診断メーカーより
『頑張ったのでご褒美あげます』


「はー! 疲れた!」
 どっかりソファを圧し潰す勢いで腰を下ろしたマッシュを見下ろし、上機嫌のエドガーは腕組みをしてにこやかに笑った。
「ご苦労だったな。いい働きぶりだった」
「もうあんなの懲り懲りだからな。兄貴がどうしてもって言うからやったけどさ」
 ぶつぶつ不平を言うマッシュを宥めるように見つめたエドガーは、少し腰を屈めてちょんちょんとマッシュの唇を人差し指で突いた。
「頑張ったから、ご褒美をやらんとな」
 怪しく笑うエドガーの青い瞳にごくりと喉を鳴らしたマッシュの目の前に、ひょいと差し出された袋を見て内心がっかりする。クルミが詰まった袋は普段は嬉しいが、今は別のものを期待してしまっていた。そんなマッシュを前にエドガーはまた笑い、袋からひとつ取り出したクルミの欠片を自らの口に咥え、そのままマッシュの唇に押し当てた。
 口内に転がり込むクルミと柔らかな唇の感触に目を見開いたマッシュは、噛まずに飲み込んだクルミで喉に痛みを感じて咳き込む。真っ赤になったマッシュに吹き出したエドガーは、何とか呼吸を整えたマッシュの頭を撫でて改めて「ご褒美」と呟き、音を立ててぽかんと開いた唇を吸った。

(2017.09.08)