きっちりいつもの時間に目覚めた朝まだき、門番以外の城の人間はおおよそ眠りについている頃。
 マッシュはカーテンの隙間から朝焼けで微かに光が差す光景に瞬きし、本来なら大きく背伸びをして早朝訓練のためにベッドを抜け出すはずなのだが。
 裸の胸に何やらずっしりと重く、それでいてしっとり暖かなものが絡み付いている。マッシュの鍛えられて盛り上がった胸の谷間に顔を埋め、長い金髪を乱しながら厚い胸板を丸ごと抱き締めた状態で熟睡しているエドガーは、すよすよと心地好さそうな寝息を立ててまるで動く気配がなかった。
 自分ほどではないとはいえ、それなりに体格の良いエドガーががっしり胸をホールドしていると、さすがのマッシュも身動きが取れない。無理に剥がすことも考えたが、首だけを動かして覗き込んだエドガーの、頬を潰してマッシュにしがみつくように眠っている幸せそうな寝顔を見てしまうと躊躇する。
 まあ、たまにはいいか。──自分を納得させるように心の中で呟くと、自然と口元が綻んだ。
 艶やかな金髪を掬って口付け、晒された素肌が冷えないように緩く抱き締めて、マッシュは久方ぶりの二度寝を楽しむことにした。


 カーテンから差し込む陽射しは晴れやかな朝を示していた。その眩しさを感じる前に息苦しさで眉を顰めたエドガーは、自分の身体が何かに固定されたように動かないことを寝ぼけた頭で少しずつ把握していった。
 ふっくら柔らかい胸を枕に、暖かなマッシュの腕の中で眠っているのは理解できた。昨夜の甘い時間そのままに脱ぎ捨てた服を放ったらかして眠りについたため、お互い何も身につけていないことも思い出した。
 しかしいかんせん腕の力が強過ぎた。身動きできないほどにエドガーをがっしりと抱き締めている犯人は、本来であればとっくに早朝訓練に出かけている時間だと言うのに、呑気にすやすやと寝息を立てていた。
 珍しい、寝坊したのかと部屋の明るさから大体の時刻を推測したエドガーは、直に触れ合う肌の暖かさに思わず笑みをこぼす。
 こんなにきつく抱き締められてはとても起きられやしない。仕方がない、付き合って二度寝してやるか。──遅れた朝食は目覚めてからマッシュに取りに行かせようと決めて、エドガーは身体をすっぽり包む温もりに頬を擦り寄せて再び目を閉じた。

(2018.05.16)