辿々しく肩に触れた手は小刻みに震えていた。先ほど重ねるだけのキスをした時も唇から微かな振動が伝わってきていた。
 いつもより浅い呼吸で何度も喉を鳴らしながら、拙い手つきで体に触れようとするマッシュのいじらしさに微笑み、無精髭が残る頬に指先を当てる。
 焦らなくていい、と目で伝えると、マッシュは小さく頷いて、向かい合うエドガーに頬を寄せてその耳に口付ける。マッシュの息が流れ込む感触にうっとりと目を細めて、エドガーは硬質の金髪を優しく撫でてやった。
 マッシュがエドガーの背に手を回して強く抱き締め、そのまま力をかけてくる。エドガーは抵抗することなく呆気なく体を倒し、シーツに背中を預けた。
 横たわった後の口づけは深かった。巧みではないが想いのこもった唇は熱い。まだ少し震えているので、不安ごと受け止めるつもりで頭を掻き抱いた。
 マッシュの息が荒くなり、エドガーの頬、首、鎖骨に執拗なほど口づけを繰り返し、時折火傷したようにピリッと走る痛みにエドガーが眉を揺らす。無我夢中のマッシュが肩に噛み付いた瞬間、思わずエドガーの口から声が漏れて、ハッとして体を起こしたマッシュは申し訳なさそうな顔をしていた。
 まるで子供が怒られた時のような眉の下がり具合にエドガーは苦笑し、伸ばした両手でマッシュの頭を捉えて優しく胸に引き寄せる。
「……大丈夫だ。好きにしていい」
「でも」
「俺はちょっとやそっとじゃ壊れない。ちゃんと受け止めてやるから……お前もちゃんと愛してくれ」
 マッシュの喉が大きく上下し、その低い艶のある声で分かった、と囁くと、熱に浮かされたような目をしながらエドガーの体にしがみついてきた。

 ──そう、それでいい。
 この純真無垢な弟の心を繋ぎ止める最後の手段。何もかも与えてやればいい。外の世界に興味など持たなくていい。ほら、二人で抱き合っている方がこんなに暖かい。

 快楽に青い瞳を蕩かせるマッシュを見上げ、エドガーはただただ優しく微笑んだ。

(2017.09.12)