人の手によってマッシュのグラスが空になる瞬間はほぼなくなり、またそれを馬鹿正直に飲むものだからこの通り。酩酊状態の新郎を新婦が抱えて運ぶことになろうとは。
「うぅ……ん」
「ほら、ちょっとこっちを向け。頼むから吐くなよ」
 マッシュのネクタイを外して首元を寛げてやりながら、それでもエドガーの声は優しかった。
 ──まあ仕方がない、誰からも祝福されることがないと思っていた自分たちをどんな形であれ祝ってくれた。
 教会で誓い合った言葉の通り、今までもこれからもずっと一緒なのだから。新たな門出の日にブツブツ小言を言うのも野暮だろう、と瞼が半分以上降りているマッシュの額にキスを落としたエドガーは、「おやすみ」と囁いて自分はシャワーを浴びに行こうとベッドを離れかけた。
 その途端、後ろから羽交い締めにするようにマッシュの両腕が伸びてきて、予想外の動きに抵抗できなかったエドガーの身体は呆気なく引っ張られる。
「らんで……、ろこ行くろ……」
 エドガーを抱えて共にベッドに転がったマッシュは呂律が回らず、その割に力強さの衰えない腕の中から抜け出せないエドガーは、呆れたように言い返した。
「何処って、バスルームだ。シャワー浴びたら俺も寝るから」
「ねない……、らって……、せっかく、はじめて……」
 舌足らずにボソボソと喋りながらもマッシュの右手がエドガーの腹から胸を弄り始めて、その意図的な動きにぞくりと肌を粟立たせたエドガーはマッシュを押し退けようとした。
「無茶言うな、こんなべろべろに酔ってる癖に」
「らいじょぶ……しゅぎょうのせいかを、みせてやる……」
「何の修ぎょ……んん……」
 逞しい腕に身体をひっくりかえされ、アルコールの味がする深い口づけに息を奪われたエドガーは、抵抗を諦めて目を閉じた。
 五年先、十年先とこの日が来る度思い出すだろう。──前後不覚の酔っ払いだった癖に、と何十年経とうともずっとずっと揶揄ってやる。
 今までも、これからも、一緒にいよう。産まれた時から共に在った愛する魂と、死が二人を分かつまで。

(2018.04.14)